第101話 うすら暑い
11月も半ばだと言うのに
一体何なの。
「温暖化」と言われれば まぁ確かにそうなんだろうけど、うすら暑くてイライラして文句を言いたくなるのは、理由がわかった所で変わりはしない。
ふと壁に飾った写真を見て、こんな幸せな時が本当にあったんだなと 辛い気持ちになる。
幸せな瞬間は確かにあって、次の瞬間
それは永遠に失われる。
でも 父が生きていた時には 写真を見て辛くはならなかった。同じような幸せがまた巡って来ると思っていた。こんなおばさんになったのに、順番通りに父が亡くなった位で、こんなにグズグズいつまでも悲しいなんて考えもしなかった。自分が父を好きだって
気付いてなかった。憎めない人だが どちらかと言えば嫌いだとばかり思っていたのに。
娘が最近結婚し、写真だけ撮るからと言って招待してくれた。幸せなはずの時間はまたやって来る。
でも母もきっと、父の不在を淋しく感じているだろう。父がいて、出席出来る状態だったら、
どんなに喜んだだろう。まぁ何かにヘソを曲げて
「絶対に行かない」と言い出す事も度々あったが。
そんな困った所も、いざいなくなってしまえば
楽しかった思い出に変化してしまう。
誰かをディスり出すと止まらなくなる、やっかいな父はもういない。私達の記憶に強く残るのは
穏やかでユーモアのある時の父なのだ。
不愉快な時には、写真を撮ったりしないのだから。
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