72話、二種類目
51日目。
朝ごはんはゼストの家で食べた。
ゼスト、アリス、マリア、ベルゼ、ヒナさん、私、そしてイサムの七人で卓を囲む。
朝ごはんは米と、味噌汁と、焼き魚。大根おろしと醤油もつけてもらった。
今日はこれにしてくれ、と調理班に頼んだ。何故って?そりゃあ……
「うっ……うう、米が……米がある……味噌汁もうめぇ……焼き魚に……おろし醤油が……うぅ……」
イサムが食べながらずっと泣いている。
たった50日、されど50日。ずっと、和食なんて食べられてなかっただろう。
食べたかったよな、和食。美味しいよな、わかるよ。
高校生が、別の世界に飛ばされて、重いもん背負わされて、今日まで必死に頑張ってきたんだ。途中でご褒美あげたって、誰も文句は言わない。
「おかわり、いくらでもあるからね」
好きなだけ食べて、また頑張ってくれ、勇者様。
今日は、アビスの迷宮の十三層をクリアしにいこうと思う。
メンバーは、私、マリア、ヒナさん、メタスラちゃん。
ゼストは今日は、勇者イサムに街を案内するようだ。魔物を見慣れてくれないとね。
アビスの迷宮、十三層。氷のエリア。
前回同様、氷に関係する魔物とエンカウントする。
「ホワイトベアかわいいのです……」
「でもよくみたら顔怖くないっすか?」
「……んん、こわいのです」
ホワイトベアやアイスゴーレム、アイスワイバーンなどを燃やしながら先へ進む。みんな結構よく燃えるな。
フロストジャイアントも一度エンカウントした。これはヒナさんがタイマンで真っ二つにした。ヒナさんも、また強くなってる気がする。いいね。
「アグニの街に住んでると、なにしてもステータス上がるんすよねー。ま、ゼストさんとの模擬戦が一番やべぇんすけど」
魔物を倒さなくても、強者との訓練で経験値は稼げるようだ。特級冒険者なのにまだ強くなるんだな。特級冒険者との模擬戦で経験値を与えられるゼストはやっぱり強いな。
そういえば私もめちゃくちゃレベルあがってたな、と思ったけど、テイマーは自分の使役する魔物が相手を倒した際の経験値の半分を自分が得られるらしい。半分は倒した魔物が得るから、討伐系の班の子はだんだん強くなっていってるのかな?
自分より強い魔物がいるだけでも魔力の吸収率があがって強くなるんだけど、そっちは経験値とはまた別のようだ。難しいね。
とりあえず、討伐経験値は半分貰える、って話。
しばらく進む。
比率としては、アイスゴーレムやアイスエレメンタルが一番多く、フロストジャイアントやアイスワイバーンは少ない。スノーマンは群れで出るので、多め。
エレメンタル系の魔物が、岩や鉱石、氷などに憑依したのがゴーレムと言われているので、エレメンタルが多いとゴーレムも多いという。実際はそうではないようだが、何故か一緒に湧きやすいそうだ。系統は同じなのだろう。
バタバタと切り捨て燃やし尽くしながら進むと、ようやく階段をみつけた。
十二層には居なかったが、ここにはボスがいる。
「めちゃくちゃ強そうなんだけど」
「トロちゃんより強くて、ヘッグちゃんより弱いくらいすかね。相性あるんで一概には言えないすけど、ステータスだとそんくらいっす」
どうやら、ほんとに強いようだ。
「ほしいのです」
マリアがボソッと呟いた。いや、私も欲しいけどね。だってかっこいいし。
じゃ、二人でわけっこしようかな。私とマリアで空の旅をするときに、ツーリング出来るように。
「テイム!そして魔物生成!片方マリアのね」
「やったー!嬉しいのです!かっこいいのです!」
「甘やかしすぎだと思うんすけどねー」
いいんだよちょっとくらい。
さて、魔物情報を。
フロストドラゴン。
ドラゴン種。最強種たるドラゴンの中でも、特に接近戦に優れている。
魔法への絶対耐性があり、全ての魔法が例外なく効かない。
当然、スピードや耐久も最強たるドラゴンの名に恥じない程度にある。
絶対零度の氷で創り出した鎧や爪などでの接近戦が得意。
ブレスも強力で、ブレスに触れた相手は急速に冷凍され、粉砕される。
最強たるドラゴン種、これで二種類目。ヘッグちゃんと黒龍はちょっと違うからね、トロちゃんに次いで二種類目だ。ボーンドラゴンもあれただドラゴンの形になっただけの骨だからね、全然違う。
大きさはヘッグちゃんの三分の一くらいなので、取り回しも良さそう。
「いや、しかしかっこいいな」
「マジでかっこいいすね。私もほしいな……」
そのうち、もう少し増やすか。そのうち。
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