第11話

「ねぇ、こんなのでリッシュを取り戻せると思ってるの?」


「しかし、ラスタ様。お父上がそこまで許していらっしゃらないのではないでしょうか?」


「僕はあの人のための道具じゃない。僕は僕のために、いや。リッシュのために、リッシュを取り戻すんだよ」


「先ほどの魔法研究所への攻撃も他国から説明を求められております」


「あーもう。君、うるさいね……14番みたいにしてやろうか?」


「……失礼いたしました。では、国王陛下にはお話しして参ります」


「ったく、あの人も僕のことを放っておいてほしいよ。母さんを殺したんだから、父親ヅラなんてしないでさ」





 そう言ったラスタは、いいことを思いついたと言う顔をして、先ほどの従者の後をつける。


「リッシュもきっと、僕が自由にしてた方が嬉しいだろうし、あの人も終わらせればいいんだ。そうだ。あいつらも使おう。僕が自由に使っていいってあの人も言っていたし。勤務時間だけど、僕の部屋まで呼び出そうかな」










ーーーー


『女の子……?』


『女の子が監禁されている……ね』


『私、話を聞いてみようかな』


『待って、それなら僕が聞くよ』


『じゃあ一緒に行こうか。なぜか研究員たちもいないし』




「あの……なんでこんなところに捕まえられているの?」


「あなたたちは?」


「僕たちは、この国の秘密を探りに来たんだ。大切なものを守るためにね」


「……もうすぐあの人たちが戻ってくる。そうしたら、私はまた使われる」


「どういうこと?」


「……助けてください。私はもうすぐ殺されるんです。国王が次代に変わる時にそれに備えて、子を無事に産んだら……」


「妊娠……してるの?」


「はい……」


 そっとお腹をさする少女は、自分のことを15番と言った。奇しくも、現ウェズケットの国王も15代目国王である。










ーーーー

「じゃあ、またあれを使って魔法使いを苦しめようか。あの人を苦しめてもいいけど……先にあの人かな? 君たちも、地下から出て生活したいでしょ? 僕についておいでよ」


 ラスタの言葉に、戸惑った表情を浮かべていた研究員たちは、そっと頷く。


 ウェズケット王宮地下で魔法の研究をしている魔法使いたちは、違法に取引された魔法使いだ。


 魔法の使えない国ウェズケットでは、封じられた地として、その土地で産まれた者は魔法が使えないと言われている。元々魔法を神が与えた時に、使えない場所も必要だとウェズケットが残されたと言われている。旧ウェズケット領だった部分から、魔法が広がるにつれて徐々に現在のウェズケット王国の範囲まで広がったのだ。独自の技術開発のおかげで、各国に技術提供、メンテナンス等を行い、独自の地位を築いている。


 そんなウェズケットでも、魔法の研究は必要だと考えたのだろう。闇取引で魔法使いを捕え、王宮地下にて研究を進めていた。魔法使いの管轄は、隠された第5王子 ラスタ・ブリューグ……いや、本名ラスタ・ド・ウェズケットである。

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彼女は世界を終わらせる方法を知っている(のんびり更新) 碧桜 汐香 @aoi-oukai

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