第3話 2秒差


負けた。


団体戦は、2秒差で、3位入賞を逃した。


個人戦について、出場した組で、私は最下位だったが、それは、どうでも良い。



問題は、2秒差だった団体戦だ。


いけ!

ファイト!

頑張れ!


名前もひたすらに、連呼した。

人生最大の声量を出し、のどが痛く、かすれた。



私は私なりに、応援の場所を変えた。

最期は、一番加速して欲しい位置、つまり“トラック”に戻ってくる位置で、彼女を応援した。



最期のトリだった、最速の“相棒”は、3人以上、ごぼう抜きした。


あと、1人だった。

200mもなかった。


あと、数メートルのわずかな距離だった。


今大会が、メダルの最後のチャンスだった。


ゴール直前で、最速の“相棒”が、3位チームのアンカーに、追いつくことを、“諦める”のが、わかった。


チームメイトが落胆するのが、わかる。


それでも、盛大に称える。



2秒差。

たかが、2秒。

されど、2秒。


何がいけかった?

2秒差の原因は何だ。


反省会は、軽めに、役職のあるモノのみに留めた。


そんなやつはいないが、非難合戦に、ならないように、するためだ。



全員の体調は、朝、確認した。

問題なかったハズ。


結果は、残酷だ。


ベストを出した子も複数いた。

練習で、本来出せていた力を出せなった子もいた。


一番最初に会場入りし、良位置を確保する作戦が裏目に出たか?

皆、早起きで、眠そうだった。


会場で、一番おおきな声を出す作戦が裏目に出たか?

皆、少し恥ずかしそうにしていた。


この大会に初参加の者も、比較的多く、緊張していたのか?



『アレって、4位入賞のことだったんだね。』


場を盛り上げようとした冗談でも、皆の気持ちは、戻らない。


一位の常連校は、『来年も連覇を、目指す』などと、他校の前で、のたまう。

皆の闘志に、火をつける。


ありがとう。

また、私達は、必ず帰ってくる。

必ずだ。


このままでは、終われない。



「練習を継続し、先輩から教えて頂いた技術を、継承していきたい。」


普段は、無口で寡黙な、初参加の後輩が、大きな声で力強く、決意を示したのが印象的だった。


練習は、継続される。

私達のバトンは、確かに、次の世代に受け継がれた。


未来は、つながっている。

明日への道は、途切れていない。



この命、燃え尽きるまで、戦い続ける。


それが、私達が、この世に、生まれてきた意味だ。

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