124話、お告げ


ハヤトにスライム関連の色々を渡して、76日目の夜。

ゼストに呼ばれ、晩御飯前に城に向かう。


「天使が目覚めたぞ」


「…………あ、ああ、そういえば居たねそんなの」


完全に忘れていたが、ハイランド?とやらから降ってきた天使を保護していた気がする。マリアに出会う直前の話だ。


「どんな感じの子? 大丈夫?」


「あー、まあ、見ればわかる。来い」


濁したな? ちょっと不安だが、見に行くとしよう。





「あ! この人がボスなんですね! よろしくお願いします! 僕は天使と悪魔のハーフ、堕天した天魔、アンジュです!」


「あ、うん、よろしくね?」


すげー元気な子だ。そしてめちゃくちゃニコニコだ。

天使ってもっと無機質な感じらしいんだけど、この子はハーフだからか、めちゃくちゃ感情を表に出しまくってる。無邪気でかわいいね。

ていうか悪魔とかも居るんだ。魔族となにが違うんだろう。


「天使はわかるが、悪魔、とは何なんだ? はじめて聞いたぞ」


おっと、ゼストも知らないのか……それはなんとも。私もいろんな種族が街にいるが、悪魔は知らないな。


「悪魔族は……まぁ、ほぼ天使と同じですけどね! ユリス様の元に居るのが天使、エリス様の元に居るのが悪魔です! 僕はその間に生まれた、禁断の恋の結晶……! どうですか? 素敵でしょ?」


つまりは悪魔は、エリスの地上干渉用の子機か。

しかし知名度が全く無いって事は、すこし違うのかな。天使を知ってるゼストが知らないのだから。


「素敵、なのかな。よくわかんないけど。そんなことより、なんでここに? というかなんでハイランド……だっけ。から落ちてきたの?」


「あ、そうだ。ここに用事があって来たんです! タキナ、って人間、転生者なんですけど、この辺にいませんか!? 話があるんです!」


わ、名指しだ。嫌な予感がする。


「私がタキナだけど」


アンジュは、パァっと顔を明るくした。


「ユリス様からの伝言です! 『エリスの支配下から離反し、こちら側につきませんか。エリスに召喚された貴方には苦しい決断になるかもしれませんが、高待遇を約束いたします。どうか、ご一考の程よろしくお願いします』とのことです! にしても、エリス様の配下には大魔王もいるんですね! これはたしかに脅威かもしれません!」


……頭がおいつかない。ゼストもこっちをみてすごい顔をしている。いや、私がなんの事かわかってないんだからそんな顔されても。


「タキナ、お前……どういう事だ?」


「えー……わかんない。どういう事? 私、勇者のオマケで召喚されて……え、勇者はユリス様が召喚したんだよね? 私も同時だけど。私だけエリスに……? わかんなくなってきた」


ユリス様に召喚されて、雑魚スキルだと思われて追放されて、でも強いスキルだったから生き延びて、勇者にも会って、アビスの遺志も感じて、全種族の共存の夢を掲げて…… ユリス様とエリスの干渉は、スキルをくれたこと以外無いはずで。

別にエリスの支配下でも無い、だろうし。


「テイマーですよね? たしか、確定テイムでしたっけ? それは、エリス様の掲げる理想のためのスキルですからね!」


ほう? エリスの理想とな。

邪神と呼ばれるエリスの理想というと、少し聞くのが怖いが。


「ユリス様は、人種の繁栄を理念としています。そして、エリス様は、人種、魔族、そして魔物の共存を理想としているのです。確定テイム、そして魔物生成は、エリス様の理想の第一歩として与えられたスキルでしょう。それを、ユリス様は危険視し、自陣営への引き込みを画策しているということですね!」


……こんがらがってきた。

つまり私のスキルは邪神の理想を叶えるためのもので、そしてその理想は人と魔族と魔物の共栄。

人の信仰する神様は、人種の繁栄しか見てなくて。

私がやってる事は、アビスの遺志を継ぐものだけど、それはなぜか邪神の理想に近くて。

今は、邪神が暴れているから人種と魔族を守るために魔物をつかって。


私はいったい、ユリスとエリス、神と邪神、どちら側につけばいいんだ?

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