91話、黒虎
地獄迷宮、八層。
私、ヒナ、マリア、メタスラちゃんは、前回同様、洞窟を進んでいた。
「前とは違う魔物っすね」
各広場に中ボスらしきものがいるのは変わらないが、配置されている魔物は変わっていた。
最初は、バジリスクのような魔物だ。皮膚が白く、石化以外にも魔法を使ってくる。厄介だが、マリアの敵ではなかった。
次はサイのような魔物。
突進は音速をこえていたが、ヒナが剣で受けて終わり。
「前の剣だともっと必死こいて戦う必要があったと思うんすけどね」
武器がめちゃくちゃ強いようだ。ヘッグちゃんのとこで拾ったやつだからな。
そんなこんなで討伐しながらすすみ、改めて最奥。
ボスエリアに到達。いるのは、羽衣を纏った黒いトラ。
「やっぱりめちゃくちゃ強そうすね」
「こっちみてるです。でも相手にされてないのです」
どうやら向こうからすれば、敵にもならないようだ。
うーん、やっぱりボスとその他の実力差が凄いな、迷宮。こことアビスの迷宮が特別なだけか?
「ま、じゃあ。テイム!トラちゃん、よろしくね」
トラちゃんからめちゃくちゃびっくりした気持ちが伝わってきたが。これ黒龍の時も同じようなことあったな。こっちは邪気に染まってないけど。
さて、魔物情報を見よう。
黒虎。
極東の大陸で信仰されていた神獣。
とある出来事がきっかけで悪逆非道の限りを尽くし、地獄送りにされた。
その爪は空を割き、その牙は地をも砕く。
羽衣の力で雷を操り、自身も雷のように素早く動くことができる。
焼いた肉が好き。
これまた神獣がきた。神獣も魔物なんだね。
爆速で動き回れるでっかい魔物、これは魔物軍の討伐にも使えそうね。めちゃくちゃ強いのはヒナとマリアのお墨付きだし。
で、テイムしてからボスエリアにはいると、宝箱が出現していた。
これはまた期待できるな。
「あけたいっす!」
ヒナが元気に手を挙げた。じゃあ任せるわ。罠には気をつけてね。
罠は無かった。宝箱が開けられた。
中身は、指輪がふたつだった。
ヒナとマリアがそれぞれ持ち上げる。
「……ううん、性能はいいけど対価がよくない感じっすね。少なくとも私は要らないっす」
「こっちはいい感じなのです。……タキナには、なのですけど」
どうやら微妙か、もしくはピーキーな性能みたいだな?
まずはヒナのほうから見てみる。
吸命の指輪。
同意を得たものの全生命力と引き換えに、持ち主の魔力を全回復する。
引き換えになった者の肉体は残らないため、蘇生は不可。
うん、怖いなこの指輪。
しかしこれは、たとえばスラちゃんがつけられたなら、スケルトン一体を消費すればスラちゃんの尋常じゃなく莫大な魔力を全回復できてしまうということになるのか。
つまり、聖剣も魔剣もつくり放題……うん、運用方法をちゃんと考えよう。革命かもしれん。
で、マリアのほうは、と。
救命の指輪。
死亡して三時間以内の死体を甦らせることができる。
対価として、蘇生対象の体力の十倍、使用者の体力が消費される。
おお、いいじゃない。……私には、だけど。
十倍て。普通は無理じゃんね。体力はちゃんと回復すれば元に戻るようなので、私にとってはめちゃくちゃいいアイテムだ。なんせ私の体力は……めちゃくちゃある。めちゃくちゃ。
「なかなかいいアイテムだったねえ。地獄っぽいといえばぽいのか?」
命を奪って魔力回復と、体力を削って命の蘇生。
なかなかテーマがあるっぽい組み合わせね。意味はあるんかな。
「さて、九層に降りてから帰ろうか。トラちゃんは……ギリギリとおれるか?壁擦ってるね、ごめんね」
「かわいそうなのです」
「かえったら水場で丸洗いっすね」
ごめんよお。帰ったらわしゃわしゃ洗ってあげるから。でかいネコ科、いいなぁ。かわいい。
「猫カフェ、つくりたいな」
「なんすかその悪魔的にやばい響きの店は」
「すぐつくるのです!私がそこで働くのです!」
いやいや、街のインフラとか生産系の魔物が優先だからね? ……でも絶対につくろう、猫カフェ。ネコ科カフェ、にしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます