79話、勇者のスキル


手前の方の敵軍は、あれよあれよという間に減っていった。

やはり巨大メタリックスライム娘の大暴れが強かった。

もちろん、フロストドラゴンやフェルちゃん、トロちゃんの活躍もとてつもないが、巨大メタリックスライム娘のインパクトが強すぎて、なあ。


「みんなお疲れ様〜。このまま、奥の方も行っちゃうよ」


さてさて、どうなってることやら。





奥の敵軍は、残りが二割ほどになっていた。

ベルゼにきいたところによると、ヘッグちゃんが四割、他のメンツが四割減らしたようだ。


「で、イサムくんが最後に大技を見せてくれるって話ね?」


「期待してしまいますね、これは」


「どかーんてするのです!」


「ハードルあがっちゃうなぁ……じゃ、一応だけど、ヘッグちゃんを下がらせてもらっていいですか?万が一にも傷つけちゃったら嫌なので」


万が一にも傷つけられるかもしれないくらいの技を見せてくれるのね。これは期待。


「じゃ、目だけ気をつけてくださいね」


そう言った瞬間、メタスラちゃんが私とマリアの前に遮光魔法を張った。


閃光、爆発。

景色から色が消え、白が支配する。音も消えた。


景色と音が戻った時、目の前に居たはずの魔物たちが、消えていた。

いたはずの場所には、焼き溶かされたような地面。


つまり、塵も残さず焼き尽くされた、ということか。


「これが、切り札のひとつ……閃光老竜のブレス、をコピーしたもののコピーです。どうでしたか?」


どうでしたか、じゃないんだよな……強すぎない?なにこれ?

一万ほど残っていた魔物と、ついでに範囲内の死体が、全て、消し飛んだんだぞ。どんな威力だよ。


「閃光老竜……ああ、エルダードラゴンの生き残りですか。アレの技ならたしかに、コピーのコピーだとしてもこの程度にはなるのでしょう。いや、素晴らしい威力です」


ベルゼは知っているようだ。エルダードラゴンか、うちのドラゴンたちより強い、んだろうなぁ。

いや、勇者イサム……やっぱこの子も勇者なんだな。やばいなこの世界の勇者は。これでまだ発展途上だもんな……


「うん……じゃ、生き残りがいないかだけ確認して、処理はスラちゃんに任せて帰ろうか。……ああ、テイムしそびれたな」


「弱いのばっかりだったのです」


「それなら、帰ってからゼストの城の地下でテイムするか。マリアも一緒にいこうね」


「ついていくのです!」


さ、というわけで、三度目の防衛完了だ。

さすがにもう、雑魚では数万いても相手にならんな、ほんとに。


「帰ったら祝勝会だよ!凱旋だ!」


「うおお、なのです!」


「ああ、祝勝会ならカツか?いや、勝ったからなんでもいいのか。唐揚げ食べたいなぁ」


肉料理のオードブルにしてもらおうかな!





ということで、夕方の暗くなりかけの時間。

祝勝会は、城のホールで行われた。

なんかホールでかくない?城の中身変わったね?


「唐揚げ、トンカツ、これは……なにこれ?なに?……美味しい!わからんけど美味しいこれ!タキナさん、これなんですか!?」


「え、なにそれ知らん。こわ。……うま!え、なに!?」


今日のパーティでは、ありとあらゆる肉料理が供されている。


マリアとアリスは中央で踊ったり、綿菓子をつくったりして楽しんでいる。眼福。

ていうか綿菓子機……マジかよ、いつの間に。


ゼストとベルゼは、隅の方で真剣そうに話をしている。なんだろうな。後で聞こう。


ハヤトはドーグたちドワーフと飲み比べをしている。オートマトンが飲みつぶれることあるのか?


ヒナはブラインと談笑している。意外に仲良くなってるんだよな。なにキッカケだろう。


そして私と勇者イサムは、料理を片っ端から楽しんでいる。

よくわからない料理や、ドワーフやエルフの郷土料理が出てきたりと、すごく楽しい。

祝勝会の名を借りた料理博覧会みたいなものだ。


「いやぁ、こんなにいい思いしていいのかなぁ」


「そりゃあ、一応魔王軍を退けた勇者様なんだから。美味しいもの食べるくらいいいでしょ」


「そういわれるとまぁ、たしかに?美味しいものくらい食べても、女神様も怒らないか」


うんうん、いっぱい美味しいもの食べていきな。

私だけいい思いし続けるのもちょっと罪悪感あるし、魔王討伐は任せるし、しっかり贅沢してくれ。

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