生まれ持った【呪い】なんかに支配されないスキル魔力なんて使えなくても『剣を極』め最強を目指し、大事なものを守るだから代わりに守ってくれ

カイト

第1話入学式

俺の名前は剣崎和也けんざきかずや今朝の日課である剣の素振りをしている。


「1万445!」


「1万446」


「かずくんお父さんがもうすぐ朝ご飯の時間だから戻って来いって」


葵がいつも通りそう言いながら俺の方に駆け寄ってくる。


「ああ、分かった後もう少ししたら行く!」


言葉を返し剣の素振りを続ける。



今声をかけてきたのは聖年葵としなみあおい


小さい頃からの幼馴染で、今は分け合って俺と父さんと3人で一緒に暮らしている。



「2万!」


「朝から生が出るね」


言いながら俺に手に持っているタオルを渡してくる。


俺はそのタオルで額から流れ出てきている汗を拭く。


「そんなの当たり前だろ俺は世界一の剣士を目指してるんだからな」


俺は手に持っている剣を上に掲げ宣言するように言う。


「今日は学院の入学院もあるし早く朝ご飯食べないと遅刻しちゃうよ!」


2人で家へと戻る。



「また庭の方で県の素振りをしてたのか?」


「当たり前だ剣の素振りは今も昔も俺にとっての日常だからな」


「今日は野菜スープとパンでございます」


テーブルの上に葵が運んでくる。


「いつも悪いな葵ちゃん」


父さんが申し訳なさ半分嬉しさ半分と言った口調で言う。


「いいんですよこの家に居候させてもらってるんですからこのぐらいはさせてください」


「男2人まともな料理が作れないもんでなそう言ってくれると助かるよ」


「俺も一応料理は作れるぞ」


「はははかずくんがこの前作ってたあれは料理じゃなくてただ野菜とお肉を鍋に入れただけでしょう」


言ってくすぐったそうに小さく笑う。


作ってもらった朝ご飯を食べ学院へ向かう準備をする。


「それじゃあ父さん学院の方に行ってくるよ」


「和也…お前に話しておきたいことがある!」


いつになく真剣な口調で言う。


「分かった、葵は先に行っててくれ」


「話が終わるまで外で待ってるから一緒に行こう」


俺は葵が外に出たところでゆっくりと地面に座る。


「それで何なんだよ俺に話しておきたい事って?」


「話しておきたいことというより確認しておきたいことという方が性格かもしれん」


何かを含んだような言い方に聞こえる。


「今更過去のことをどうこう言ったってどうにもならないのは分かりきってる」


「だがあの時お前はあの選択をして後悔はないのか?」


「3年前あの洗濯をして…」


「……」


鼻で笑い飛ばし言葉を返す。


「全く今更何を言い出すかと思えばそんなことかあの時葵を助けるためにはああするしかなかった」


「その洗濯をしたことに今更後悔なんてねぇよ」 


「それに俺があの時、あの洗濯をしたから葵が助かったって言うなら何も考えることはないだろう」


「ああ、お前があの時のことを後悔してないんだったらいいんだ」


「後今更言うまでもないかもしれないが、お前が呪いを持って生まれてきた子だというのは周りにバレないようにしろよ」


「なこと言われなくてもわかってる、もしバレたら俺だけじゃなく周りの人間…葵を巻き込みかねないってこともな」


「それじゃあ行ってくる」


「気をつけて行ってくるんだぞ」



「待たせちまったな行くか」


「うん、ところでお父さんと2人で何を話してたの?」


「別に大した話じゃねぇよただお前はすぐにいろんなやつに突っかかるから心配だって言われただけだ」


「そろそろ髪の毛伸びてきたし切ろうかな?」


耳にかかりそうになっている髪の毛を触りながら言う。


「一層のこと黒髪から染めちゃうとか?」


冗談ぽい口調で言う。


「どうせ何色にしたって大して変わらねえんだからわざわざ変える必要もねえだろう」


「ひどい!」


「そんなこと言ってねえで早く行かないと遅刻するぞ」


「待ってよ!」


しばらく歩いていると近くに大きな建物が見えてきた。


「ここが今日から私たちが通うことになる学院か!」


葵はその建物を見上げながら驚きの言葉を漏らす。


「こんなところで突っ立ってたら置いていくぞ」


「だからちょっと待ってよ!」


この学校で何が起ころうと俺が葵を守る。


俺が昔村のみんなからいじめられてた時葵が助けてくれたように!


