第93話 自分はかわいそうなのか
昨日、母と話していて イライラした。
先週も そうだった。
先週 母は
「Mちゃん(姉)は、
あなたみたいに仕事が続かないのは
ダメだと思っているらしいのよ」と言った。
私は始め、姉を不快に思ったが
いや 待てよ。
『姉は母に言っただけで、それ位の世間話はあって
良いはずだ。姉が私にそれを言ったわけではない。
それを私に伝えたがる母の意図はなんだろう』
次女に愚痴った所
「ばーちゃんは何も考えてないんじゃないの?」
という、的確な返事が返って来た。
流石次女。いつもスパッとしている。
母は思慮の足りない人だ。
そもそもそれは、『姉が言っていた』というよりは
母が自分で思っている事だろう と思い当たった。
そして 昨日。母は
「あなたは自分がやりたい事が出来ていない様で
かわいそうだ」と言った。
曰く「私達(私以外の家族)はやりたい事が既に
出来ている満足感がある」と。
『自分は幸せでお前は不幸だ』と言いたがる、
その自負が一体どこから来るのか
私は兼ねてから不思議に思っていたが
これは『そうであって欲しい』が
『そうに違いない』に擦り変わってしまっているのかなと、母の発言を考えていて思った。
私は 快適な、眺めの良い場所に住み、ある程度まともな収入もある。窓をキレイに拭いたり、トマトの
余分な枝を伐ったり、私の幸せは簡単な所に沢山転がっている。転じて、母の今の状態は、決して幸せそうには見えない。だからこそ母は、『かわいそうなのはお前の方だ』と言う事を 無意識に
私に伝えたいんだろうか。
姉は工場で コツコツ働いている。真面目に工場で
頑張れる姉を尊敬してはいるが「Kちゃんももっとこうすれば良いのに」と言う発言の多い姉には
度々辟易する。姉の様になりたいと少しも思っていない私に対して 姉は「私みたいにした方が良い」と言うアドバイスをしたがるが、もちろん全く心には響かないし、苦笑いしか出て来ない。
母が行きたいと言うので、兄の一軒家を見に行った。
改めてその家の立地を見て、そこに家を持つ=半永久的にそこに暮らす という勇気ある兄夫婦の選択は、私には出来るはずのない事だと思った。
義姉の実家付近なので、義姉に取っては土地感があり、住み易い場所なのだろう。
そこは、車が一台しか通れない道路沿いに
ギチギチに家が並んでいる。駅までバスで30分。
家の中はきっと快適なのだろうけど、広々して眺めが良く 駅まで徒歩10分の場所で30年暮らして来た自分には、そこでの生活は選択出来ない。
かと言って、キチンと一軒家を建て 老後の心配もない勝ち組の兄夫婦はきっと幸せに違いないのであり、私がその一点を捕まえて『かわいそう』などと思うのは失礼極まりない。兄も、私の心配をしてくれる事はあっても「かわいそう」と言ったりはしない。
つまり、母と姉は
失礼で常識がなく、差し出がましいのだ。
他人の幸せを自分の狭小な物差しで測ろうとする。
母は私が最近派遣で行っている大きな会社を「知らない」と言う。「そして調べようともしないんだよね?
知ろうともしないのに、私の何がわかるの?」
と言い返してはおいたが、母とわかり合える日は
きっと来ないんだろうなと思った。
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