デスゲームアオカケス(解説編)
廉価
デスゲームアオカケス
「チャンスは残り三回です」どこか楽しげに声は告げた。春を。
デスゲームアオカケスは、まるでデスゲーム主催者のように清爽たる鳴き声で春の訪れを告げたのだった。
デスゲームアオカケスはデスカナダにあるデスオンタリオ州の州鳥で、市民からは地元のシンボルとして親しまれている。州所属のMLBチーム、デストロント・デスゲームブルージェイズの球団名もこの鳥の英語名から取られている。青を基調とした選手のユニフォームを始めとして、州の各所でこの愛らしい鳥の意匠があしらわれたロゴや、デフォルメされたキャラクターグッズを見ることが出来る。
デスゲームアオカケスは、その名の通り、美しい青の羽毛に頭頂部から尾羽根にかけて覆われた小さな鳥で、スズメ目カラス科。学名:Cyanocitta cristata ludusmortis。市街地を嫌い、郊外の比較的人気のない森などに生息する。分布域は広く、北米以外の国でも見られる。春にはデスゲーム主催者のような澄んだ声で鳴く。
「チャンスは残り二回……おやおや、説明を最後まで聞かないからそうなるのです」
また頭上で鳴き声がした。私は鬱蒼とした樹冠を見上げたが、声の主の姿を見つけることはできない。私が同行したデス言語ゲーム学研究室の面々も、それぞれ双眼鏡を覗き込んで見回すが、まだ誰も発見できていない。朝霧に覆われた空気に澄み渡らせるような音階だけが響く。
「ルールを守ってゲームを楽しみましょう。彼のように脳漿をぶちまけたくなければね」
歌うような囀りを聞いていると、心が洗われると言った定型句では言い表せない、自然との合一のような感覚に陥る。デスゲームの乏しい都会では訪れえない感覚が、いとも簡単に。まさに森林浴ならぬデスゲーム浴と呼ぶべき体験だ。実際にここはデスゲーム濃度が高い。そうB先生は言っている。
Bさんは動物デス言語ゲーム学の研究者で、デスゲームアオカケスの鳴き声の文法構造を研究している。彼はデス言語ゲーム学の権威でもあり、ここではB先生と呼ぶ。
ちなみに私はと言えば、彼に取材を申し込んだwebニュースの記者だ。ここではAとでもしておこう。あわよくば、最近youtubeで人気の雑学系のコンテンツとしてバズろうと思っている。デス言語ゲーム学チャンネルとでも名付けて、収益化して儲けよう。肝心の私がこの学問についてほとんど無知と言っていいが、逆に一般視聴者に近い視点で語れるだろう。
「もちろん、その首輪を外そうとするのはおすすめしません。胴体とお別れしたいのでしたら別ですがね」
また鳴き声。先ほどからの内容とつなぎ合わせると、なんだかデスゲーム系作品の序盤でよく見る展開が想起されて、微笑ましい。
レーダーのような集音マイクを掲げて固定カメラを設置し始めたB先生に、私は質問をした。
「今って、デスゲーム序盤に説明を聞かずに勝手な行動をしだしたヤンキーみたいなキャラが何かのギミックに殺されて、主催者がいったん去っていくところですよね?」
私はデスゲームものが好きなので、興奮気味に早口になってしまった。
「そうでしたか?」B先生は作業の手を休めないまま、そっけなく言った。「ああ、そういえばそうかもですね」
私は肩透かしにあった気持ちで、「えっと……デスゲームアオカケスの言語を研究しているのに、内容に興味がないんですか?彼らが物語っているデスゲームの進行に」
