02.6年前の事故
02.6年前の
あの
その当時俺の家は街の外れの方にあって、周りには特に何もなかった。ただ、家は平屋で庭も広く、蔵もあった。ちょっとしたお屋敷のように見えなくもなかった。
実際家には、何やら変な服を着た偉そうに見える人たちがよく出入りしていたから、もしかしたら結構な名家だったりしたのかもしれない。
あの日の夕方、俺は朝、母さんに夕飯が当時苦手だったピーマンが入っている野菜炒めだと告げられたため、
「僕ピーマン嫌いなのにー、なんで毎回入れるんだよ〜」
ブツブツ言いながら道端の小石を蹴飛ばす。その小石を家まで蹴り続け、嫌々ながら玄関の扉に手を掛けた。しかし、その日に限って
「なんで開かないんだよっ………!」
ビクともしない扉に
「ん?何だこれ?」
黒い
「もしかしたらこの紙が引っかかってるかも!」
俺は扉の下に貼ってあるその紙切れを引っこ抜いて
「もしかして火事 ⁉ 急いで母さんを助けなきゃ!」
俺は靴を脱ぐのも忘れて家の中に飛び込んだ。
「母さん!どこ?母さんっ!!」
ドス黒い
「母さんだ!」
俺は一目散にその足の見える方向に走っていった。
するとそこには、いつもと全然違う服を着た母さんと父さんがいた。
「黒斗 ⁉ どうしてここに?」
「母さん!それに父さんまで!この家、火事かもしれないよ!早く逃げよう!」
「いや、できないんだ。お前だけでもいいから、早く逃げろ!」
父さんが叫んだ。
「でも………」
「早く逃げなさい!ここにいては危ないですよ!さぁ早く!」
「父さんと母さんは?」
「父さんと母さんはこいつを倒さなきゃいけないんだ」
「こいつって誰のこと―――」
すると突然父さんが俺のシャツの
「痛っ!何するんだよ父さん!」
急いで戻ろうとしたが、何か目に見えない透明な壁みたいなものが邪魔をして戻れない。
「父さんっ!母さんっ!」
透明な壁を必死で叩いても全く傷一つつかない。そして、家の中から父さんと母さんの声がした。
「お前は元気でな」
「強く生きるのよ」
その声が俺に届いた瞬間、
直後、雲一つなかった空が急に曇りだし、雨が激しく降ってきた。気づけば透明な壁は消えていて、冷たい雨が体を打ちつける中、俺は意識を手放した。
「う、う〜ん………」
はじめに俺の目に飛び込んできたのは病院の白い天井だった。
「黒斗!ようやく気づいたか!」
じいちゃんが目に涙を浮かべながら俺を抱きしめた。
「じいちゃん!大変なんだよ!父さんと母さんがっ!」
「あぁ、確かにじいちゃんもとても悲しい。お、ちょうどそのニュースがやってるみたいだ。見てみなさい」
『一週間ほど前、大きなガス爆発が起こった現場では、今でもなお立ち入り規制が続いている模様です。警察は再び爆発が起こる可能性が十分にあるとして、規制を引き続き続ける見通しです―――』
「一週間前?」
「そうだぞ、黒斗は一週間も寝込んでいたんだ。もし目を覚まさなかったらどうしようかと思ったよ」
「そうだ、父さんと母さんは ⁉ 怪我してない?今どこにいるの?」
「うっ……………そのことについてなんだが………」
「大丈夫だよね ⁉ 」
俺はじいちゃんに同意を求めるよう強く尋ねた。
「残念だが、もう黒斗は父さんと母さんに会うことはできないんだ」
「ねぇ、どうして?会えるよね?大丈夫だよね?」
「すまない………どうやっても会わせてやることはできんのだ」
「なんでよ………なんで会えないの?そっか、今ちょっと怪我してるからしばらく会えないだけだよね。また治ったらすぐに会えるよね」
「あ、あぁ!きっと会えるさ!」
両目から涙をこぼしながら両親との再会を望む俺に、じいちゃんはそう答える他なかった。
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