第64話 たわしくん

暑くて眠れず 冷蔵庫から保冷剤を持って来た。

昔、たわしくん(元夫)が作ってくれたロフトベッドには鉄の棒があって、いつもそれを握っていたのを

懐かしく思い出した。冷たくて気持ち良かった。

足場を組む鉄の棒と板で、ベッドを作ってくれたんだよね。今考えるとすごい。

私は1人目がお腹にいて

2人で風呂なしアパートに住んでいた。

毎日夕方、たわしくんの自転車の後ろに乗せてもらい

少し離れたお風呂屋さんに通った。

もし娘が、フロなしアパートに住んでいてお腹に子供がいたら、今の私ならどう思うだろう?

親からは程よく、放置されていたなと思う。

たわしくんの後ろで自転車に揺られていた時の気持ちは平和そのもので、ベティが

「ジュテーム!」「ジュテーム!」って叫んでいた

シーンと同じ気持ちだなって思う。

ベティブルーの様に劇的にではないが

幸せはジワジワと壊滅的に壊れた。

たわしくんには良い所が沢山あったが、悪い所は

一緒に暮らして行ける許容範囲を越えていた。

私は長い間、絶望の中にいて

常に怒り気味で 猜疑心が強く 少しの事でブチギレし でも、良く笑って 沢山泣いた。

決して理想的ではなかったけれど

結構 頑張ったなとは思う。

私も たわしくんも、子供たちも。

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