第34話 実家の庭

死んでしまったかと心配していた

金魚とメダカが元気に泳ぐのを見てうれしくて泣いたのは、3/1の事だった。

昨日、3/16には、明日葉とツワブキを収穫した。

茹でたての明日葉の新芽は柔らかくて最高だった。

冬に鈴なりだった金柑の甘煮を一緒に食べながら

母が「今年で最後だわね」と言った。

母はもう少し、実家に住み続けるつもりだった。

父が亡くなりヘルパーさんの出入りが減ってしまってからは、火事や強盗は常に心配だった。

姉たちが画策して母の行き先を探し始めた時は

嫌な気持ちになったけれど

母をあのまま一人寂しくあそこに置いておくのも

正解とは思えなかった。

2月の母の誕生日には「何かを決める時はママのタイミングで決めてね」とだけ伝えた。

とは言え、いざ本当に離れると言う事は

母に取っては生まれ育った場所に二度と戻らない

と言う事だ。家を処分するのだから、私たち兄姉妹に取っても。隣に住んでいる母の妹にも、いつも親切にしてくれたご近所さんとも、お互いの状態を考えたら

二度と会わないかもしれない。

市内とは言っても少し離れているので、介護サービスで通う場所も変わる。そこで会っていた人たちとも

お迎えの元気で優しいお姉さんたちともお別れだ。

ケアマネさんも変わる。母から今まで持っていた全てを奪うのだから、決断は慎重でなければならない。

しかし母が決めた事ならば仕方がない。行った先には

また素晴らしい出会いがあるかもしれない。

母がどこに行っても私たちは会いに行く。

楽しい事を共有し、不自由があれば解消を手伝いたい。今までと同じ様に。

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