第6話 ヨミ村

魔力無しと宣言された…。



使うための魔管しかくがないのであれば

仕方ない。

剣と魔法の冒険譚、男の夢だが諦めよう。


夢を諦めるのはいつだって辛い、つらい…

ホントに辛い。



タクミ「シオンの力で何とかならない?」



シオン「過去の記録が無い上に、君の記録は

観測しづらい。」



タクミ「その理由って分かるの?」


シオン「魂の在り方が原因。」


タクミ「魂…」


シオン「魂っていうのは運命の導線。

その運命結末になるように肉体と精神を

作り、逆に肉体と精神の機微な変化で

形を変える。」


タクミ「つまり?」



シオン「推測の域を出ないけど、触れられない

見えない、届かない、とにかく君は観測でき

ない何かと縁がある可能性がある。」



タクミ「それがシオンでも見れない原因…。」



シオン「えぇ。」


人生でそんなものと関わる事あるかな?

とにかく俺は魔術の才なしの上

それを修正することは困難だそうだ。



タクミ「じゃあ…行こうか…」


シオン「何かごめん…」


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改めて目的の国、リーセイを目指して歩いて

行く。

残り50kmちょっと、というところだろうか、

実際は、このフェアル森林とリーセイの間に

大きな山々がそびえ立ち、

山を越えるのであれば更に距離はあるだろう…

そこで今は、竜山りゅうざんと呼ばれる山を避ける

経路を進んでいる。


唯一道として通れるその場所は

王都リーセイに続く街、コリウと

森林側の村、ヨミ村があるのだが…。


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昨夜、焚き火前の会話にて。


クロネ「ここフェアル森林は妖精の國、

フェアルの領地として名付けられた名前なの。」


タクミ「そのコリウとヨミ村が、リーセイと

フェアルの国境に当たる場所なのか。」


クロネ「フェアル森林に住む村民は

国で問題を起こした妖精の家族や恋人の

人達が共に住んでるの。」



罪人とその関係者が住む国境、入国が厳しいと…。



タクミ「逸れ者の俺達じゃ入れなくないか?」


俺とクロネ&シオンはこの世界の人でも妖精でも無い。素性が無い故に

妖精の関係者として扱われるんじゃ…、

そもそも街や村の人が境を越える

事があるのか?


クロネ「それに関してはリーセイには冒険者の職があるから、調査の折り、関所を越える

事があるの」


「だから冒険者を偽って偽装した証を

見せれば……絶対ダメ。」


シオン「絶対ダメだから。

守るためのルール、傍観者の私達が無法で

通って良いなんて無いよね。」


タクミ「シオンさん、急に出てきた。」



クロネ「しまった、今後の方針を決めるから

リアル共有をと思ってたけど…。」


リアル共有…そういうのも有るのね。


クロネ「うん。うん…、今の案は無しで。」


タクミ「駄目だったか。」



クロネ「嘘をつくのも上手く生きる機能なのにね…、」



生真面目お姉ちゃんは嘘つきを許さな

かった…。



クロネ「後は人助けかな。共に過ごす以上、

村の問題は衛兵達の問題でもある。

リーセイ直属の兵士とはいえ……」



タクミ「助けた恩人なら

融通が聞くかも…か…。」



そうトラブルが起きるのかと一瞬疑問を

抱いたが、村には妖精も住んでいる、

悩みの種は尽きないのかもしれない。



クロネ「実はヨミ村にちょっと問題が起きてて、介入しなきゃいけない案件みたい。」



タクミ「じゃ、その案件を解決して

恩着せがましく行きますか。」



クロネ「そうね困った時は全部シオンに

頼んで。」


タクミ「頼んだシーちゃん」


クロネ「お願いシーちゃん。」


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という事なのだが、

果たして妖精が住む集落とは

どんなものなのか…。



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ヨミ村の入口へと辿り着いた。


時々休憩を挟んだり、

鋭く尖ったトゲを幾つも持つ鳥の魔物や、

超音波を出す大蛇の魔物に襲われたり

しながら、ひたすら歩いてようやく

たどり着いた。


襲ってきた魔物はシオンの側まで来ると

その場で動かなくなった。

シオンやクロネの力が明らかに魔術では

無い気がするのだが、

運営地球にしか持てぬ権限ちから的な何かだろうか。




村の外からでも子供たちの遊ぶ姿や、

洗濯をする女性に農作物を収穫する人などが

確認できる。



シオン「一度、門へと向かいましょう。」



シオンと横並びに村へと足を進める、

子供たちは新しい顔に目を丸くして、じっと

見つめているが、大人達の方は

あまり気に止めていない様子、

(この手の来訪者に慣れてるのか)

