60話、封印
またしばらく進み、鉄骨の電波塔に向かう。
道中のワームのようなものが増えた気がする。
電波塔に到着。
どうやら、中階と最上階に大きめのフロアがあるようだ。
まずは中階へ、電波塔の外側についている階段で。
電波塔の底辺中央には建物があったのだが、そちらは上への通路が破壊されてるのが見えたのだ。
道中は特になにもなく。
「足場が不安すね……」
「こわいのです?」
「飛べないすからねー」
落ちても無傷なヒナさんと、飛べるマリアが話している。一番こわいの私だけどね。……いや、無傷なのは私もか。
中階到着。
「うわ気持ち悪いすね」
「嫌なのです」
「うーん…………メタスラちゃん、全部燃やして」
中階は、巣だった。
あのワームたちは、ここから来た幼虫だったのだろう。ビル群で見たものより小さいが、ミッチリと詰まっている。トラウマものだ。
メタスラちゃんの魔法で、青い炎が広がる。この子も、強くなったな……
燃え尽くされた部屋は真っ赤に染まり、広くなった。焦げの匂いもしない。
中階、中央に宝箱が出現した。そんな現れ方なんだ……はじめてちゃんと見た。
「開けるのです?」
「開けたいっす!」
「あ、どうぞ」
ヒナさんが宝箱をあける。……罠は無かった。
「腕輪……うわ、いらねっす」
ヒナさんが私に腕輪を投げ渡す。……効果を見てみよう。
糞の王の腕輪。
排泄の際、腕輪をしていれば、排泄物のかわりにワームを生成することができる。
ワームは言うことをきく。
うわ、いらね。
……誰に渡す?え、誰もいらなくね?魔物に渡すか……?
これもしトロちゃんに渡せたら、クソデカワームが毎日生まれるのでは?……いやいらね。これは封印だな。
「はずれ……はずれだよねさすがに。こんな所の宝箱ではずれとかあるんだ」
「がっかりっすよほんと。もう上いくっすよー」
「いくのですー」
何も無かった事にして、最上階に向かおう。
最上階へ、中階から内部の階段で。こっちはまだ壊れず繋がっていた。
最上階は、なにかの結晶で埋め尽くされていた。
「人なのです?」
「……魔族っすね、羽が」
「これまたどうするか……」
そこには、魔族が封印されていた。
背中には虫の羽、頭には触覚。老年の男性のようだが、確かに魔族だ。
エリア中央の大きな結晶に、閉じ込められている。
魔族関係なら、ゼストを呼ぶべきか?
と、思っていると。
私の手からなにかが出てきて、結晶の方へ飛んでいく。なにこれ。
これは、封印が解ける流れでは?
「全員警戒!」
「うっす!」
「なのです!」
思った通り、結晶が溶けていく。結晶に反射する光に包まれながら、中の魔族が解放されていく。
封印が解かれた。
解放された魔族が、跪く。
「悪神の封印より解放していただき、ありがとうございました。感謝いたします、『アビスの王』よ」
……何言ってんだこいつ。
「何言ってんだこいつ」
「口に出てるっすよ」
おっと、あぶね。
「貴方は何者ですか?」
魔族に問う。魔族は顔をあげ、こちらを見る。
「わたしは、魔王アビスの忠実なる臣下。蝿の王、ベルゼでございます。……魔王アビスの遺志を継ぐ、新たな王よ。願わくば、貴方の臣下の末席に、わたしも加えていただければ幸いでございます」
ベルゼ、という魔族は、ゆっくりと頭を下げた。
敵意はない。というより、もうすでに、私の配下と同じような繋がりを感じる。
言ってる意味はわからないが、こいつは敵じゃない。私のものだ。
「ベルゼ、歓迎します。これからも、私の為に微力を尽くしなさい。……こんなかんじ?」
「ふふ、ありがとうございます。わたしはこれより、新たな王の忠実なる臣下にございます」
あらためて跪き、深く頭を下げられる。
まるで、こうされるのが当たり前のような気もしてくる。はじめて会ったのに不思議だな。
「で、どうするっすか?ベルゼさんつれて帰るっすか?」
そうね、テイムもしたし、人も増えたし、一旦帰るか。お腹もすいてきたし。
「うん、まあ一旦帰ろうか。明日また来よう」
「ふふ、新たな王の仲間たちも、今日からよろしくお願いしますね」
「よろしくなのです、おじいちゃん」
「よろしくっすよー」
「……おじいちゃん、か。ふふ、いい響きですねぇ」
マリアにもおじいちゃんが増えたし、収穫はあったな。
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