第28話 おち◯ぽチャンバラマスター


「はぁー……っ」


 アトリアから始まり、ミモザ、メルガ、最後にミラ。

 順番に抱いてもう一周。

 更にもう一周。


 ……と、そこからはメチャクチャで、もう何が何だかわからないほど彼女たちと交わった。

 

 一回でいいことはわかっていたが、武太血ぶったちゲージの上限が上がった影響か、何度出してもまったく治らなかった。

 自分で言うのも何だが、化け物レベルの絶倫。

 僕の身体はもう、人間ではないのかもしれない。


「レグルス……くん……っ」


 恍惚とした寝顔を浮かべ、横たわるメルガ。床には体液にまみれて薄ら笑みを浮かべるミモザが転がり、ミラはアトリアと抱き合った状態で寝息を立てていた。


「……何か、悪いことしちゃったな」


 ミモザの身体を拭うと、僕や他の三人に遊ばれてできた赤い痕が現れた。

 あまりの痛々しさに顔をしかめるが、当の本人の寝顔はこの上ないほど嬉しそう。……本気でこういうのがいいなら、僕も早く慣れるよう努めないと。


「これでよし……っと」


 ミモザをベッドに寝かせ、全員に布団をかけ、頭を撫でて。

 ひと息つき、そっと寝室を出た。


 もう日の出前。

 眠りたいところだが、その前に喉を潤したい。


「ぷはぁー……ふぅー……」


 リビングに向かい、コップに水を注いで一気に飲み干す。

 もう一杯、と追加で注いだところで、


「あれ、起こしちゃった?」


 一糸纏わぬ姿のアトリアが、眠い目をこすりながら部屋に入って来た。


「んぅー、あたしも飲むぅ……」


「わかった。ソファで座って待ってて」


 もう一つコップを用意して、水を注いで彼女の元へ。

 手渡してから僕も隣に座り、一緒にコクコクと喉を鳴らす。


「……えへ、へへへーっ♡」


「な、なに? どうしたの?」


 突然、こちらへ肩を寄せて来たアトリア。

 どうしたのかと尋ねると、彼女はニンマリと微笑む。


「だって今、レグルス君のこと、ひとり占めできてるし。二人っきりになるの、久しぶりだね」


「そうだね。家を出てから、僕の周りには絶対に誰かいるし」


「でしょー? だからあたしは、このレアな状況を楽しんじゃおうってわけよ♡!」


 と言って、いっそう体重をかけて来た。


 落としては危ないので、コップをサイドテーブルに置く。

 彼女の腰に腕を回し、こちらからも軽く抱き寄せて、ジッと見つめ合う。


 もうヤることは全部ヤッて、恥ずかしいところも何もかも曝け出したのに、こんな初歩的なことが不思議と恥ずかしい。

 それは向こうも同じなようで、年相応に頬を染めて視線を逸らし、それを誤魔化すようにニッと歯を覗かせる。


 ドクンと、心臓が高鳴る。

 顔が熱くて、嬉しくて、僕も顔を伏せる。


「ミラさんってさ……」


 小さく呟いて、どこか気まずそうに視線を泳がせた。


「レグルス君の初恋の相手、だったりする……?」


「……えっ? は、初恋? 何で?」


「い、いやだって、レグルス君ってば強いひと好きでしょ? ミラさんに助けてもらった時に好きになって、そのことがあるから……ミラさんが一番好きだから、命懸けで助けたのかなって……」


 ブツブツとこぼして、数秒黙り。

 「んぁーっ!!」と声を張り上げ、太ももを叩いた。


「ダメダメ! 今の無し! 何かあたし、すごく感じ悪いこと言っちゃったかも! 勘違いしないで欲しいけど、ミラさんに嫉妬してるとか、嫌いとかじゃないからね!?」


「あ、あぁ、うん。大丈夫、わかってるから」


 アトリアは僕に好意を寄せているが、僕の腕の中にいるのは彼女だけではない。

 であれば、その中で僕にとって誰が一番なのか、誰が一番大切なのか、それが気になるのは当然のこと。むしろ今まで、まるで嫉妬らしい感情を覗かせなかったことの方が驚きだ。


