第42話 叔母

昨日は 大好きな叔母に会えて

少しでも叔母の役に立てて 幸運だった。

また会えるだろうか。不安になる。


叔母は、本来なら受けられて当然のサポートを

受けられずにいる。半年前、秋に会った時より

ひどく不自由そうになってしまっていた。

一歩一歩、足を運ぶのも大変で そんな状態で

一人で病院へ行き 帰って来た所だった。

「なぜ誰もサポートしていないのだろう」

叔母を見かけた誰もが、そう思うだろう。

しかしそこには、周りの人間ではなく

叔母自信の問題がある。

私は叔母が負担に感じない様に 出来るだけサラっとした態度で、叔母をお家まで送った。

まだ読んでいる途中の「アルハンブラ」の話が頭をよぎった。

「ほどこしを受ける」と言う事を叔母は極端に嫌う。

私もそれは同じだから、叔母の気持ちは良くわかる。

「やってあげる」と言う感覚は賎しい。

相手はそうなりたくて、助けが必要な境遇に落ち込んでいるわけではない。

たまたまそばにいて、自分に取っては雑作もない事で 相手が少し楽になってくれたら、自分の気持ちも少し軽くなる。人助けは自分のためだ。

「助けてあげるのだから、自分の方が相手より上なんだ」と言う態度を取るのは、言語道断。浅ましい。

ただ、叔母の場合はそれが少し強すぎるのかもしれない。周りにいるみんなが、手を出せずに

ハラハラしている。うちの母も「息子たちがいるから、手が出せないのよね」と言っていた。

でもその息子たちもまた、息子だから故に

叔母の気質が良くわかっているからこそ、手が出せないのだろうと思う。指示的な態度を取って

叔母の誇りを傷つける事は決して許されない。

しかし、叔母の様子からして 残された時間は余り長くないだろう。いつ最悪の事態が起きても不思議ではないし、そうなる前に、叔母と息子たちはそれを回避するために重大な決断をする事になるだろう。

同じ状態が「後1年続く」という事は 多分ない。

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