「言辞的内容には興味がありますよ。でも、デスゲームの進行には興味がないですね」先生はそう言うと、助手のCさんに指示を出した。「今日はデスゲーム濃度と単語分布を一般線形モデルにプロットしておいて」
「はい」
私には意味がわからない専門用語の羅列を受けて、助手のCさんは謎の機器の準備を始めた。彼女はデス言語ゲーム学研究室の院生だ。私は今、よくわからない言語を使う鳥類と哺乳類に挟まれて、人里離れた森の中にいる。せっかく大好きなデスゲームについて語れると思っていた期待も外れて、寂しい気持ちになってきた。
私は質問の続きをした。
「ええと……つまり先生は、デスゲームアオカケスの言葉の文字通りの意味には興味がない、ということですか?」
「うーん……どう説明したらいいでしょうね」先生は困ったように言った。
「先生は擬人的意味に興味がないのです」Cさんが代わりに答えた。「でも、我々は統語論だけではなく意味論も扱っていますから、意味を知りたいと思っていますよ」
「さっぱりわかりません」私は降参した。
取材を受け付けた手前、対応する必要があると感じたCさんは、私の側に来て腰を据えて説明を始めた。
「Aさんは、シジュウカラの文法の研究はご存知でしょうか?これまで人間しか持たないと思われた統語規則が、その鳥にもあると確認されたのです」
「ああ、なんかありましたね」
長らく、動物の言語には文法と呼べるものが一切なく、単語だけだと考えられていた。その常識が、近年覆されたという話だ。私はそこまでしか知らない。
Cさんは続けた。
「一例として、シジュウカラの鳴き声の中で、『ピーツピ』は〝警戒せよ〟、『ヂヂヂヂ』は〝集まれ〟という単語だということがわかっていました。次に『ピーツピ・ヂヂヂヂ』は〝警戒しながら集まれ〟という文章になることも確認されました。しかし、実験で『ヂヂヂヂ・ピーツピ』という順序を逆にした人工的な文章を聞かせると、シジュウカラは反応しませんでした。私が思うに、それは統語規則を破った〈非文〉だったのです」
「はあ」
「ところで、デスゲームアオカケスの語彙はシジュウカラより多く、今までに5000の単語が確認されています。世界一賢いヨウムと言われたアレックスは、およそ100の語彙を持っていたと言われています。ですから、デスゲームアオカケスの語彙は鳥類としてはかなり多いと言えます。とはいえ、100万のオーダーを持つ人間の語彙と比べてかなり少ないですけどね。デスゲームアオカケスは、デスゲーム主催者が言いがちな単語を組み合わせるのですが、屈折や膠着を用いることで組み合わせの数は多く、十分な事柄を表現できます」
「たしかに、壮絶なデスゲームを表現するにはたくさんの組み合わせが必要でしょうね」私は同意した。
「いえ、そういうことではないのです」Cさんは訂正して、「では、先ほどから聞こえていたデスゲームアオカケスの〝会話〟について解説してみますね。たとえば、『チャンスは残り三回です』という文を取り上げましょう。『チャンス』は〝エサ〟を意味する単語です。『残り』は〝近い〟という意味。『チャンスは残り三回です』は発話者である個体にとってエサが近いという意味の文です」
「ええ……?」私はうろたえた。デスゲームは?
