198話、普通の迷宮
色々な屋台を冷やかしたり爆買いしたりしながら、午前、午後を過ごす。
気になったものとしては、やはり油が豊富な事による料理の多様さだ。
ポテチに近いものも、ここにはあった。我が国が発祥じゃないようだ。まあ我が国のもそもそも別世界発祥だけど。
油に香辛料の味と匂いをつけてなにかを炒める、という物もあった。チャーハンとかそういうのに近い。これもなかなか、屋台ごとに特色があってよかった。オオネズミの肉がチャーシューみたいでよく合う。
「食べてみれば美味しいのです」
「先入観がなければ、なかなかいいものですね」
マリアもレティも、オオネズミは気に入ったようだ。
どうせならと、昼過ぎに一度、普通の迷宮に潜る事にした。
仲間に特級がいるので、最下級の我々でも入場制限がある迷宮にも潜れるという。
「一級の迷宮いくっすか」
「大丈夫かなあ」
「余裕なのですよー」
まあ、このメンツでは余裕か。数時間くらいのお試しだし。
一級制限の迷宮は、冒険者ギルドの近くにある。
まずはギルドの方へ向かおう。
「ま、軽い運動にはなるっすね」
前方から音速をこえて突進してきたイノシシを真っ二つに切り裂き、軽い調子でヒナは言う。
「手刀縛りはなかなか面白いのう。マリアには負けられんわい」
「おじいちゃん強いのです! 私もシュトーするのです」
ムサシはイノシシを手刀で切り裂いた。マリアもまあ、出来そうではあるよなあ。
各員、縛りを設けて遊んでいる。
ヒナはエンカウント後に一歩も動かない縛り。
マリアは吸血鬼の能力を使わない縛り。
ムサシは手刀で片手縛り。
私はレティを守りながら棍棒オンリー縛り。縛りか? 私だけ甘めだが許してほしい。
マシンガンのように毒液を連射してくる蜘蛛に、マリアが急接近。普段なら霧になって接近するのだが、全ての毒液を避けながら生身での突貫だ。
見事蜘蛛に張り付き、首をもいで、心臓を手刀で一突き。
「うえ、体液が気持ち悪いのです」
そう言ってすぐに一瞬だけ霧になり、汚れだけをその場に置いて体を再構築する。戦闘には能力をつかっていないのでセーフ。
「マリアはスピードが足らんのう。地力をあげんと。能力頼りだと、そのうち大変な事になるんじゃぞ」
「私にテイムされたみたいにね」
「ほんにそうじゃよ…… 黙って斬ればよかったんじゃ」
それされてたら私はさすがに死んで…… いや、切断されてもスライムなら大丈夫なのか? 気になる。けどさすがに試す気になれないね。
「さて、みんな運動は出来たっすし、そろそろ引き上げるっすよー。冒険者の鉄則、疲れを感じる前に引き上げる、っす」
「わ、マジメにためになる講釈だ」
「私はいつでもためになる事しか言ってないっすけどね」
それは…… そうかもしれない。ヒナは頼りになる常識人だから。
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