129話、アイデンティティ
78日目。
朝ごはんを食べ、街の見回りをして、昼からどこかにテイムをしにいく、という毎日のルーティンを、今日もいつも通りこなそうとおもう。
思ったのだが。
「三方向より襲撃でございます。数はそれぞれ二万程度ずつ。大型の魔物は確認できず、目視では、脅威度は低いでしょう。いかがなさいますか?」
「ん、めんどくさいし……トロちゃん率いる戦闘部隊をいい感じにわけて戦ってもらって。街の守りはスラちゃんとベルゼで。いつも通りお願い」
「かしこまりました」
魔物の襲撃があった。
あったのだが、これは実は昨日も来ていた。
またペースが上がったのかもしれないが、最近は雑魚しか送ってこない。エリスも疲れてるのかな。
「そういえば、スライムガールに埋もれて寝たのは、めちゃくちゃ気持ちよく寝れたな……スライム睡眠、流行るかな」
疲れがとれる、スライムベッド! いかがわしくないよ。ただのジェルベッドだよ。疲れてるなら、エリスも大きなスライムで寝たらいいのに。
襲撃に使う魔物はほとんどがエリスが生産しているらしい。うみだした魔物を、レギオンの権能で操ってると。
そんな力があるなら、もっと生産的な事をすれば……いや、神に生産的な事しろとか言っても仕方ないのはわかってるけど。
私も疲れてるのかな……。
襲撃の処理は、何事もなく済んだ。
人間の国のほうでは、魔族がどうこうで大変だったと聞いたが、最近はどうなのだろう。こっちでは魔族はあまり見ないから、真偽すらあやふやだな。
昼過ぎ。
今日のテイムは城の地下で済ませよう、と思っていたところ、エルフの王、ブラインに声をかけられた。
「マリア殿が、話があるそうだ。城で待つとのこと。では」
それだけ言って去っていった。ブラインさん、最近は住民が増えたからか、食料班の采配と探索班の新規指導で過労気味なんだよな。スライムベッドの被験者にしてやろう。よし。
というわけで城へ。テイムは帰りに地下でいいや、ちょうどいい。
「マリア、来たよ〜」
「来たのです! お話があるのです!」
なんだろう、すごく笑顔。呼び出してまでする話だから、わりと大きな事なんだろうな。ちょっと怖い。
「今朝、スキルが進化したのです! 支配のスキルが強力になって、非支配者の自我と思考力をそのままに永続支配できるようになったのです! 魅了との合わせ技で、タキナのテイムに近いことができるようになったのですよ!」
……私のアイデンティティが!!
ていうかマリア、超強化されすぎじゃない? これがあれか、ゲームでいう、壊れ性能ってやつか。
「お、おめでとう? また強くなったね」
「なのです! でも、強い方の支配は、魔力消費が大きいのです。一日一回が限度なのです」
そこも私のアイデンティティなんだけど!?
いや、うん、スキルをアイデンティティにするのは止そう。私は私……テイム以外にもいい所はあるのだ。うん。ここは素直に、戦力増強を喜ぼう。うん。……アイデンティティが……!
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