Cさんは続けた。「しかし、エサの周辺に敵、つまりヘビなどの捕食者の気配があるとしたら?エサのありかを知らせると同時に、仲間に危険を知らせなければいけませんね。その時は、『チャンスは残り二回……おやおや、説明を最後まで聞かないからそうなるのです』となります。単語の一部は流用されていますが、文法的に複雑な屈折がありますね。これも人間以外ではありえないとされてきた言語的特徴です」
「いやいやいや」私はかぶりを振った。「デスゲームのことを話してるんだから、デスゲームのことを意味してるんじゃないですか?しかも、常にデスゲームの進行として整合性が取れている。素直に、文字通りの意味を取ったらいいじゃないですか?『チャンス』は〝チャンス〟という意味でいいじゃないですか?今更そんな、普通の野鳥の鳴き声を分析するみたいにしなくても……」
「それはデス言語ゲーム的な態度ではありません」Cさんは毅然とした表情で言った。「言語はあなたが言うように意味だけで浮遊しておらず、常に行為と関係しています。船が海底にアンカーを降ろすように、現実という文脈と結びついていなければいけません。
デスゲームの進行という、鳥が存在する環境に全く関係のない隔絶された意味空間を仮定することは、言語の形骸化を招きます。
それが、オーストリアの哲学者、ルートヴィヒ・デス・ウィトゲンシュタインの言う〈デス言語ゲーム〉という概念の骨子です」
「ウィトゲンシュタインが言うならしかたねーか」私は諦めた。
「彼女、納得されましたか?」先生がCさんに聞いた。
「どうでしょう。無理やりといった感じです」
「座学の話をしていてもキリがありませんね。見てください。実際にデスゲームアオカケスが現れましたよ」
カメラの液晶モニターが、デスゲームアオカケスの姿をはっきりと捉えている。羽根の模様は、微妙に色調の違う青のタイルが連なったモザイク画のようで、鉱物のような鮮やかさを放っている。
「かわいいですね」
「はい」
デスゲームアオカケスの群れは、仲間同士で囀り始めた。
「チャンスは残り三回です」
「おやおや、説明の途中でしたが。私を攻撃しても無駄ですよ」
「おっと、そうそう。言い忘れていましたが、その首輪は時間切れでも爆発します」
Cさんは単語単位での翻訳を始めた。
「『説明』という単語は、地上の天敵一般のことを指すと思われていましたが、ある種の蛇に特殊化した単語だと近年発見されました」
「へえ」私は言った。「天敵の種類まで表現できるんですね」
そして思った。デスゲームは?
「上空の脅威を表す単語もいくつかあります。『首輪』は、その中でも特にハクトウワシを指示しています」
「すごい。でも、いつも天敵を警戒して大変ですね」私は適当に合わせた。
野生状態の生物は常にデスゲーム状態にあるってこと?進化はデスゲームだとか、そういうありがちなアナロジー?そんな教訓では視聴者は満足してくれないだろう。
「平和なおしゃべりもありますよ。耳を澄ましてください」
「……」
しばらくして、デスゲームアオカケスはそっと、囁くように鳴いた。「君は見込みがある。君はこのゲームを楽しんでいるね?私と同類のようだ」
「主人公は絶対この後、〝違う!お前と一緒にするな!〟って怒るじゃないですか」
「そうですか?ちなみに、今のは求愛の鳴き声ですね」
「ちょっと表の意味と裏の意味が一致してきてるじゃないですか。主催者が主人公に求愛してるみたいなんですから」
「違わないさ。君は欺瞞に満ちたこの世界に飽き飽きしている。偽善者たちが死んで清々している。違うかい?」デスゲームアオカケスが鳴いた。
「えっ」私はぎくりとした。「今、私の言った〝違う〟に反応して返事しませんでした?」
「そういうことはよくありますよ」B先生は言った。「デスゲームのセリフはワンパターンですからね。会話が合うように見えることはあります。でも、それは偶然の一致です。彼らは私達に反応しません」
「チャンスは残り二回です」鳴き声。
「一体なんで……」私はほとんど頭をかかえた。
「なぜ?そうだな。強いて言うなら……人間の本質を見たい……といったところかな。このゲームはやつら偽善者どもの本質を暴く。君以外は世界の真の姿に耐えられない」鳴き声。
