電車に揺れる、海に沈む

苦贅幸成


 仕事帰り

 湿気た脳みそを乗せて私は

 電車に揺られる

 目をつむると

 海の上にいるみたいだ

 行ったり来たりする波が

 カヤックの底を打つ

 鼓膜は水で栓をされ

 いろんなものが遠くに聞こえる

 自身の震えだけが感じる

 寒いからだ



 電車から降りると私は

 海の中に沈んだ

 水面の鏡から光がこぼれ

 私はずっと息を止めている

 目を閉じると

 周りには何も無くなっていた

 私の心臓の小ささだけが残った
















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電車に揺れる、海に沈む 苦贅幸成 @kuzeikousei4

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