135話、ふわふわとあまあま
城の地下。マリアとふたりでまたここに来た。
今日はもう疲れたので、癒される魔物がほしい。いるかな……?
「私は強い子が欲しいのです!」
「正直、うちにいる子たちより強いのなんてもういなくないかな?」
「……たしかになのです」
バハムート、黒龍、スラちゃん、ニーズヘッグ……その他多数。これくらい強い魔物なんて、それこそ迷宮のボスくらいにしか期待できないだろうなあ。
「面白い能力のひとつでもあればいいかなって感じだねー。 お、私はあの子にしよう。ふわふわだ。綿毛かな?」
はいテイム。
情報を見てみるか。
フラフィーフライ。
精霊や妖精に近い魔物。ふわふわの羽毛が綿毛に見える。長閑な平原にのみ生息し、動物の「興味」の感情を食べて生きる。「敵意」を当てられると萎縮し、小さくなって休眠する。
かわいい。平原に生きるぽいけど、街でも大丈夫かな。花壇でもつくってあげようか。畑とかに置いてもいいが。しかしかわいい。ふわふわ。
「私はあの子にするのです。……強そうではないのですけど、かわいいからいいのです」
マリアはハリネズミのような魔物を支配した。
アメハリネズミ。
針の部分は飴っぽい材質のようだ。栄養が足りていれば、折れても翌日にはまた生え揃う。トカゲの尻尾切りみたいに、針を犠牲に逃げ延びる事もあったらしい。飴が美味しすぎて人間にも魔物にも乱獲され、絶滅したそうだ。ここにいるオスメスの二匹しか残っていないらしい。
「飴ちゃん美味しいのです」
「ああ、飼い主には普通にくれるんだ。……お、美味しい。これは乱獲されるわ」
イチゴ味に近いかな? 疲れた頭にめちゃくちゃ効く。良いな……
テイムを終え、ゼストに挨拶をして城から帰る。
ゼストはベルゼとふたりで書類とにらめっこしていた。街の拡張計画に合わせた防衛や警備の最適化、余剰戦力の有効活用、万が一の時の予備戦力の選定、などなど……最初の頃は適当に配置していたが、街と魔物数の規模が大きくなってきたからな。もう私が適当に手を出していい範囲じゃなくなってきた。どうしてもってところは口出しするけどね。
城から帰る途中、城に帰るイサムと会った。
ちょうどいいので、アビスの迷宮での事を伝える。
「てわけで、明日にでも行く?」
「ヘリオス様に会えるのかぁ……あの方の伝説とか、王国でいっぱい読んだんですよ! もう、全部がかっこよくて! そっか、会えるのかあ……! どうしよ、服とか綺麗なのあったかな? ちょ、持ち物見てみないと! ああ、手土産とか、え、魂の欠片って食べ物食べられるのかな? ああ、とりあえず食べ物と、物なんかは……和室、え、どうしよ、お土産どうしましょう」
「え、こわ。お土産ねぇ。とりあえず食べ物と、座布団とか湯呑みとかでいいのでは?」
「湯呑み! ちょ、つくってきます! 明日朝で大丈夫ですか?」
「あうん、明日の朝ね。起きたら城にいくね」
「了解です! ……わぁ、楽しみだなぁ!」
うーん、これは。
推しに会いにいくオタクだ。
ま、明日はアビスの二十層だね。
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