恋愛バトルはティータイムの後で

綾鷹抹茶ラテ

第1話

バイト辞めたいので初投稿です。

─────────────────────



白老しらおいグループ』という企業グループがある。

源流は室町時代まで遡るほど歴史深く、かつて戦前に栄華の道を歩み、GHQによる財閥解体を受けた『白老財閥』を前身とする現代の企業グループだ。


その白老グループの代表───の、一人娘。つまり、跡取り。後継。

わかりやすい上流階級、生まれながらの勝ち組。普通の人ならば、一生関わることは無いであろう人間。

そんな人間が、目の前にいる。


「ねえ茜!ちゃんと聞いてるの?」


「えぇ、勿論一言一句逃さず聞いておりますとも。」


立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。清廉潔白、高嶺の花。

そんな褒め言葉が全て当てはまろう美貌とスタイルを持ち、常に微笑を絶やさず、どんな相手であろうとにこやかに接するクールビューティ。


誰もがそう評価するお手本のような「令嬢」、「淑女」。そんな存在が、自身の前で端正な顔を破顔させる。


「だったら一緒に考えて!」


「仰せのままに、お嬢様。」


普通の人であれば、この状況はとても喜ばしい事であろう。

誰に対しても”平等”な存在が、自身の前でだけ素を見せている。うん、光栄なことこの上ない。ラノベの主人公だ。


だがはラノベのやれやれ主人公ではなく、ただのメイドである。白老グループ現CEOの一人娘の世話係を勤める、使用人。


彼女は私に相談を持ち掛けた。それは構わない。いや、ウェルカムと言ってもいいだろう。

だが、問題なのは内容なのだ。


今、私が受けているのは───


「じゃあまずは茜の意見を聞かせて。──私は、どうしたらあの人と……お、お付き合いできると思う?」


───恋愛相談、である。


いやいやいや、脳破壊とかそういうのは特に無い。お嬢様に意識があるのは大変喜ばしい事だ。どんな事にも動じない彼女が頬を紅く染め、どうしたら意中の人を振り向かせられるのか頭を悩ませている。


うん、大好物だ。是非ともやらしい雰囲気にさせて頂きたい所存。え?手を出すな?うるさい。


だから、問題なのはそこじゃあ無い。

いや、朝っぱらの登校前にこんな話されてる事も問題ではない。いや問題ではあるんだが。


それよりも問題なのは───


「どうしたら、東雲茜斗しののめせんとを私のものに出来る?」


「……そう、ですねぇ……」


そのお嬢様の恋愛対象たる東雲茜斗とは、





、なのである。









死ゾ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る