122話、スライム層


76日目、昼すぎ。

今日はまた、アビスの迷宮に潜ろうと思う。

十九層。できれば今日クリアしてしまいたいが。


「私は今日はパスっす。子供らの稽古があるんすよ」


とのことなので、今日はマリアと二人きりだ。

もちろん、メタスラ二体も居るが。




アビスの迷宮、十九層。

そこは、川辺だった。

浅い川、青々とした草地、その間に粗めの石がごろごろと。


「雰囲気いいね。ここでバーベキューしたい」


「空気も良いのです」


まさにバーベキューやキャンプができるぞって感じの雰囲気だ。

魔物の種類次第では、マジでやろうかな、バーベキュー。


で、魔物は。


「スライムなのです」


「うわ、都合良すぎない? 私の欲しいものを読み取ってるんじゃないの」


川から、普通のスライムが上がってきた。

ぷよぷよ、ふにふに。ただのスライムだ。強そうでもなんでもない。


「とりあえず倒してもらっていいかな?」


「はいなのです! ……よ、弱いのですよ」


マジで弱いスライムっぽい。

アビスの迷宮、十九層にきて、まさかの雑魚スライム。どういうことだってばよ。

と思っていたのだが。


「わ、わ、いろいろ来るのです! 全部スライムなのです!」


どうやらこの階層は、いろんなスライムが居るようだ。

カラフルなスライムたちが、ぽよぽよと襲ってくる。魔法を使おうとするものもいる。

が、全部マリアが仕留める。


「色が濃いのはマジックスライムなのです。魔法が使えるから普通のより強いのです」


いろいろいるなぁ。

メタルスライムも居た。マジックメタルスライムと違い、ただの流体魔鉄のスライムだ。マジックメタルスライムは、ミスリルやらなんやらの体らしい。格が違うっぽい。

しかしほんとに色んな種類がいるなあ。


「スライム八匹でキングスライムになったりは……」


「なんの話なのです?」


さすがに無いか。


いろいろなスライムを倒し、コアを集めていく。

マリアが倒した魔物は、原型を留めているどころか、生前の姿そのままで絶命しているものが多い。当然、スライムコアは無傷だ。ハヤトが喜ぶだろう。


出てくるスライムを観察しながらしばらく進み、途中で休憩のお昼ご飯を食べる。


「おにぎりなのです。ツナマヨとエビマヨなのです!」


「マヨ被ってんね。私は昆布と角煮だよ」


ツナマヨのツナはマグロに似た魚でマグロではないし、昆布も昆布ぽい海藻で昆布ではないが、それはもう今更いいだろう。そんなことより海苔が美味しい。

おにぎり屋さんをしたいという人がいるのだ。店を用意するようにアリスに伝えておいた。


さて、ご飯も食べ、探索再開だ。

なにか面白いスライムがいれば、テイムしたいんだけど。

ボスまでになにかいないかな。

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