フィードバックに対するお礼、返答部分(分割しました)

 こちらには、「デスゲームアオカケス」がさなコン3審査員賞を受賞した際に審査員の方々から頂いた講評に対する感謝と感想を書いていきます。フィードバックに対する再フィードバックになります。

 後付で考えた新しいアイデアや、反省点、言い訳などを書いていきます。(十分に伝わらなかったテーマ性メッセージ性についての解説は、主張が強いので次のページに分割しました)

 フィードバックコメントの量の少なさで議論になっていた中ありがたい、幸運なことです。

 一次通過だけが目標とはいえ、もし最後まで残って何かインタビュー的なものを受けたらこう解説したいな~という妄想はしていましたが、その妄想以上に長い補足を書いてしまいました。





 まず、審査員賞=十三不塔賞を頂いたということで、十三不塔先生ありがとうございます。「ヴィンダウスエンジン」持ってます。自分が落ちたときのハヤカワSFコンテスト受賞作は寂しいので買わないようにしてたのですが、それだけはなぜかその時買いました。


 以下 https://sfwj.fanbox.cc/posts/6591982 にある講評を読んでいきます。


>ここには根本的なコミュニケーションの問題が提示されている。他者とわかりあえないのではなく、わかりあえないはずの他者と表面上において対話が成立してしまっているように見えるのはなぜかという問題が。


 たしかにあまりこのアオカケスのことを他者と思ったことはありませんでした。これ何だっけ……誤配?伝達の不可能性みたいななんかそういうのありましたよね。アンジャッシュのコントみたいな?オートポイエーシス論で言うとシステムには入出力がないので他のシステムが見えてないみたいな…。


>デスゲームアオカケスは人間の発語に応じるように見えるが、実はそうではない。また作中で起こっていることはデスゲームなのかそうでないのか、あらゆる事象が決定不能になっていく。


 そうなのです。決定不能になっていき、最終的にはデスゲームじゃなかったと思います。デスゲームの進行とは関係なく殺されたので。でもこれは二次審査フィードバックコメントのところで詳しく言います。


>統語論や意味論、さらにはミルクボーイの漫才(「ほなデスゲームか」)までもが総動員される怪作である。


 「ほな~か」のくだりは、なんか流行っていて、漫才でみたことあるなというフレーズを入れたのですが、ミルクボーイという名前のコンビだということも記憶していませんでした。ここで書かれて思い出しました。Vtuberが言ってたから真似したのかも。





 次に、二次選考者フィードバックコメントに対する反応をさせていただきます。

 実はこちらのほうが欠点の指摘があって、添削であり、指摘はほんとにそうなので、長い反応をさせて頂くことになります。

 こちら十三不塔先生ではないんですよね?もしかしてフォローRTしてくれた飛浩隆先生でしょうか?「象られた力」とか持ってます。違ったらすいません。



>担当作ではすば抜けて面白かったです。メインアイディアはユニークであるだけでなく多面的な可能性をそなえ、それをていねいに開発してありました。お題からデスゲーム分を読み取り、それを架空の鳥類の行動と結びつけ、このストーリーがデスゲームなのかそうでないのかをサスペンスとしつつ、適度にユーモアをまぶしながらアイディアを掘り下げていく。


 このへんほんとうにうれしいですよね。ずば抜けて…。妄想していたより褒められています。シートの中でも長いですよね。だからこうやって再反応させて頂いても許されるんじゃないかなと思います。



>「仮定の気体」の外連味は素晴らしい。


 これは本当にその場で考えていて、いいのかなと思います。元からあったアイデアではなく、流れを埋めるために入れた感じです。わりとその場しのぎで入れた一発ネタが浮いてて逆に印象に残るってカクヨムで書いてた過去作の反応でもありました。

 カナリアで検知する人間が鳥に検知器として使われる側になる逆転は自分でもいいかなと思いました。カナリアはテッド・チャンのメッセージでも出てきます。テッド・チャンへのオマージュは最後にもあります。

 テッド・チャン、不可逆圧縮、生成AI批判。これがキーワードとなります。



>しかし最終コーナーに入ってから、紙幅が足りないせいか、こちらの理解が及ばなくなってきます。カケスの言葉は「デスゲームの台詞っぽく聞こえる」のではなく、人間の語彙を習得し、ヒトの発話も(カケスの文脈で)聞き取れるのですよね? どうしてそうなったかのプロセスがわからない(たぶんこれがパラレルワールドであることと関係しているのでしょうが)。そこを足してあげると、読者の混乱が減ります。


 デスゲームアオカケスのエサとかの実用言語とデスゲーム物語が偶然一致してるのは何なの?というのは重要なのにあまり考えずにそのまま雰囲気で終わりました。


 パラレルワールドっぽい(すべて固有名にデスとつく)のは、深い考えはありません。実際のウィトゲンシュタインの解釈が間違ってたら、「いやデス・ウィトゲンシュタインだから」と逃げられるからです。


 今考えたのですが、多分、カケスはいわばイラストAIユーザーのようなもので、自分の生理的要求を満たすために欲望のままに喋ってます。プロンプトのようなものです。するとなぜかchatGPTにアクセスできるエリアでは、生成物として整合性が取れてしまいます。これは作品中世界の人間界でデスゲーム小説を書いていた人たちの努力の成果です。思考の外注です。カケスは実は喋る能力がないのです。ただ、プロンプトのような単純な本能の指令を脳波みたいなものとして発します。すると、chatGPTが考えてくれ、戻り値としてちゃんとした文を返してくれるのです。(この脳波は青い構造色みたいな羽から発信されます)

 それが繰り返されてカケス側にもフィードバックされて最適化された結果、どう発話しても物語っぽく整合性が取れる感じの言語体系になったのです。

 ここまで考えてなかったのですが、ツッコまれて考えることができました。


 言語能力を外注してしまうと本能のまま周囲に願望を伝えるだけのやつになっちゃうというのは前からあった懸念です。言語は思考の道具だからです。

 ならば画像生成についても同じことが言えるはずです。なんで絵を描く能力は外注してもいいと思うのでしょうか?

 こういった生成AI批判みたいなテーマがあることは想定されてないので、余計にわかりにくいと思います。そもそもAI使用OKのコンテスト。でも、テッド・チャンも生成AIを批判しているから大丈夫です。この問題意識はさらに下のほうを読んでくださらないと伝わらないかもしれません。



>携帯電話の圏内であることが利用可能であること、がそのまま「デスゲーム濃度」と同義になるという理屈ももう少し説明が必要です。「デスゲーム濃度」がChatGPTへのアクセスを意味しており、その探知器として人を利用している(と読みました)のであれば、カケスはChatGPTと(一種の同類として)接触したがっていたのでしょうか。ならばカケスは(この物語がはじまる以前から)ChatGPTがどのようなものであるか知っており、それを利用したがっていることになる。そのあたりが文章の快調な速度にまぎれてごまかされているように思います。


 デスゲーム濃度が携帯の電波だったら、都市部に住んでいたほうがいいんじゃない?なんで森なの?というのは自分でもツッコミどころだと思っていました。こういった整合性の穴がたくさんある小説です。一次審査は加点方式の採点ということで、不備よりも勢いを重視しました。

 後付ですが、chatGPTにはアクセスできるけど、人間の「自然な自然言語」が使われる場所からは離れていたほうがいい。だから、ちょうどいいエリアが濃度が高いことになる。電波が強いけど、人間はいない、という場所が一番いい。ということかなと思います。





次に、「二次選考者以外からのフィードバックコメント」のほうから。



>ラストの展開は、著者が考えているようにはおそらく読者には伝わっていないのではないでしょうか。伝え方にもう一工夫あると、ラストのインパクトはより大きなものになったと思います。


 ラストがわかりにくいというのは、半分は本当の設定の穴なのですが、半分はわざとなところがあって、「生成AIによる無断学習の批判」というメッセージ性を前面に出さないようにしたせいがあると思います。

 主義主張を前面に出したら説教臭いし、エンタメ性が薄れるし、AI批判ってダサいと思われて減点対象になると思ったからです。だから「ノイズ」をかけてぼかし、キーワードだけ滑り込ませることにしました。あとで復元するために。



 ここから先は、自分の現実世界に関する主張が強くなるので、「フィードバックに対するお礼」と同じページで無理に読んでいただくのも負担になって申し訳ないので、ページを分けることにしました。

 審査員の方々、ありがとうございました。


 

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