第18話 社長
「柳様、こちらです」
木製の綺麗な扉の前に辿り着いた。
「失礼致します、社長。柳様をお連れ致しました」
「分かった。彼を通してくれ」
「畏まりました」
奥から凄いイケボが聞こえてきた。
「失礼します」
「柳くん、そこのソファーに座って楽にしていてくれ」
(女性!?)
「はい。ありがとうございます」
やっべぇ、めっちゃ緊張する。
意外と社長若いな。
何歳なんだろうか?
30歳前後に見える。
これが美人若手社長というやつか。
「私が呼んだにも関わらず何も出せなくてすまないね」
「いえいえ、とんでもないです」
「長話するのもなんだから単刀直入に聞くよ?」
「はい」
「君は彼女と許嫁になる前から鏡志歩のファンだったかい?」
どういう意図の質問だ?
しかもサラッと許嫁のことも知ってるし。
「いいえ。志歩さんのことは付き合ってから初めてアイドルだと知りました」
「なら良かった。もう帰っていいよ」
「え…?もう終わりですか?」
「もっと話したかったかい?」
「いえ、そういう訳ではありませんがもっと何か聞かれるのかと…」
「私が知りたかったのはさっき質問したことだけだよ」
「あれはどういう…?」
「これは私の考え方なんだけど、柳くんは推しと付き合ってる時ってどんな気持ちだと思う?」
「推しと入れて幸せだな〜みたいな感じだと思います」
「普通はそうなるよね。でもそれだと推しを推しの姿としか見ていなくないかい?」
「ほう」
「私はアイドルというのは一種の仮面のようなものだと思っている。アイドルの側面だけを知ってその人を愛していたとしてもそれはその人のアイドルの部分でしか愛せていないのではないか?アイドルとしてではなくその人の本質を見て付き合うことにしたのか、そこを問いたかったんだ。そのためにまずあの様な質問をしたわけだ。分かってくれたかな?」
「はい」
この人絶対に事務所のアイドルたちに慕われてるだろ。
何かこう、人間性が凄く良いのが分かる。
あと、アイドルを自分の子供みたいに見ている感じがある。
アイドルの人達の私生活を1番に考えてくれているのが言葉の端々から伺える。
「その点、君は志歩の事をよく知らないまま許嫁になったようだし、その前にもナンパから助けてくれた様だから、志歩を大切にしてくれそうで安心したよ。これからも志歩を頼むよ」
「え...なんでそれを?」
「志歩がLINEで言っていたよ」
社長とLINE繋がってるのかよ!
しかも雑談みたいな内容のLINEしてるじゃん。
「あの、志歩は何か変な事言ってませんでしたか?」
「君がジェットコースターで悲鳴をあげていたとか色々言っているよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
案の定志歩は社長に色々話していた。
尚都合の悪い所は言ってない模様。
それと少しLINEする内容を考えてほしいな。
私生活が筒抜けになってるの恥ずかしいから。
「自己紹介が遅れてしまったね。私は藍沢 花夏だ。今後ともよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
「隠したりするのはこちらでやるから柳くんはもう帰って大丈夫だよ」
「お手数お掛けします。失礼しました」
(は~~~~疲れた!)
1人になったら一気に疲れが出てきた。
「どうだった?」
志歩が飛び出してきた。
「何も無かったよ」
「良かったぁ」
そのまま志歩が抱きついてきた。
「公衆の面前でそれはやめて!?」
「やだ〜」
嬉しそうに笑っている。
これには藍沢社長の秘書も苦笑いしていて、余計に恥ずかしくなった。
「頼むからそれを外でやらないでくれよ、志歩。流石に私も擁護しきれなくなる」
ドアの向こう側から藍沢さんの声が聞こえた。
「はいっ!善処します!」
「志歩…頼むよ…」
ドアの奥から藍沢さんの懇願する声が聞こえた。
後書き
最近1文が長すぎて読みづらくなってしまっている気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます