144話、爆走

81日目、夜。

海底から帰ってきて、家の庭にいる。

私の他には、ゼストと、マリア。あと道中で会ったからヴァンも誘った。


「えー、メタスラちゃんの能力を得ました」


うねうね。腕をメタルスライム化させて見せてあげる。


「うわ……」


「人間辞めてるのです」


「タキナ殿……」


え、不評。かなしい。


魔物吸収のスキルと無限庫のスキルを得たこと、あと深海の宝物庫の中身をいくつかひろげながらいろいろ説明する。


「というわけで、あまりに大きすぎる魔物以外は食べられるようになったの。私は馬ちゃんを食べて爆走したいけど、他になにか案あるかな?」


みんなドン引いてるけど。このままだとみんなの前で馬ちゃんを消化してまたドン引かれるだろうな。


「ドラゴスライムはどうだ? 飛行できるのは便利だぞ」


「それは最初に思った。普通に飲めそうだし。最有力候補だね」


「うしさんはどうなのです?」


「私から出たミルク飲みたい?」


「い、いやなのです。他の考えるのです」


「タキナ殿はもはや不死身に近いし、ステータス貸与でパーティメンバーもほぼ無敵のようなものになるのでヒーラー系の能力もあまり……」


「そうなんだよね。ないよりはあったほうがいいんだけど、無くてもよさそうだなって感じ」


ドラゴスライムと馬ちゃん以外、あまり候補が無いな。

今の私は無敵の重装魔法使い、戦略兵器的なものだ。機動力以外、もう付け足すべきものが無い気がする。


「じゃ、まあ、馬ちゃんでいいかな。魔物生成! そしてぱっくんちょ!」


腕をスライム化させ、生成した瞬間の馬ちゃんを丸呑みする。

超強酸で即消化。……うん、能力を得たのがわかる。


「馬の形にならなくても、爆走できるみたい。走ってる間の消費スタミナが超激減、風や揺れの影響も超低減。嬉しい機能がもりだくさんだね」


みんなはドン引きだけど、私は満足だよ。馬肉、美味しかったし。


「みんな、相談乗ってくれてありがとね。なんか良さそうな候補おもいついたら教えて。明日は朝ごはんにドラゴスライムを食べるよ」


みんながまたドン引きして帰っていった。なによ、化け物をみるような顔しちゃってさ。


夜も遅いけど、能力を得たからにはすぐに試したくなるのが人間ってもの。人間辞めてるけど。いつから辞めてるんだろう。角生えた時からかな。

どうせならと、行くなと言われてはいたがゴールドの領地側に走っていこう。見てみたいし、人の住処。


走ること五分ほど、大きな壁が見えた。あれがゴールドのいる町かな?

しかし、その手前に、多数の魔物が迫ってきている。襲撃直前だな。

奥のほう、門の前に、人があつまっている。


「臆するな! 毎度の如く、叩き潰すだけだ! 勇敢なる騎士たちよ、今宵も貴様らの力で町を守りきるのだ!」


おお、ゴールドじゃん。ちゃんと領主してるんだ。

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