色づく世界
逢初あい
人は私を魔女と呼ぶ。
誰も寄りつかない森の奥で何百年も独りで生きている。
なるほど、確かに魔女だ。
灰色の毎日。明るくなった頃に目を覚まし、昏くなれば眠りにつく。まるで同じ日々を繰り返しなぞっているようだ。そんな日々の中、私の世界に色が落ちてきた。
それは、大きな木の下に布切れに包まれて居た。それは生まれたばかりの赤ん坊だった。成程森の近くの村だな。あいつら、口減しのために普段は近づきもしない森の奥に赤ん坊を捨てていったんだ。さてどうしたものか。
折角生まれてきたのに生きるのを望まれないなんてお前も可哀想だな
私は、何の気まぐれかその子を育てる事にした。
魔女の私と違いその子はどんどん成長していく。この間まで言葉も喋れなかったのにいつの間にか巧みに言葉を操るし、掴まらなければ立てなかったのに二本の足でしっかりと立ち上がっている。
森の中の色んなことに興味を持ち、沢山のことを私に尋ねてきた。いつしか私はその子に背を抜かれた。ついこの間まで抱き抱えられるほど小さかったのに。この子が成長していくたびに私の世界は色付くように感じた。見るもの全てが違って見える。全てが新鮮に見える。
幼かった彼の声が低く逞しさを感じる声に変わっていく。その逞しかった声は今はもうしわがれてしまった。私の人高くなった背もいつからかまた私よりも小さくなってしまった。
この子を拾った時に植えた苗木が大きな木に育つ頃
私は
また
独りになっていた
まったく
とんだ親不孝者だ
恩を仇で返しやがって
こんな事ならあの時見捨てればよかったんだ
•••まったく
寂しいなぁ…
この子が遺した色の世界で、
私は今日も生きていく。
色づく世界 逢初あい @aiui_Ai
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