前のエピソード――第242話帰ってきたのは

　全力で屋敷に向かい、息を切らしながら駆けるとすぐに屋敷が目に入る。見た感じ屋敷に異変はないようだが……そんな考えを他所に一気に悪寒が体をかけぬける。

　この先にいるのは絶対普通ではないな、こんな嫌な気配を撒き散らしてここまで気配を感じさせるんだからな。乱れた息を整えながら俺は、屋敷に一歩ずつ近づいて行く。領民の話ではこの先にいるのはマーケドックらしいが、こんな気配をただ寄せるようなやつでは無かった思うんだが。

「ようやく来やがったか、てめぇがナイトとかっていうクソ野郎か、俺がいない間俺様の領地を好きにしくさったようだな。」

　あ〜間違いない、この声、この顔、それにあの腐った考えしか出来ないこいつはマーケドックで間違いない。

「ま〜勝手にしくさったことは許しがたい罪で、即死刑にしてもいいが、俺は優しさ溢れる領主だからな。今すぐ屋敷ごとお前が今持っているを物を全て差し出して、ついでにお前に付いてる女がいるらしいな、その女共も俺が全員貰ってやるから感謝しろよ」

　本当にこいつは全く変わらないみたいだな、逆に安心した気分になる。以前は殴り倒して終わったが、今回は屋敷を占拠した不審者だし、今のこの領地の領主はこの俺なんだから領主権限を持ってこいつをどうしようが問題ない、むしろこの世界から排除してしまった方が今後の為になるのではないだろうか？

「おい、この俺様が自ら貴様ごときの前に出てきてるんだぞ、まずは跪いて俺に出会えたことに感謝すべきだろ？それとも、俺様の偉大さに動けないか？」

………しばらくの沈黙の後、俺はマーケドックを正面から目を合わせ、溜め息を一つついてから口を出した。

「では、私から貴殿に言わせてもらっていいだろうか？」

　マーケドックは、こちらを見下すような視線を向けながら静かに頷く。

「では、前領主のご子息マーケドックとお見受けする。領民から貴殿のことを聞かせてもらった。現在この領地は国王より私が管理を任せられている。前領主のご子息としては、不満もあるであろうがこの領地は私のものであり、それを支えてくれる領民、付いてきてくれた者、土地全てが私の物だ。貴殿に、何一つやるものはない。むしろ、貴殿は我が領地を荒らす不届き者として処分して構わないのだがどうする？」

　俺の話を静かに聞いていたが、すぐに顔を赤くしながらプルプルと震えて今にも噴火しそうな火山のようになっていた。

「ふっふっふざけるなー、貴様は一体何様のつもりだー。この領地にあるものは全て俺様の物なんだ。貴様ごときに渡してなるものか、貴様は、俺に言われた通りに持っている物を全て差し出せばよいのだ」

　そんな風にマーケドックと、口で争っているとマリア達も追いつき俺の後ろに警戒しながら待機する。

「ふんっどうやら口ではわからんようだな、それにそいつらがお前に付いてきたもの達か……ほーなかなかの粒揃いではないか、これからは俺様がそこのエセ領主に変わってかわいがってやろうではないか」

　マーケドックの目が、完全に獲物を見つけたかのようにマリアやティナを舐めるように見つめて舌なめずりする。その姿に家の女性陣達はみんな体を身震いして後退りする。