第2章 町の外れで
網の目の様な通りは、サイマリアの絨毯の生地を思い起こさせ、 その通りに咲く花は、まるで、 カラフルなターバンの様相を見せている。
バラージ城は山の中腹に白く輝き、 清楚な印象をこの町に与えている。
特に日差しが強い今日のような陽気に至っては、城下に広がる町並みに、晴れやかな風を感じられずにはいられない。町の外れには、商いを行う露店商と、その周りには小さな酒場がいくつかあり、賑いを見せている。
ナタールが取りしきるバザールは、特に人気の酒場が隣にあり、探しものを求める武道家や、探検家が立ち寄ることが多かった。バザールに入ると、その店の大きさに驚く。
入口から、反対側にある遠い壁がみえないくらいだ。左には、大きな窓が4つ、そして、右にはカウンターが見えた。窓側にあるテーブルに座る、腰に長い剣を携えた男に、初老の男が窓越しに声を掛ける。
「なかなかいい剣をお持ちで。」
「ありがとう。」 と男は返す。
表情はかえないままだ。
「もう少し、剣は長い方がいい。ああ、そういえば、良い剣が手に入った。あなたになら、安くしてもいい。」
テーブルに座る男は、 「悪いが、この剣は相棒なんでね。他の剣を使う気にはならない。」
窓越しの男は、表情を固くすると、無言で立ち去る。
「ここにいると、売り込みばかりだな。」男はテーブルを立とうとすると、 カウンターから、争う声がした。
「お前の店なんか、叩き壊すなんざ、簡単なんだぜ。」
トロルリーダーがバーテンダーにがなり立てている。
「おかわりくれって、言ってるんだ。」
トロルは、カウンターを叩く。
「いい加減にしたらどう?みんなに迷惑よ。」
若くみえる女は、トロルの横に出てきた。
「このアマ。ひねり潰すぞ。」
あきらかに酔っているトロルが、 女に振り返る。
「もう、帰りなさい。潮どきよ。」
女は、トロルを見上げて、 入口を指差した。
「こいつ。」
トロルは、女に拳を上げた。
女は腰を低くして、カウンターと反対に飛び、その拳を避ける。
その先に、剣を差した男が立っていたことには気が付かなかった。
剣を差した男は、気が付つくと、女が体当たりしてきて、なんたか避けようとしたが、女の肘が、横腹にぶつかった。
「邪魔よ。」女は軽くいうと、トロルの背後から魔法を掛けた。
「エンピローム・ティルト・プリズン」
トロルは、一旦動きを止めた。
全身に麻酔をかける、医療魔法だった。
しかし、その直後から、トロルリーダーは動き出した。
剣を持った男は、
「ティルト・ブリザック」
と言いながら、向かってくるトロルリーダーから、女を左腕で庇った。
一瞬、閃光が奔ったかと思うと、トロルリーダーは、後ろに倒れ込んだ。
客はざわめいた。女は、「礼は言わないわよ。助けてくれと言ってないしね」
男は、少しほほえむと、やれやれと言った顔をした。
女は、「私は、エマ。あなたは?」男は、言った。 「アリアナ・ザラ」
「ぶつかってきて、謝らないんだな。」
と子供に諭すように言った。
「悪かったわね。あなた、救助隊のアリアナ・ザラ?」「もしかして、君もか?」
ザラは、上着を直しながらエマに言った。
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