詩『スペースバラフライ』
くずき憂人
『スペースバラフライ』
ちょっと物書きチックなことをしてみたい。
あの日、心の糸で巻かれたサナギが羽化して、
小さな蝶が羽ばたいた。
羽ばたきから起きた小さな風が、
小さく心を揺さぶった。
蝶は、僕の小さな身体の中で、
大きな思考の宇宙を飛び回った。
いろんな星にとまり、いろんな味の蜜を飲んで、
たまにデブリにぶつかって…。
いつだって、ただただ宇宙の果てを目指した。
気付くと地球も太陽も見えない。
ここが果てだというのなら、
もう果ててもいいのかな。
なんて
こうなるために飛んだのかな。
何のために飛んだのかな。
ただ飛びたかった。
いろんなものを見たかった。
でも、もう羽はボロボロだ。
こんなのじゃ、どこにも行けやしない。
もう、新しい星や銀河を探して、
その美しさに心を揺らすこともないのかな。
それはそれで寂しいな…。
そのとき、
大きなブラックホールが突然目の前に現れた。
これはいいな。
とても相応しいだろう。
その圧倒的な重力に身を任せ、
引き寄せられるままに、吸い込まれた。
最期にいいものが見れた。
………
蝶は風に乗っていた。
真っ白の風に。
見慣れた宇宙が、全く新しい世界に見えた。
あぁ、あのブラックホールは、
あの日の風か。
僕を追って来たんだ。
羽はぼろぼろでも、
まだまだ飛べる。
この風は、どこにでも行ける。
僕はそのことを知っている。
だって、この風は、
僕が起こした風だから。
詩『スペースバラフライ』 くずき憂人 @kuzuki_yuto
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