第二十七話・・・羨ましい
~~前書き~~
どもう!! 空野そらでございますけれでも、先に言って置きます。
今回の話は少しいつもより長いです。
てなわけでネタもないので本編へどうぞ!
~~~~~
「知っていることを教えろ」と言いたかった。そうすれば全てが解決するかもしれない。だけどそれを聞けるほどの勇気がまだ俺にはない。
言うことは簡単なのだろう。でももし、親父が本当に関与しているのなら? 親父はいずれ捕まる。恐らく俺はそれが怖いんだろう。実の父親だ、それに幼少期の頃から中学校卒業まで自分の人生を支えてくれていた。そんな人間と会って間もなくさよならだなんて酷が過ぎないだろうか。
確かに親父が本当に関与しているなら絶対に許してはならないこと。実の、血が繋がっている親子だとしても、いやだからこそしっかりと正さないといけない。でもそうなってしまったら俺はもう今後親父とは会えなくなる。
他の人も命が天秤に載せられているにも拘らず家族の心配をする。そんな自分に嫌気が差してくる。
「どうしたんだ? いきなりそんなことを聞いて。なんだ、お前の知り合いだったりするのか?」
その言葉に対しての適切な返しが思い浮かばない。知り合いと言えばそうなるだろうが少し会話を交わした程度だ、それだけで知り合いと言えるのだろうか。
「まあ、初対面以上知り合い以下って感じ」
「そうなのか......」
相当気まずい。親父と話すなんてこんな高難易度だっただろうか、昔はもっと気兼ねなく冗談も含めて談笑していたはずなんだが、会っていない内に俺も、親父も変わってしまったのか。
「その、喜入、さんについてなんだけど、知ってることとかあるか?」
「知ってること? いや特には、ニュースで喜入グループのご令嬢が誘拐されたってくらいしか。後は俺の親友が嬉しそうにその子供を見せてきたくらいしか」
「そう......親父はそれについて何も関わっていないんだよな」
「そりゃあ勿論。再婚して、会社も最近になってようやっと上手くいっているのに犯罪なんかに手を染める訳ないだろ。まあ一つ心配なのはアイツが連絡を寄越さないってことくらいか」
納得のいくアリバイだ。俺がまだ中学生だった頃までは親父はいつも疲れ果てていて、幸せとは程遠い生活だった。だけど今は再婚を果たし、別居と言えど子供を持ち、会社も成功させる。さながら得意満面と言った生活なのだろう。
それに恐らく喜入の父親とも交友関係を持っており、心配もしているようでこれ以上疑うところを見つける方が難しい。
このまま問い掛け続けても俺が覚悟を決めなければ深層について知ることができない。そして俺はまだ親父と別れるという選択を取る覚悟がない。だから深入りはせず、またの機会があるだろうと一旦身を引くことにした。
霧島には申し訳ないが、俺の気持ちというものがあるんだ仕方がないだろう。ちゃんと謝罪すれば許してくれる筈だ。
「......俺は先に部屋に戻る」
「そうか、分かった」
「あっそうだ」
親父に背中を向け、一言述べるとベランダの戸の取っ手に手を掛ける。そこで親父が思い出したかのように、そしてほんの少し嬉々とした声で言う。
「ここ、一応風呂場があるんだけど、狭すぎるからなのか大抵実質混浴だからな」
「............??????」
完全に理解ができなかった。親父が放った”混浴だからな”という言葉が脳内リピートされていく。
混浴——それは男女が共に、同じ湯を共有し合う風呂の事で、それが現在宿泊している旅館で実施されているということは予期せぬ時に異性が訪れてしまう。
来易く風呂に入れないということになってしまう!