「アトリア――」


 そっと名を呼び、彼女の手の甲の上に手を重ねた。


「みんなには絶対内緒にしておいて欲しいし、これは誰が一番とかそういう話じゃないけど……僕の初恋のひとは、アトリアだよ」


「……へっ?」


 僕にはパートナーが四人もいる。

 みんな大切で、誰一人欠かせなくて、平等に扱わなければいけない。だから、この話はしない方がいいのかもしれないが……幸い今は、二人っきり。秘密にするよう約束すれば、彼女は確実に守るだろう。


「すっごく小さい頃、一緒に山で遊んだでしょ。その時、すごい雨が降って帰れなくなって、二人で小さい洞穴で雨宿りしたよね」


「あぁー……あったね、そんなこと」


「もう帰れないかもって泣きそうなくらい怖かったけど、アトリアがずっと抱き締めてくれた。あの時、僕がアトリアに抱いた感情は……」


 黄金の双眸に張った薄い涙の膜が、ジッと僕を映して揺れ動く。

 僕は彼女の手を取り、ギュッと握り締める。

 どこへもやらないよう、強く、優しく。


「――たぶん、恋だったと思う」


 見つめ合って、額を合わせて。

 どちらともなく、キスをした。


 熱く交わり、体温を交換する。

 そっと離れて、笑い合う。子供の頃みたいに、ただ楽しくて嬉しくて一緒に笑う。


「……ん? あれ?」


「どうしたの?」


 ゴソゴソ。

 ぐにぐに。


 僕の竿をまさぐって、アトリアは首を傾げた。


「勃たないよ? 何で?」


「な、何でってそりゃ、あれだけ修行ったら当然でしょ。もう出すものは何も残って――」


「えいっ!」


 ぽわーっ。


 【聖女】のスキル〈聖浄の手〉が発動。

 僕の股間に活力が戻る。


「え……? あ、アトリア……?」


 強制的に勃起させられて、〈抜刀〉を使用して武太血ぶったちゲージをゼロにされて、すかさずアトリアに治されて。――辛くて嬉しくて死にそうだった、〈抜刀ヌキ〉〈抜刀ヌキ〉修行を思い出した。 

 

「ま、待ってまって!? もう朝だし……っていうか、もう十分に修行ったよね!?」


「え? あたしはまだ、全然満足してないけど?」


 僕の頬を、冷たい汗が流れた。

 

 化け物レベルの絶倫? 僕の身体はもう人間じゃない?

