第19話 俺にとって天国だな

次の日志歩は朝からせっせと何かを準備していた。


「なあ、何してるの?」


「準備!」


「なんの?」


「パーティーの!」


「パーティー!?」


まさかのパーティー準備だった。


「いや、なんの?」


「藍沢社長に認めてもらえたから!!」


え......あの審査ってみんな通ってるんじゃないの?


「そんなに認めてもらえるの難しかったの?」


「うん!半分以上がスキャンダルに成りかねないから別れてくれると助かるって言われてた!」


「え......」


俺めっちゃ危ない橋渡ってたらしい。


「質問責めにされて静かになってたよ!」


いや、こっっわ。


1対1でしかも初対面で会う前から偉いと分かってる人に質問責めは恐怖しか感じないだろ。


それを間近で見てきたなら祝いたくなるのも分からないでもない。


(アイドルの志歩を知る前に許嫁になってて良かった~)


そもそも志歩と許嫁にならなければこうならなかったのでは?と一瞬思ったが俺もこの生活をかなり楽しんでいるので考えないようにした。


「ちょっと出掛けてくる~」


「パーティーの買い足し?なら俺も着いていくよ」


「着いてきて!」


「荷物持ちしますわ」


「逆にそれ以外で何ができることある?」


「......」


志歩さん……物の良し悪しも分からないし値引きとか分かんないから、事実なんだけど人って意図せずディスられるのが1番傷つくんです。


そんな感じで俺は変装した志歩に荷物持ちとして使われ、家に帰ってきたら。


「なにを買ったらこんな重量になるの?」


最初の買い物の時よりはましだが、袋の持ち手がが俺の指に食い込んでいた。


にしても志歩の節約術は不思議だ。


俺の腕が取れるんじゃないかって程、買うのに値段は5000円を超えない。


「よし、これだけあれば足りるでしょう!!」


「何作るの?」


「それはお楽しみ〜」


そう言ってキッチンに篭ってしまった。


何か手伝おうと思ったが俺は料理が一切出来ないから、かえって邪魔になりそうだ。


こう見ると俺、めっちゃ志歩に助けられてんな。


料理、家事は志歩が全部やっている。


流石に洗濯は分けてやっているが生活の大半を助けられてる。


そんな感じの事を考えたり、スマホを見たりで1時間近く経ってしまった。


そろそろ志歩も料理が出来る頃だろう。


何もしないのは申し訳ないから食卓でも拭いておくか。


そう思い机を拭いていると志歩がキッチンから出てきた。


「出来たよ!」


そう言って志歩が持ってきたのは、俺の好物であるマカロニグラタンだ。


上にチーズがかけられているのか少し焦げ目が付いていて食欲をそそられる。


続いて出てきたのは唐揚げとタルタルソースだ。


これもまた俺の好物だ。


今度はポテトサラダが出てきた。


これも俺の好物だ。


「何で俺の好きな物把握してるの?」


「優くんのお母さんに教えてもらいました!」


「会ったことあるの!?」


「うん!LINEも持ってる!」


母さん志歩と連絡とってたのか…


「変な事言われてないよな?」


母さんは何を送ってるか分からないから怖いんだよね…


「……いや?何もないよ?」


「その反応は絶対に何かあるだろ」


あとで検閲しないとダメだな、これ。


「と、取り敢えず食べようよ!いただきます!」


「いただきます」


まずグラタンを食べた。


「めっちゃ美味しい」


志歩が本気で料理をするとこうなるんか……


マジで一生食べてられる。


唐揚げも全然脂っこくなく1人で10個以上食べた。


(これマジで太りそうだな)


このレベルの料理が毎日出てくると考えると、容易に俺がデブになる未来が予想出来る。


30分後……


「ご馳走様でした」


「ご馳走様でした〜」


まさか最後にデザートも出てくるとは。


めっちゃクオリティー高いチョコレートケーキが出た時はびっくりした。


普通にそこら辺のお店より美味しかった。


だから俺のお腹はもう限界だ。


しかし志歩はというと俺と同じ様にずっと食べてたにも関わらず、今からカリカリ君を食べようとしている。


あの量がどうやってこの細い体に収まっているのだろうか?


不思議だ。


「よし!食べ終わったし、片付けしよう!」


「片付けは俺やるよ」


「じゃあよろしく〜」


そう言って志歩はソファーに寝転んでしまった。


(今思うと皿洗いとかもほとんどやったことないな)


色々気付かされた1日だった。




後書き


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