126話、行くなと言われていない


77日目、昼。

私は結局、ゴールドのいる街にいく許可が降りなかった。満場一致だ。なんなんだよもう。

かわりに、ドーグとハヤトが向かうことになった。

両方狂人だが、しかし常識的な振る舞いをすることのできる狂人だ。一応、メタスラちゃんを一人一体ずつ貸し与え、保険とした。


「イサムとマナは、国に帰らないの?」


「ああ、昨日の深夜、ユリス様の遣いの天使が来たんです。『もうすこしがんばりましょう』って。……ここでもっと鍛えろ、って事かなと思うんですよね」


「私も、『魔を知りなさい』って言われたわね。魔……魔族、魔物、魔法。全部ここにあるのよ」


なるほどな。

私を暗殺しろー、みたいなお告げじゃなくてよかったわ。

ユリスとしても、ここで学んでほしいって事かな。話がわかりそうな神様でよかった。





さて、本日はいつも通りアビスの迷宮に向かおう。


と、思っていたのだが。


「そういえば、世界樹の杖の迷宮にはもう近付くなとも言われましたね。なんでだろう」


「イサムもなの? 私も言われたのよ。いくなと言われなくても、もう行かないでしょうけど」


よし、今日は世界樹の杖の迷宮にいこう!

私は行くなと言われてないから!


というわけで、なんかあったら嫌なのでマリアには留守番を頼み、道連れにヒナをつれていく。

トロル君と、メタスラちゃんも連れていこう。

街にもメタスラちゃんを一体置いていきたいので、今日の魔物生成はメタスラちゃんにしておこうか。

エンペラースライムのエンスラ君も、今はメタスラちゃんの能力をコピーしてるけど、それは別カウントだ。あの子はメタスラちゃんだけをコピーするわけではないし。




さて、馬ちゃんを二頭つかって、爆速で霊峰の山頂へ。

世界樹の杖の迷宮に入ろうと、思ったのだが。


「え、なんかエグい色してないっすか?」


「なんかエグい色してるね。なにこれ、入りたくない」


前回来た時は、神殿に合った綺麗な白色のゲートだったのだが。

目の前にあるのは、黒、というより、濁色というか……気持ち悪い黒、かな。そんな色のゲートだ。

明らかに、おかしい。


「ま、入って即死はないっしょ。行くっすよ!」


「お、おう、まって、手引っ張らないで! いやー!」


ずぶっ、と、ゲートに突っ込まされる。

うえ、なんか気持ち悪いぞ。


入って即座には、危険はなかった。

そこは、一面が白で覆われた世界だった。


「雪っすかね?」


「いや……これは、灰、だね」


「灰……あれっすか、噴火の痕みたいな感じっすかね」


おそらく、大噴火の後なのだろう。

あまり吸わないように気をつけよう。


魔物の質が、他の場所とは段違いだ。えげつなく危ない迷宮なのがわかる。

見える範囲に、ファイアドラゴン、ラーヴァドラゴン、ロックドラゴン、そしてそれらの亜種、特異個体、ついでに他の雑魚も居るのがわかる。


「あれ、ラーヴァドラゴンの特異個体じゃない? 装甲やばくない? テイムしていい?」


「いやいいっすけど、もうちょい探索しないすか?」


ああ、たしかに来たばかりで帰るのもな……。

それに、あの巨体を麓まで歩かせるのも大変か。

テイム対象はもうすこし考えよう。

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