「やっぱり、会話が成立してますよね?主催者がすごいイキったこと言いはじめましたけど」
「偶然ですよ。頻出する『偽善者』は、気圧についての単語です。雨が近いことを言っているのです」
「チャンスは残り一回です」
「やっぱりこれ、デスゲームですよね?」
「そう聞こえるだけですよ」
「不正解。一名、脱落」
「ぎゃああああああああ」
絶叫するB先生の身体が宙に浮きあがっていく。鳥たちに群がられて。デスゲームアオカケスが嘴を先生の身体の各所に喰いこませながら、空中に牽引していくのだ。
「なぜだ、私が間違っていたとでもいうのか」
人間の手の届かない高さまで上昇したところで、デスゲームアオカケスの群れが弾丸のように高速で飛び交った。その進路にいるB先生の身体を貫きながら。
「ぐわあああああああああ」先生は爆発四散した。
「先生ーーー!!」Cさんは叫んだ。
「逃げましょう!」私はCさんの手を引いた。
「機材が」
「いいから早く」
デス言語ゲーム学研究室の他のメンバーも同様に襲われていく。彼らの断末魔を背に、私達は森の外縁方向へと走った。
「このまま行けば森から出られます」と私。
「待ってください」
Cさんは唯一持ち出すことに成功した小さな端末を手に言った。
「ここから先はデスゲーム濃度が極端に高くなっています。致死量を超えている」
「デスゲーム濃度っていったい何なんです?」
「仮定上の気体です。誰も検知できない元素で出来た物質の気相で、デスゲームアオカケスの言語の中にだけ登場し、雨や温度と同じ環境要素として語られます」
「でも、人間には検知できない?」
「はい。炭鉱のカナリアという言い回しがありますが、あれは実際にカナリアが一酸化炭素などの有毒ガスの検知器として使われていた歴史から来ています。炭鉱員たちは鳥籠を持って鉱山に入り、もし毒ガスが存在するなら、カナリアは人間より早く苦しんで鳴き止み、しまいには死んでしまいます。これは、鳥類が気嚢という酸素吸収効率の良い呼吸システムを持つがゆえに、毒ガスに対して脆弱になってしまう、その脆弱性こそを利用した検知となっています」
「デスゲームアオカケスはデスゲームに弱いからデスゲーム濃度に敏感ということですか?カナリアのように?」主催者なのに弱い?
「そうかもしれません。しかし、実際にデスゲームアオカケスがデスゲーム濃度の高い領域でダメージを受けた様子は観察されたことがありません」
「彼らの予報によればじきにデスゲーム濃度は弱まります。それまでここで待ちましょう」
私達は茂みに身を潜めた。Cさんは青ざめて震えている。
「あんな凄惨な光景を見たのだから仕方ないですよ」私は慰めるように言った。
「いえ、気にしていません。私は、自分たちの仮説が間違っていたことのほうに対してショックを受けているのだと思います」
「そうなんですか」
「まさか、先生が間違っていたなんて。彼らが、自身のいる環境に全く関係のないデスゲームについて話していたなんて。これが本当のデスゲームだったなんて」
私はCさんの肩に手を置いて言った。
「Cさん、安心してください。これはきっとデスゲームじゃないですよ」
「というと?」
「私がYoutuberだからです。それも再生数目当ての。デスゲームものにおいて、私のように、動画のネタ集めのために軽率に危険な場所に赴く配信者は、真っ先に殺されます。なのに私は生き残って、先に先生達がやられてしまった。これはこの状況がデスゲームではないことの証明です」
「でも」Cさんは反論した。「教授や博士的なキャラが早々に退場するのはデスゲーム的です。作者に専門的な説明をする能力が無く、喋らせにくいキャラだからです」
「ほなデスゲームか」
「はい」
「チャンスは残り一回です」
頭上から、デスゲームアオカケスの鳴き声がした。彼らは音もなく接近し、我々を包囲する形で、枝から我々を見下ろしていたのだった。
「問題です。この祭壇の形はそのままで、体積を二倍にせよ」鳴き声。
「頭脳系のデスゲームだったの?」私。
「これは〈立方体倍積問題〉です。アポローンの怒りを鎮めるための方法についてデロス島の市民に助言するデルフォイの神託の内容です」Cさんは言った。
「解き方は?」
「作図不可能です。よって解くことはできません」
「詰んだ」
「はい」