 とんでもない。


 上には上がいた。


「……あんたたち、まだするの? 猿じゃないんだから、程々にしておきなさいよ」


 と、ミラが部屋に入って来た。


 タイミングが完璧な助け舟。

 そうだ、程々にしておこう。――そう言いかけたが、先に口を開いたのはアトリアだった。


「ふーん、ミラさんはシないんだー♡ 本当にいいの? 満足してる?」


「し、してるわよ! 大体これは、レグルスを【おち○ぽチャンバラマスター】として強化するための修行なわけで、快楽のためにやってるわけじゃ――」


「じゃあ、ミラさんは寝ちゃっていいよ。あたしたち、二人で楽しんじゃうから♡」


「……」


 ミラはムスッと顔をしかめ、そして頬を染め。

 スタスタと小走りで迫ってきて、どういうわけか僕の隣に座った。


「れ、レグルスくん……?」


「修行を再開されるなら、私たちにも声をかけてください」


 メルガとミモザも集まってきて、昨晩と同じ状況ができあがった。


 獲物を前にした獣のように、ギラつく四人の目。

 言いようのような恐怖を感じるも、両脇から感じるアトリアとミラの体温や感触、メルガとミモザの魅力しかない肉体に、もう一人の僕はバカみたいにそそり立つ。


 ―― 武太血ぶったちゲージ上昇 ――

 ―― ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ――


 もういい。

 頼む、輝くな。


「えへへー♡ こうなっちゃったら、鎮めてあげないとねー♡」


「あ、アタシは正直、もう寝たいのよ? でも、一人だけ休むとかお姉ちゃんとして最低だし、仕方なくシてあげるんだからね?」


「レグルスくん……あ、あたしのこと見て、また……! へへっ……嬉しいなぁ……」


「昨夜は散々メス豚として飼っていただいたので、次はこちらからリードしましょう。枯れ果てるまで搾り取って差し上げます」


「い、いや、もう本当に十分だから! これ以上の修行は必要ないよ!」


 いくら股間に活力が戻っても、体力は戻らないし身体は辛い。

 そう思って訴えるも、四人は一歩も引こうとしない。


「【おち○ぽチャンバラマスター】については、まだ多くの謎が残されていることでしょう。たった一晩修行っただけで、もう追加の修行は必要ないとなぜお思いなのですか?」


「い、一理あるけど、だからって今からやる必要は――」


「危機はどのタイミングで訪れるかわかりません。坊ちゃまは、一分一秒でも早く強くなる必要があります。――つまり、一分一秒でも長く私たちと修行りまくる必要があるということです」


 「そもそも」と、青い目を細めながら言って、


「私たちの身体を使って散々気持ちよくなり、半分意識がなくとも構わず犯し続けた坊ちゃまが、私たちからの求めには応じないというのはどうなのでしょう? ……それが坊ちゃまの目指す、剣士の在り方ですか?」


「――――ッ!!」


 正論だった。


 確かに昨日、僕は彼女たちの大切なものを奪った。

 その上、堪らなくて、我慢ができなくて……何度も何度も劣情を吐き出した。


 なのに、向こうからの誘いには乗らない。

 僕の剣は――おち○ぽは、こんなに輝いているのに。


 ここで逃げるなんて、抜いた剣を鞘にしまうなんて、立派な剣士ではない。


「さあ坊ちゃま、修行りまくりましょう。そして征くのです、最強の剣士への道を」


「この変態メイドは、さっきから何言ってるの……?」


「しっ、黙ってミラさん。今いいとこだからっ」


「レグルスくんは、ちょっと抜けてるとこがあるから……こういうこと言われると、やる気になるんだよ……?」


「……アホなわけ?」


 アトリアたちがゴニョゴニョと何か言っているが、僕の意識は股間に傾いていてよく聞こえなかった。


「ありがとう。僕はもう少しで、剣士としての在り方を見失うところだった……!」


 立ち上がり、一歩二歩と前に出た。

 四人の前に立ち、腰に手を当てる。


「みんな、修行ろうっ!! みんなが満足するまで、僕はこの剣を絶対に折らないからっ!!」

 

 後ろの窓から、新しい一日を告げる太陽の光が差し込んだ。


 それを掻き消すように、股間は輝きを増す。

 僕のおち○ぽは、太陽にだって負けない――。




 ◆




「一撃一撃に魂を込めて! 適当に振ったって強くなれないよ!」


「「「押忍、おち○ぽ師匠!!」」」


「腰を入れるんだ、腰を! 腕だけじゃなくて、全身を使って!」


「「「押忍、おち○ぽ師匠!!」」」


 数百人規模に膨れ上がったおち○ぽ一門。

 冒険者ギルドの試合場を鍛錬の場として借りていたが、ここまで多くなっては入りきらない。ということで、今はローグローズの[竜の牙]の支部を使っている。


「アニキ、どうですか!? オレ、上手くなりました!?」


「うん、いい感じだ。元々筋もいいし、体格にも恵まれてる。このまま頑張れば、絶対に今より強くなれるよ」


「ありがとうございます!!」


 上半身裸で爽やかな汗を流すバドー。

 どういう風の吹き回しかあの事件以降、僕をアニキと呼び始めた。僕が右を向けと言ったら右を向き、誰よりも真面目に鍛錬に打ち込む。


 あまりの変わり様に少し不気味だが、[竜の牙]の幹部であり暴れ牛のようだった彼の更生は、組織を確実にいい方向へ傾かせた。いずれ[竜の牙]は、誰にでも誇れるパーティーに生まれ変わるだろう。


