第29話 現役アイドルの力

「ねー、ゆーくん。泊まりがけの旅行行きたいよ〜」


学校から帰ってきて早々、俺は志歩に無理難題を押し付けられていた。


「無理です、今お金ない」


「お金あるもん」


「ないない。俺たちがあのカフェと一昨日の打ち上げでいくらお金を使ったか忘れたの?」


「覚えてる。5万7850円」


「そこまで覚えてるのは逆にすごいよ」


そう俺たちはここ2日で約6万円使っていたので、あまり無駄遣いできない。


最悪バイトをすれば良いが、あまりその手は使いたくない。


勉強が手につかなくなりそうというのもあるが、志歩がくっついて来る気がするのだ。


それに旅行となると数10万単位のお金がかかる。


俺も行きたいとは思うが今月中にいくのは現実的に見て厳しいだろう。


「旅行は数10万かかるんだよ?行きたいならもっと節約してお金貯めないと」


「お金あるって言ったじゃん」


そして志歩は通帳を持ってきた。


「これ志歩の?」


「うん!見てみて!」


俺が見て良いものなのか?と思いながら通帳を開いた。


そして俺の目は点になった。


(え…?これ…え?)


軽く1000万円近くある。


「お金ならあるから、これで行こう?」


「……1000万……」


普通に生活してたらまず目にすることのない金額に俺は呆然としていた。


「どこからこんな金出てきたの?」


「私の1年間のお給料!」


あ、志歩は大人気アイドルだったんだ。


いや、だとしても年収1000万ってヤバいな。


そこら辺の中小企業の社長とあんまり変わらんぞ。


「なんで貯めてたの?」


「ゆーくんと旅行行きたかったから!」


「まだ俺と許嫁になるなんて分かってないのに?」


「その時からもう分かってた!」


新事実発覚。


1年前から志歩と許嫁になる事は決定してたらしい。


(母さんよくそんな長期間俺から隠し通せたな!)


母さんは色々反応が薄いので、俺が気付け無かったんだろう。


まさか1年間もとは思わなかったが。


「というかまず時間が無くない?」


これも問題だった。


俺たちには学校があるからそこまで遠出出来ない。


「大丈夫!祝日がある!」


「あ…本当だ」


「これでお金も時間もあるから行けるね!」


「………」


「変装もちゃんとするから、いいでしょ?」


捨てれた子犬のような目で見てきた。


「分かったよ、旅行行こうか」


「やったぁ!」


俺に拒否権は無いも同然だった。


というかあの状況っで拒否する人は男じゃないか、人の心を持ってないかのどちらかだと思う。


「じゃやどこ行く?」


「ゆーくん急に乗り気になったね」


「俺はやると決まったら全力で楽しむタイプなんでな」


やると決まった以上、楽しまなきゃ損じゃん。


「逆にゆーくんはどこ行きたい?」


「俺は熱海あたりに行ってみたい」


「じゃあ熱海にしよう!」


「志歩はどこか行きたいところないの?」


「私も熱海行きたいって思ってた!」


「じゃあ熱海にしよう」


クラスメイトたちにも家族ぐるみの旅行とでもいえば誤魔化せるし大丈夫だろう。


そこまで不安要素は無かったので、久々にヒヤヒヤせずに遊べそうだ。


もちろん人目には気を付けるが。


こうして俺たちは来週熱海に泊まりがけの旅行に行くことが決まった。





後書き

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