入学式の会場に行ってみるとたくさんの生徒が椅子に座っている。



俺たち2人は並んで空いてる席に座る。


「私たちと違う色の制服を着てる人がいるけどあの人たちは何なんだろう?」


隣に座っている葵が小さな声で耳打ちするように言ってくる。


「確かこの学院は聞いた話じゃ服をそれぞれ選べるみたいだからな」


「そうなんだでもなんで制服の違う人達でこんなに綺麗に分かれてるんだろう?」


「優秀な魔力量を持ったやつ、技の技術が長けてるやつそういう自信があるやつが緑の制服に花のバッジをつけて、自分の腕に自信がないやつは黒い制服に十字架のマークのバッジをつける」


「学校側には優秀な生徒が緑の制服を着るとかそういう決まりはないみたいだが、暗黙のローカルルールとして長年そうなってるらしい」


「もちろん制服の色によってクラス分けがされるようなこともないからあいつらと普通に一緒になることだってある」


「かずくんは自分の力に自信がないの?」


「は? 何でそんなことになるんだよ」


「だって黒の制服を着てるから」


「俺はなぁ制服の色なんかで強さが決まるなんて思わねぇ」


「制服の色が何色だろうが強いやつは強いし弱いやつは弱い」


そんな話をしていると50代ぐらいの白髪を生やした男が目の前の壇上に上がる。


しばらくしてようやく長い入学式が終わり会場から出る。


「それぞれの自分たちの教室に行く前にこれからスキル測定を行います」


前にいる先生が全体に声をかける。



言われるがままになんだかよくわからない目の前に大きな水晶が置かれた場所について来られる。


順番に名前が呼ばれスキルの測定が始まる。



「次剣崎和也」


「はーい」


めんどくささを含んだ口調で返事を返し水晶の前に立つ。


俺は生まれ持った呪いのせいでスキルを習得することができない。


俺がスキルを持っていないということを周りに知られれば呪いを持っていることがばれなかったとしても何らかの不信感を与えることになる。


だから!


「そんな水晶が割れるなんて!」


手で水晶に触れる直前目に呪いの力を込め水晶に向かって放つ。


大人たちが話し合った結果俺のスキル測定はまた後日ということになった。


次に葵の名前が呼ばれ同じように水晶の前に立つ。


葵も俺と同じように呪いの力を持っているため周りにそれを知られるわけにはいかない。


葵の手が水晶に触れる前にさっきと同じように目に呪いの力を込めて放つ。


「そんなまさか今まで誰も壊したことがない水晶を2度も連続で壊されるなんて一体どうなってるんだ!」


葵は何でこんなことが起きたのか全く分かっていない様子で必死にとにかく謝り続けていた。


それからは当たり前だが何も事件は起こらず滞りなくスキル測定は終わった。 


それから自分たちの教室へ向かい先生が空いている席に適当に座れと言って俺と葵は並んで空いている席に座った。


それからクラス全体の自己紹介が始まる。


俺の順番が回ってきた。


「名前は剣崎和也得意なのは剣術ですよろしくお願いします」


「次」


「あ!えっと名前は聖年葵です得意なのは魔法ですよろしくお願いします」


「見ろよさっきのスキルテストで水晶を壊したやつらだぜなんか不思議な力でも持ってんじゃねえのか」


ちょうど真ん中の席に座っている男子生徒の1人が小さな声でそんなことを言う。


葵は席から立ったままその噂話に動揺し辺りをキョロキョロと見る。


「葵あんなのただの噂話だきにするな」


小さな声で言う。

 

この学園で俺は呪いを抱えていることを隠し通さなきゃいけない!


やってやるさ守るために!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る