恋する街角~アリスcafeへようこそ~ 【リアル恋愛短編集】

音無 雪

第1話 恋する街角【遠距離恋愛】

ここは私が所属するチームがある建物の一角


穏やかな時間が流れております。



緑色のフロアカーペットに雲のような形をした白いテーブルが数卓


部屋の端にはカウンター席もございます。


柱は枝を伸ばす大樹のように加工され森の中の喫茶店 そんな雰囲気の場所



チームメイトからは『アリスcafe』と呼ばれております。


ここは恋する乙女が恋バナに花を咲かせる場所




いらっしゃいませ


『アリスcafe』へようこそ



――――



ここは私の後輩である『無敵のアリスさん』が仕切る乙女の園でございます。



喫茶店として営業しているのではありませんよ。

チームメイトが集まって交流する場となっております。


各自好きなものを持ち込みをしておりまして優雅に過ごしております。


私は主に日本茶関連を持ち込ませていただいております。

茶葉の種類は常に10種以上、抹茶、煎茶ならちょっと自信ありますよ。


茶香炉なども持ち込みまして、香炉専用茶葉なども用意いたしております。


メンバーそれぞれのこだわりにより持ち込まれた紅茶、ハーブティなども充実しており普通の喫茶店には負けませんよ。


残念ですが酒類は置いておりません。


だって私は未成年 『じゅうななさい』ですからね。





「のっぽ先輩浮かれてますよね。もう空飛びそうです」


自称店主のアリスさんはあきれ顔


今日もアイドルのような可愛いファッションのアリスさん



でも騙されてはいけません。

我がチーム最年少でありながら『無敵のアリスさん』の二つ名は伊達ではございません。彼女の武勇伝は・・・すぐにわかることと存じます。



のっぽ先輩は他のチームではありますが、仲良くさせていただいております。

その名の通り背の高い殿方で顔だちも整い優しい性格


男女問わず人気のある方でございます。



「あのさくら先輩を落としたのですよ。幸せに浸っているのでしょう。見守ってあげましょうよ」


見守りを宣言するのは同じチームの『爆乳姫子さん』 

中学校からの親友でもあります。

名前の通りお胸が爆ny・・・ げふん


溢れんばかりの魅力ある女性でございます。



のっぽ先輩とさくら先輩


今日はふたりの甘いお話を致しましょうか


さくら先輩の遠距離恋愛物語 そしてその後どうなったのか


以前アリスcafeにご来店なさった方にもその後を聞いていただきたかったところでございます。


ゆっくりお過ごしくださいませ



――――



風はまだ寒い如月初旬



アリスcafeでは女子会が開かれておりました。


本日のお茶菓子はシュークリームのようです。アリスさんの持ち込みですね。


それでは紅茶を合わせましょうか、レディ・グレイに致しましょう。



店主は女子会で忙しいようですのでセルフサービスとなります。





cafeの奥 森のように装飾されている壁の裏手には大きなモニタが二枚


高性能なカメラと照明も完備しております。

より綺麗に より美しく 乙女ですからこだわります。


オンライン女子会用の設備でございます。会議用ではありません。女子会用でございます。

異論は受け付けません。



モニタのひとつには人のよさそうな女性が映し出されております。


英国に滞在中の先輩


こちらのアリスさんと爆乳姫子さんの三人でオンライン女子会です。

私も入れていただきましょう。



「さくら先輩 お久しぶりです」


『お嬢 聞いたよ。最近聖女さまやっているんだって すごいね』



ごふっ



ダージリンの噴水と言う乙女にあるまじき水芸を披露するところでございました。


姫子さん あなたは海外にまでその情報を流布しているのですか。



「ちょっ 聖女さま 無言で揉まないでっ」


「おゆきせんぱい てくにしゃんです」




先輩がお嬢と呼ぶのはこの私 『音無雪』


深いわけがございまして『世界樹の聖女』と呼ばれております。


ご近所だけの呼び名と思っておりましたが英国まで届いてしまったようです。



なぜ聖女と呼ばれているのかはあとで姫子さんに聞いてくださいませ


とりあえず今は揉んでおきましょう。



――――



『詳細はクラウドに置いておきました。和訳は任せて良いのかな』


「アイちゃんに任せてはダメですか」



アリスさん ここでAIに頼るのはいけませんよ。


「二日もらえますか。仕上げてアップしておきます」


出来る女の姫子さんです。



(注意:ここは会社ではありません。私はじゅうななさいです。姫子さんと同年齢です)




