第14話 片想いのプロまっしぐら
焼き菓子を食べ終え、恋バナも変な感じで終わった私とフェルナン陛下は、その後広場で大道芸を観賞。森林公園の池をボートで三周し、池に向かって石切勝負を十戦。
そして公園を散歩していた一般の方々から声援を受けるという、「お忍びデート」ってなんだっけ状態のデートを楽しんだ。
「やった! また私の勝ちですね!」
「いいや、まだだ! 俺は絶対にあきらめない!」
「正義のヒーローみたく言われましても」
私は大笑いしながら、勝負とは関係なく石を水面に向かって投げた。ピョンピョンピョン……と石は十回水面を跳ね、まるで今の私の心のようだと思った。
(楽しい。フェルナン陛下といると、すごく楽しくて幸せ)
極貧時代、玩具ひとつなかった私が暇潰しにやっていた石切で、フェルナン陛下とこんなにも愉快に遊ぶことができるなんて。
それだけじゃない。
仕事ではあるが、今日は二人で町を歩き、たくさん話してたくさん笑った。
私が男としてお傍にいる時だって、同じくらい一緒にいて色々と話すのだが、今日は主従の壁を越え、まるで友人のように接してくださる。
(【女体化の呪い】様様だ。男のアルヴァロじゃあ、こんな贅沢な体験、できなかっただろうし)
フェルナン陛下の方をちらりと見ると、彼はせっせと平たい石を探していた。
本当に負けず嫌いというかしつこいくらいだが、そこが可愛い。
一国の王が石切に必死になる姿なんて、誰も見たことがないし、想像もできないだろう。
もしこのままずっと、私が【女体化の呪い】を受けたフリを続けたら――。
(ワンチャンある……⁉ いや、でも陛下はまだ女嫌いだもんね……)
女だろうが男だろうが、関係ない。フェルナン陛下は私のことを従者アルヴァロとしか見ていない。だから今日も女である私を連れて、視察デートをしてくださっているのだ。
脈なんてドクンとトゥンクもありはしない。
私は片想いのプロ殿堂入りまっしぐらだ。
するとフェルナン陛下は、自問自答で想像以上に精神的ダメージを受けた私の異変に気がついたらしい。心配そうに「疲れたか? 何か飲み物を買って来よう」と言ってくれた。
「ありがとうございます」
(ちょうど、愚かな自分にストレートをぶち込みたかったんです)
優しい陛下の背を見送りながら、私は彼への恋心を再び心の奥の奥へとしまい込む。
その時だった。
一人になった私の背後に怪しい影が近づいたのは。
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