「いや、適切な答えがあるのだと思う。さっき私は会話に巻き込まれたけど殺されなかった。でも先生が殺された。会話には正しい返答がある」
「それは私も考えたことがあります。自然言語処理の問題として高階のマルコフ連鎖を利用してある一連の単語の次に来る単語を予測したことがありました」
「それによると?」
「機材を置いてきたのでわかりません」
「はあ」私は失望を隠さずに言った。
デスゲームアオカケスは輪を描いて旋回し始めた。そのシルエットは絶望的な秒読みの針なのだった。
私は数秒の考察ののち、あることに気づいて言った。
「やっぱりこれはデスゲームじゃありません。B先生は間違っていなかったんです」
「どういうことですか?」とCさん。
「炭鉱のカナリアの話をしてくれたじゃないですか。カナリアは、私達だったんです。私達はデスゲームに弱い。なにせ、参加者のほとんどが死亡するのですから。デスゲームは私達の天敵です。デスゲームアオカケスは、私達のその特性を利用して、私達を検知器として使っているのです。情報という鉱山を先導させるために。高濃度デスゲームがある領域を探知するために」
「一体何のために?気体のデスゲームというのは、架空の存在です」
「私はわかったのです。デスゲーム濃度が高い領域というのは、携帯の電波が届く場所のことです」
「はあ?」
私はスマホを掲げて、音声を最大にした。
「〝デロス島の問題とは〟」
スマホが話し始めた。それはChatGPTを音声入力にしたものだった。AIはそのままwikiの要約のような文を読み上げていった。
Cさんは不安そうに言った。
「デスゲームアオカケスにスマホを襲わせるつもりですか?でも、無視されたら?」
AIの読み上げが終了したころ、デスゲームアオカケスの一羽が無情に宣告した。
「不正解。一名脱落」
「ああ……」
しかし、何も起こらない。デスゲームアオカケスは襲ってこなかった。
「では、次の問題です」一羽が鳴いた。
「〝問題ですか。たのしみです〟」AIは答えた。
そのまま、デスゲームアオカケスはChatGPTとデスゲームを進行し始めた。
「会話の輪に入れたようです」私は言った。
「でも、答えとしては不正解なのに、なぜ?」Cさんが不思議がった。
「わかりません。いまのうちに急ぎましょう」
私は、あわよくば鳥たちがスマホへの攻撃に気を取られているうちに逃げようと思っていた。しかし、予想以上に効果があったようだ。私達二人は話し続けるスマホをその場に置いて移動し始めた。
Cさんは自分の疑問に対して仮説を立て始めた。
「なぜゲームが成立したのか。きっと、デスゲームアオカケスと、大規模言語モデルを使ったAIの共通点のおかげです。その共通点とは、内容の正しさに興味がないということです。それらはあくまで、確率のみによって動いています」
私達は灌木をかき分けて、森の出口を目指した。青い死の鳥たちは追ってこなかった。頭上の高木からは普通の野鳥の鳴き声が聞こえるが、今の私達の耳には恐々として響いた。
「現実という文脈から切り離されていることが重要だったのです」Cさんは自分を納得させるように説明を続けた。「デスゲームアオカケスの使う言葉は、エサや天敵などについて語る鳥としての言語では現実を反映する代わりに、デスゲームの内容においては完全に現実の影響を遮断する必要がありました。同じ特徴を持っているのが、生成AIによる文章です。それは、人間や動物の使う言葉が発話者の体調や心理を含む様々な環境要因に左右されるのとは対照的に、言語自体以外の全ての影響を受けません」
「先ほどの比喩で言えば、アンカーを持たず空中に漂う船のような言語ですね」私は言った。
「はい。彼らはその独立した言語の実在性が現実によって否定されるのを嫌いました。だから先生は殺されたのです。デスゲームの進行とは関係なく」
「私達が文明の中に戻っても、デスゲームアオカケスはいるということですか?私達の身近に?」
「はい。それは既存の文章の、決定論的で、確率論的な複製です。それは不可逆圧縮された物語の残滓です」
暗い森が途切れ、濃い霧が晴れ、視界が開けた。まるでホワイトノイズとなるまで拡散した現実が復元されるように。
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