電車に揺れる、海に沈む
苦贅幸成
◯
仕事帰り
湿気た脳みそを乗せて私は
電車に揺られる
目を
海の上にいるみたいだ
行ったり来たりする波が
カヤックの底を打つ
鼓膜は水で栓をされ
いろんなものが遠くに聞こえる
自身の震えだけが感じる
寒いからだ
電車から降りると私は
海の中に沈んだ
水面の鏡から光がこぼれ
私はずっと息を止めている
目を閉じると
周りには何も無くなっていた
私の心臓の小ささだけが残った
電車に揺れる、海に沈む 苦贅幸成 @kuzeikousei4
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