「レグルス君、そろそろ行くよー!」


「あ、うん。わかった」


 アトリアに話し掛けられ、弟子たちを解散させた。


 今日は僕たち五人で王都へ行く。

 前々から王様に呼び出しを受けていたため、ミラの家族の問題を解決する前に、まずそっちを済ませようという話になった。


「王都……き、緊張する……っ」


「メルガさんにとっては、前の職場があるところだもんねー」


「胸張りなさいよ。騎士団の連中より、今はずっと高給取りなんだから」


 あうあうと汗を噴き出すメルガ。

 アトリアとミラは、そんな彼女の背中をさすって励ます。


「坊ちゃま、アラン様より伝言が。ローグローズ近郊に魔物が出たそうです。王都へ向かう前に、そちらを処理して欲しいと」


「便利に使われてるなぁ、僕たち。まあ、色々と無茶な頼みを聞いてもらってるから別にいいけど……」


 ミラの罪を一切問わないと約束させた影響か、最近やたらとひと使いが荒い。


 王様との謁見前に仕事って……それ、大丈夫なのかな。

 ただ、誰かがやらないと、誰かが泣くことになってしまう。僕はやれやれと肩をすくめ、後ろの四人に向き合った。



「――――よし、勃起だ」



 抱き締められ、呼吸を制限され、唇も奪われて――。


 ―― 武太血ぶったちゲージ上昇 ――

 ―― ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ――


 今日も戦いへ臨む。

 煌々と竿を輝かせながら。





 僕はレグルス。

 【おち○ぽチャンバラマスター】のレグルス。


 いずれ世界にその名を刻む、最強の剣士だ。





――――――――――――――――――

 あとがき


 ということで、第一章完結です。

 キリよく10万字に達したので、ここで一旦一区切りとさせていただきます。


 第1話のあとがきにも書きましたが、本作はおち◯ぽチャンバラマスターという言葉から膨らませたお話です。何度も「せっかくのカクヨムコンの時期に、こんなの書いてどうするんや……?」と正気に戻りかけましたが、皆さんからの熱いレビューや嬉しい応援が私を正気から遠ざけここまで書くことができました。本当にありがとうございます。


 本日より、新作の連載を始めました。

 『仕事ですか? 毎日俺を殺しに来る女に飯を食わせる配信で稼いでます』という、現代を舞台とした料理系配信者の主人公と腹ペコな銀髪美女が織りなすグルメ系ラブコメです。


https://kakuyomu.jp/works/16817330662056901827


 実は私、カクヨムコンをラブコメで2回受賞しておりまして、異世界おち○ぽファンタジーだけでなくラブコメも得意だったりします。

 美味しいご飯あり、可愛いヒロインあり、ちょっとえっちな雰囲気ありなお話となっておりますので、よろしければどうぞ。


 また、第8回カクヨムコンテストでコミカライズ賞を獲った『大学で一番かわいい先輩を助けたら呑み友達になった話 ~酔った先輩は俺への「すき」が止まらない~』も、とても面白いので手に取って頂ければ幸いです。


 こちらの作品、しっかりとヤることはヤっており、ぶっちゃけ本作よりも格段にえっちだと思います。

 あとアトリアとミモザは、『大学で一番かわいい先輩』のメインヒロインの天王寺朱日、サブヒロインの一条晶がモデルです。二人のことが好きなひとには刺さるかなぁと。


 https://kakuyomu.jp/works/16817330647736836399




 最後になりますが、本作はカクヨムコン9にエントリーしております。

 こんなアホなタイトルと内容ですが、私は書籍化も漫画化もまったく諦めていないので、面白いと思ったらレビュー等で応援して頂けると幸いです。


 今後とも、よろしくお願いいたします。

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