第30話 旅行準備もカオスです

「旅行に必要なもの買いに行こ〜?」


「じゃあ行くか」


志歩の提案で俺たちは次の日、家に帰って速攻買い物に出かけた。


今日はいつものデパートではなく少し離れたところに行くことにした。


万が一学校の人と鉢合わせた時に、変装した志歩といると「彼女!?」とか言われそうそうだし、変な誤解されたら嫌だからね。


俺たちは電車に揺られながら目的の店へと向かっていた。


「ゆーくん、酔っちゃった」


志歩がそう言ってきた。


顔色を見るに結構辛そうだ。


「せめて俺の腕掴んで揺れを軽減して耐えてくれ」


すると志歩は無言で俺の腕を掴んできた。


一方、俺は周りにいた男から殺意の籠った視線を向けられ身震いしていた。


そして目的のデパートに着いた時には、志歩は復活していて1人でデパート内を散策しようとしていた(勿論俺が腕を掴んで暴走しないようにしていたが)。


「やっぱ都会は違うわ」


「なんか見たことないのいっぱい売ってる!」


家の近くのデパートも普通に広いが、志歩が散策したくなるのも分かるくらいの広さだった。


すると志歩は俺の腕を引っ張りだし、水着売り場へと連れてこられた。


「なんで水着?まだ少し早くない?」


「屋内プールあるホテル泊まるから!」


「どんな高級ホテルに泊まろうとしてるの!?」


実は志歩が泊まるホテルを決めたいと言ったので、志歩にホテル決めは任せている。


しかし聞いても「行ってからのお楽しみ!」と言って教えてくれないのだ。


だがさっきの発言で教えてくれない理由を察した。


確実に俺が渋るほどの高級ホテルに泊まろうとしている。


「あの……おいくらほどのホテルを予約しているんですかね…?」


「1泊9万円!これくらいのホテルだったら変な人もいなさそうだし、ご飯も美味しそう!お金は私のだからゆーくんは心配しなくて良いです!」


お金に関しては志歩のものなので俺に口出しする権利はないと思うから何も言わないでおいた。


確かにそのレベルのホテルに泊まれば変な人に会わないというのも納得だ。


意外と考えてたんだな と少し感心した。


だとしても高い気がするけど。


「だから、ゆーくん水着選んで!」


「俺?」


「だってせっかく行くんだし、ゆーくんに喜んでもらいたいんだもん……」


最後の方ごにょごにょ言ってて良く聞こえなかったが、可愛い理由だというのは分かった。


「じゃあ選んでくるね」


「うんっ!」


そして20分ほど悩んだ末に持ってきたのは黒いフリルのついた水着だった。


他の人のいるところであんまり露出させたくないというのもあるので肌があまり出ないようなものを選んだ。


「じゃあ早速試着してくる!」


俺の手から水着を掻っ攫って試着室へと入って行った。


その瞬間だった


「あれ?柳じゃん。なんでここいるの?」


「本当だ、優じゃん」


真後ろから聞き覚えのある声が2つ聞こえた。


(まさか……)


振り向くと龍馬と神田が立っていた。


(これは誤魔化さないとまずい)


俺は龍馬の口が硬いのを知っている。


しかし酷い偏見かもしれないが神田は口が軽そうだ。


「なんでここいるの?」


「サイズ合わなくなってきたから水着買いに来たんだよ〜」


「じゃあなんで女の水着売り場にいるの?」


アカン、墓穴掘った。


「あ、いやぁそのぉ……」


「ゆーくんっ!」


最悪なタイミングで変装した黒髪の志歩が試着室から飛び出していた。


その瞬間空気が凍った。


「あれ、なんで神田君と高尾君がいるの?」


「柳……まさか彼女いたのに志歩さんとあんなにイチャついてたのか……?」


「え、優?あの子はどうしたの?」


2人別々に勝手な想像をしてしまっている。


神田は浮気現場を見てしまったみたいな顔をしていて、龍馬は絶句していた。


「違う!!誤解だ!!」


俺は浮気をしている人浮気を否定する時に言うセリフを叫んだ。






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