『そう言えば関係ない話だけど・・・』


ここからが本題ですね。

さくら先輩の口癖はすぐにわかりますよ。



『あいつって最近どんな感じかなぁ・・・って・・・』


ふわっとした質問ですね。

あいつって誰ですかぁ わからないですぅ(アリスさん風すっとぼけ)



「のっぽ先輩ですかぁ 相変わらず無駄にイケメンしてますよぉ」


アリスさん・・・ いつものボケは無いのですか



『変な噂とか聞いてないかなぁ・・・ と思ってね』


変な噂ですか



「好きな人が出来たって噂聞きましたっ」



オンラインのモニタから英国の冷たく重い空気が流れ込んできます。

いつからこのような機能を備えたのでしょうか。



『・・・好きな人って・・・誰』


「名前までは聞いてないですぅ ウ・ワ・サですからねぇ」


アリスさん 無自覚無敵モードに入ったようです。

この空気の中でも物怖じしないのはあなただけですよ。



のっぽ先輩モテますが、特定の女性とお付き合いはしていないはずです。



「優しくて美人らしいですよぉ 調査班が調べましたっ」


『美人かぁ・・・ 誰だろう・・・ そんな話聞いてない』



アリスさん 調査班って誰ですか



さくら先輩が英国に行ってからもうすぐ二年


お察しの通りのっぽ先輩に好意を持っているようです。


日本にいるときは気やすい友達って関係に見えたのですが・・・


離れてしまってから恋心に気が付いてしまったのでしょう。

恋とは儘ならないものでございます。



「週に一度は夜にお話ししているみたいですよぉ もう仲が良いんですね」


『夜にデートっ そんな・・・』


お付き合いしていなくとも嫉妬はしますよね。

そんな絶望的な顔しないでくださいよ。



「さくら先輩は彼氏できましたかぁ もしかして英国紳士ですかぁ」


『・・・』


アリスさん 無敵すぎます。もう少し空気読みましょうね。



「来月帰国するんですよねっ また遊べますね」


『・・・そうね ・・・でも帰るのやめようかな』


アリスさん シュークリーム取り上げますよ。




「この一年くらいでだんだん好きになっていったみたいですよ」


『・・・そうですか』


姫子さんまで追い打ちをかけるのですか。

噂のこと詳しく知っているようですね。



「春になったら告白するって気合入れてたから」


『・・・っ』


姫子さん それ以上は・・・



「オンラインデートしか出来ないから拗らせてるみたいです。気合入りすぎ」


『えっ・・・オンライン』


「週に一度 木曜日にオンラインデートだって聞きましたよ」


『木曜日っ』



さくら先輩 顔色変わりましたね。挙動不審です。

それって・・・そういうことですか。



「春には直接会えるようになるって喜んでいましたよ。まだ片思いなのに」


『そっ そうなのね』



状況が見えてくると途端に甘くなってまいりました。

姫子さんが悪い笑顔しています。


それなら私も参加です。



「さくら先輩は何か心当たりありますか。のっぽ先輩の好きな人って」


『ちょっと わからないなぁ』



「さくらの咲く春に告白なんて素敵ですよね。憧れますね」


『さくらっ・・・そうね。素敵ね』



「玉砕覚悟で思い切って告白だそうです」


「玉砕したら残念会してあげましょうねぇ」


アリスさん お黙りなさい。



『玉砕はしない・・・かな』


さくら先輩 こんな蕩ける様な顔するんですね。


恋が実った瞬間(仮)の表情って女性が一番輝く瞬間なのかもしれません。

貴重な場面を見せていただきました。ごちそうさまです。


さくら先輩 ちなみになんですけどオンライン女子会の映像 すべてバックアップされています。



『消してっ お願いっ』


駄目ですよ。永久保存版です。緊急女子会で鑑賞するのです。

文字に起こして小説にして公開してしまうのです。



今日のシュークリーム 甘いですね。






両片思いを確信した乙女と、想いを隠せていると思っている殿方


どんな幸せな場面が展開するのか楽しみでございます。



遠く離れた距離が想いを募らせ友情が恋心に変わって行く

そんな遠距離恋愛もあるようです。



「今年のさくらは早咲きかな」


「もう咲いていると思いますよ。満開ではないでしょうか」


「まだ咲いてませんよぉ 咲いてるのどこですかぁ」



「一か月後 お花見に出かけましょう。空港にね」

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