獅子の剣幕
鷹島隆夫
黒丸
その時の私は愛媛県松山市に住んでいたのだが、今は冷たくて涼しい風が緑の一枚一枚をサラサラと通り抜け、道端に雑草やドングリが落ちていようがなんの不思議もない、空気が春雨のような田舎に越して、長年貯め込んでいた探偵小説を一切合切読み倒そうとしながら時に白紙の原稿用紙とにらめっこをする日々を送っている。
そんな風来坊のような生活を送る私がこれから書く物語は引っ越す前、つまり松山市にいた時期に発生した事件なのだが、この発生する前の私はまさか事件に巻き込まれるなどとは思いもしなかった。
だからこそ読者の皆に聞いてもらいたい、記憶に誤解が生じる前に書いておきたいのである。
その時の私は彼女に振られて銀天街の居酒屋でビール本を何本も飲み干しており、あっちへこっちへ前後不覚になりながら松山駅の柱に保たれてやっと止まったが実際は立ったまま睡魔に襲われていたのだ。なので警察官が近くを通っても気付きもせず通り過ぎて行った。
しばらく夢の中にいるとドンッ、甘い夢から一気に目が覚めてキョロキョロすると、左の腕に何やら黒い丸がくっついているではありませんか。
この不思議な黒丸との出会いが、私に獅子を思い浮かばせる事件になったのであります。
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