この様子なら変に疑われる事も無さそうだ。



(ん?睨まれてる…。)


ちらほらとコチラを睨む者が何人か、

それもそうだろう…、自分の住む場に知らない者を入れよく思える者の方が少ないと言うもの。


(けど若い女性ばっかり…、それに…)


それに睨んだ女性の人達は皆、整った容姿に

特徴的な髪型だったり、髪の色をしている。



タクミ「シオン、俺を睨んでるのは妖精か?」



シオン「えぇ。心体の状態を見るに君に

怒りと嫌悪を抱いてる。」



タクミ「なぜ?」


シオン「生理的に無理とか?」



タクミ「なぜ!?」


シオン「感情の事なんて専門外、クロネに

聞いて。」


なぜなんだ…。

それにしても、童話のような羽が生えてたり、小さな姿をした者もいるかと思ったが、

(人と変わらない容姿か…)


人と変わらない事が余計に事態を

ややこしくしてそうだな。



一本に続く通りを進み奥の関所へと着く。


関所の側では村の男達や、鎧を纏った衛兵が

集まって話しており、

何か問題があった様子。



タクミ「どうする?」


シオン「話しを聞きに行きましょ。恩を売る

なら良い印象を持たれないと…、

コミユニケーションは大事。」


ということで、シオンがいれば事情を

理解できるのだが、ここは敢えて演技をする

ようだ。


タクミ「すみませんコリウへ向かいたい

のですが…」


村人「おぉ冒険者の方ですか。すみませんね

立て込んでまして。」



タクミ「どうかされたんですか?」



村人「この村は今食糧難でしてね。」



タクミ「なるほど、それは大変だ。」



村人「白紙化現象が起きているんです、

それで門を開ける衛兵は、若者と共に

出払ってまして…すみませんね。」



タクミ「なるほど…?」



シオン「その場所、良ければ調べさせて

貰えますか?調査の対象でして」



村人「そうでしたか、勿論 構いません、

この村でも既に被害にあった者もいるので

気をつけてください。」



シオン「ありがとうございます」



村人「場所は、あの結界が張られていない

木々を進んだ先です。」


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タクミ「シオンさん、白紙化ってのは?」


シオン「私達みたいな星使者が生まれる際に

起きる不良現象よ。」


「周りの無機物、有機物 見境なく情報を

回収して文字通り白紙にする現象のこと」



タクミ「それ、しょっちゅう起きるの?」


頻繁に起きて良い現象なのだろうか。



シオン「丁度 1年前に起き始めた現象なんだけど、どうやら地球ほしは器となる星使者が欲しい見たいで。」



タクミ「器…それはどういう理由で?」



シオン「君は何のために生きてる?」



タクミ「哲学?」



シオン「でも良い、何のために生きてる?」



タクミ「星のため?一応 星使者だし、」



シオン「星のためになるような事、君はした?」


タクミ「いや?」


シオン「クロネに聞いたけど、無職だったん

でしょ君。」




タクミ「うん、まぁ10人が1人を支える

ような時代だし、俺一人は無力…いや無職でも良いんだよ」


シオン「さぞ選択肢の多い世界だったの

でしょうね。じゃなくて、人が何故か生きるのか…」



タクミ「寂しいから。」



シオン「え?」




タクミ「人は誰かのモノを譲り受けて

生きてる、遺伝子だったり夢だったり…」


「それは大元を辿ればこの地球ほしから

授かった物だ。だからきっと感情も…、」




「そう思ったら喜びとか悲しみとか、

星にも感情はあるんだって昔考えた事がある」



「その時、思ったんだ。生き物が何故一人で

生きれないか、何故ヒトは死を恐れ、

何故ヒトは宇宙を目指すのか……」



タクミ「寂しいんだ。ひとりでいるのが…

宇宙は暗くて…明るく照らす恒星も、

傍に居る衛星も、決して触れられず、近づけば

そこはには死と生の循環が待ってる…」



「俺達、人間は星のために生きてる。

一生を誰かの一瞬に、誰かの一生が

いつか地球きみを独りぼっちにさせない

ために…と思ってるけどどう?」



シオン「どう…って、長々と、知ったような

口振りで…何言ってんだか…何言ってんの…」



タクミ「話しの流れ的に、その星ノ器ってのが星を救うための、一種のアンサーって

とこでしょ?」



シオン「そうね!そうよ!もう何!?」

クロネ(シオン照れてる?)


「動揺してるだけですけど!?」



タクミ「当てられたのがそんなに?」



シオン「うるさい!!」

クロネ(凄いでしょ、彼、そういう視点で

地球私達を見てるの。

理解されるって嬉しい物よね。)



「ク〜ロ〜ネ〜〜!!!」

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