尋炉先生と世界の終わり

たなかあこ

序・一 都の消滅

 最盛期にして最後の皇帝令寿れいじゅの時代、天下はかん帝国によって統一され、統治は全土に及んでいた。

 しかし都・数里すうり城の消滅後、天下は混沌とし、戦乱の時代を経て十数国に分裂、新たな国が出現しては消えた。百年に及ぶ戦国時代で世界は疲弊した。


 群雄割拠する中から台頭したじん国のらい王が覇権を握り、統一まであと一歩のところまで迫ったが、屈伏しなかったとうすいの四国が連合してこれを撃退。統一はならず、再び天下は分裂と衰退の一途を辿った。

 人々は環帝国の栄華を忘れ、統一の夢を忘れた。


 今、世界には腎、膵、ちょうはい、耳、尾、がん、頭、けいの九国があり、五十年ほど前からは増えも減りもせず、国境をめぐる小競り合いなどはしばしば起こるものの、比較的落ち着いた安定の時代といえる。


 だが近年、雷王の再来といわれる腎国の摂政刀琥とうこが、まだ年若いゆう王を迎え、実権を掌握するようになってからは、それも過去の話となり果てつつあった……。

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