とんでもない爆弾を投下した親父は茹蛸のように赤くなってしまった俺の顔を気にも留めず空に浮かぶ星々に目を輝かせていた。
いや、思春期真っ只中の男子高校生をこんなところに連れて来るな! そんな言葉が口から漏れそうになるものの、何とか寸でのところで胃の中へ押し込む。
梅雨入り時で少し冷たい夜に冷やされた体が一気に熱くなって変な汗が出て来る。俺は深く考えることをやめ、そそくさとベランダを後にするのだった。
部屋の中では一人の女性と二人の幼女たちが仲良さそうに会話に花を咲かせていた。言葉の節々から聞こえて来るのは「大学はどうだった」や「
だからなのだろうか、俺は心のどこでこの三人に羨ましさに近いものを抱いているように感じる。親子というには程遠いまでの関係になってしまい、会話も儘ならない。そんな親父との間が寂しく感じるのだろう。
俺は膝を曲げ、しゃがむと舞の両脇に手を突っ込み、持ち上げてそのまま立つ。そして抱き寄せると、舞の黒い髪にへと顔を
それがおかしかったのか、俺は思わず喉で笑いをクツクツと殺しながら視線を逸らす。
「ど、どうしたの? 諒ちゃん大丈夫?」
「い、いえ、なんでも、ないです」
「いや、笑いながら言われても説得力ないよ!? 皆無だよ!?」
「おにーちゃん、おかしくなっちゃった!」
おい舞、それは普通に傷つくからやめてくれ。愛しい義妹からの純粋な言葉に若干身じろぎしながらも、俺は継母に柔らかく笑みを飛ばし、一言述べる。
「俺もよく分かってないですけど、ありがとうございます」
「え!? きゅ、急になに!? どうしたの? 怖いよ!」
「
「え、う、うん」
「亜依さんと舞を、そして親父を大切にしてくれてありがとうございます」
「それは、どっちかと言うと私の言葉だよ」
「それもそうですね」
意味の分からないこと言っているにしか見えないだろうが、俺はただ感謝を伝えたかっただけだ。亜依さんと舞に出会えたこと、本当は俺がどうにかしてやらないといけなかった親父を立ち直らせてくれたことを。
だが、それを伝えるのは少しばかり恥ずかしさを覚えるので細かいことは言わない。不器用な奴だって思われてもいい。みんなが楽しんでいれば。
そんなことを思いつつ俺は一人で部屋の玄関に足を運ぶ。この後は少し身支度をしてから急いで風呂に向かうことにする。混浴だと言って入らないという訳にはいかないので、一人の内に早く終わらせていれば何とかなるだろう。
「じゃ、お邪魔しました」
「うん......あ、ちょっと待って」
流美さんが俺の服の裾を引っ張ったかと思うと、耳を貸せとジェスチャーで伝えてくる。その意図を汲み取った俺は流美さんの口元に耳を近づける。
「別に......お母さんって、読んでくれてもいいのよ?」
「..................呼べたら呼びます」
「それ呼ばない奴じゃない!」
笑いを零しながら「それでは」と言い残し部屋から退散する。
(俺、親父と同じ血が通ってるかもしれん。あんなん無理やん、あんな声で言われたら逆に呼べんくなるて!)
内心そんなことを嘆きながら俺は自室にへと戻っていくのだった。
~~後書き~~
どもう! 空野そらでございます!
さあ、今回は3000文字近いくらいの文字数っていうことでね、久しぶりにこんなに書きましたよ
最近は長く言っても2000くらいだったのにですよ?
ブランクにブランクが重なった結果なんですが、なんだ? ブランクをずっと背負わなければならないんですか?
実質この後書きと前書きを含めたら3000文字超える気がするんですが、それはまあ本編じゃないですしノーカンです
と、こんな話をしていますが、あともう少しで30話に到達します! 忙しい時以外ほぼ毎週投稿していたと思うんですがなんだが時間の流れが速く感じてしまいますね
あれ? もうこんなに書いてるの? これ以上書いていたら無駄話で文字数制限到達しそうなので序盤で留めておきます。
それでは締めにへと入らせていただきます。
誤字脱字、感想等は気軽にお寄せください。
ではまたお会いしましょう!
あ、亜依さんたちのお母さんの名前は流美だよ! 知ってるかもだけど!
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