いまだかつてない非現実が俺に
ペンネペン太郎
初依頼編
第1話 悪夢か現実か
チリチリ……
目覚ましの音が鳴る。朝の6時半、適当な朝ごはんを作り、口に放り込む。
俺には親がいない。親戚の叔父に家賃と光熱費、学費を出してもらい、高校に通っている。
学校に向かいながら、俺の話をまとめよう。
俺の名前は「
死んだ両親がつけてくれた名前らしい。色んな人の中心で照らして生きてほしいから、とかそんな理由だったかな。俺の両親は俺が生後3ヶ月ごろに死んだらしい。
「らしい」と言うのも、叔父はその話をかなり濁して話すんだ。未だに両親の死を受け入れられていないみたいだ。
そんなことを考えているうちに学校に着いた。俺の通っている学校は公立の地元校みたいな感じだ。
普通に授業を受けて毎日を過ごす、そんな日常だ。
部活に入っていないから、クラス以外にこれといった友達もいない。
それでも、結構充実した学校生活を送れていると思う。まあ、それもこれも、育ててくれて今でもお金を出してくれている叔父さんのおかげだ。
叔父さんは大学までお金を出してくれるらしい。しっかりした大学を出て、親孝行ならぬ叔父孝行ができるよう、頑張りたいと思っている。
そんな風に、何事もない日常を繰り返していた。
ちょうど夏休み前のテスト期間だった。僕は図書館で勉強することにした。静かな環境で集中できるし、必要な参考書も手に入る。テスト勉強に没頭する中、ふと窓の外を見ると、夏の陽光が眩しく差し込んでいた。「よし、この調子で頑張ろう」と自分に言い聞かせ、再び問題集に目を向けた。
数時間後、図書館の窓に夕焼けの光が差し込んでいるのに気づいた。「こんなに時間が経ったのか」と驚きながら、腕時計を確認する。もう7時を回っていた。急いで荷物をまとめ、図書館を後にする。帰り道、何事もなく帰れるはずだった。
気がつくと、俺は草むらの上に寝転がっていた。
突然の状況に戸惑いながら、周囲を見渡す。見知らぬ場所だ。しかも、背負っていたはずの学生鞄がない。頭がぼんやりとして、どうしてここにいるのかわからない。最後に覚えているのは、図書館を出て帰路に着いたことだけだ。
とりあえずここがどこかわからないから、スマホで場所を確認しようと思い、ポケットに手を突っ込んだ。
「あれ、ない。おかしいな。ポケットの中にスマホを入れていたはずなのに」
焦っている俺に、さらなる脅威が襲いかかる。
ザザザ───っと森の方面の草むらから、人の腰ぐらいのサイズの、まさしくゴブリンと呼ぶにふさわしい化け物が現れた。
俺は驚きのあまり声も出ない。ゴブリンは鋭い牙をむき出しにし、赤い目で俺を見つめている。この状況が現実なのか、それとも悪夢なのか、判断がつかない。
しかし、悪夢にしては意識が鮮明すぎる。目の前の景色があまりにもはっきりしている。
俺は恐怖を感じ、ジリジリと後ろに下がる。ゴブリンも警戒しているのか、すぐには襲いかかってこない。
しかし、俺の恐怖に染まった表情を見てか、獲物と判断したのか、地面を蹴り、急激にスピードを上げて襲いかかってくる。
人間の本能とは意外にも優秀なものだ。突然のゴブリンの攻撃に対し、俺の体は反射的に動いた。横に飛び退き、後ろを振り返る。
ゴブリンはものすごいスピードで飛んでいったため、俺の真後ろにあった木の表面に小さなクレーターのようなものができている。その中に無傷のゴブリンがいる。
「いや、無傷ってマジか!? 結構なスピードが出てたぞ」
無傷という事実に、俺は驚愕の声を上げてしまう。
ゴブリンは木から飛び出し、再び俺に向かって突進してくる。今度は準備ができていたので、なんとか避けることができた。しかし、この状況がいつまで続くのかわからない。逃げ続けるだけでは体力が持たない。幸いというべきか、ゴブリンも表面上無傷とはいえ痛みを感じているようで、突進を連続で繰り出してはこない。
俺は、その間に軽く周りを見渡す。そして発見したあるものに向かって走り出す。
ゴブリンは一瞬俺を見失ったようで、木から顔を出してからも少しの猶予があったため、あるものの前に立つことができた。
俺は、いまだに俺のことを見失っているゴブリンに、地面に落ちている石を投げつける。
コツンっとまるで石と石がぶつかったかのような音と共に、ゴブリンは俺を発見し、先ほどから何度も見せている猛スピードで俺に突撃を仕掛けてくる。
罠を張られているとも知らず。
俺は限界ギリギリまで引き付けてから、ゴブリンの攻撃を避ける。
その0.5秒ほど後に強烈な衝突音が聞こえる。
奴は、愚かにも俺の真後ろにあった岩に自らのスピードで突撃してしまった。
「かかったな。お前が俺に対してやけに突進一辺倒だから、利用させてもらったよ」
とはいえ、先ほどから見せているあの硬さだ。これで即死になるとも思っていない。俺は手のひらサイズの石を持って、岩に突き刺さっているゴブリンに歩み寄る。
ゴブリンに近づくにつれ、その姿がはっきりと見えてくる。岩に突き刺さったままの姿勢で、わずかに体を動かしているのが分かる。俺は躊躇することなく、手にした石を振り上げた。
「ゲゲゲ」と短い悲鳴と共に、ゴブリンは完全に動きを止めた。おそらく死んだのだろう。しかし万が一がある。俺はゴブリンの体を岩から抜き、
目の焦点すら合わなくなっているゴブリンの頭に対して、もう一発きついのをお見舞いした。
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