第2話 好奇心は猫をも殺す
スキルを決め終わるとさらに次の選択画面が現れた。次はどうやら装備品を選べるようだ。
(えっ! まだ選択する事あるの? でもこの格好のままだと色々マズそうだから、助かるのは助かるか……)
今、着ている高校の夏服での戦闘とか考えただけでも無理がある。そこで自分の服装を何気なく見て、初めて何も入っていない胸ポケットに気づき青ざめる。そこに入れてあったはずのスマホがなくなっていたのだ……。良く前に屈んで落としていたけど、足元には落ちてはいなかった。
「スマホ、無いなった……。お母さんに殺される……」
そして薙刀と荷物も置いてきてしまったことも思い出す。あっ! 財布も鞄の中だ……ん~っ……正直、薙刀と荷物はどうでも良いけど……あのスマホと財布は高かったしお気に入りだったのに……。結局、わたしの持ち物はポケットティッシュとハンカチだけだった。私のような(かわいい)女の子がこんな薄着で、さらには無一文で街に入って無事なわけがない。ワンチャンとても治安が良い街の可能性もないわけではないけど……。これは装備に望みを託すしかない。祈るような気持ちで選択画面の装備を見ていく。
まず選択できる武器を見てみるとクリティカルが五パーセント上がる剣など、それぞれに何らかの効果がついているようだ。魔物に近付くなんてもっての外なので間合いの近すぎる剣はまず却下、弓も使いこなす自信がなかったので、使い慣れた薙刀を探してみたのだが予想通り槍しかないようだ。まあ、ないよね……マイナーだし……。結局、選択肢にある槍と杖で迷った結果、杖を選ぶことにした。なぜ杖にしたかというと効果に魔法の矢がうてるとあったのが最大の理由だ。それに一応、薙刀の前に一番最初に習っていたのが杖術で、私の持っているスキルに【杖術】があったのも選ぶのを後押しした。
杖術は最近は杖道と呼ばれ普及はしてきてはいるけど、薙刀よりも更に一般の人にはマイナーかもしれない。それでも実践では私はかなり強い方だと思う。余りのマイナーさでお爺ちゃんの道場は外国の人の方が多かったりするけど……。確か警察も杖道を基にした警杖術を取り入れていたと思う。警察は制圧することが目的だから中身は大分違うみたいだけど……。
そんなこんなで武器が決まり次は防具を選ぶ。選ぶ選ばないの前にほとんどの鎧は私の筋力では着れないようだ。一覧をみた結果、今すぐ着るなら革の鎧一式か、ローブだったら帽子なども含めた一式が色違いで二種類あるようだ。
(う~ん! 革の鎧は胴の装備にだけ足音を抑える効果がついてるのか……魔物に見つからなくなるとかなのかな? それでローブが回復魔法の効果が上がるものと、攻撃魔法の威力が上がるのの二種類か……)
「黒のローブかな? 白のローブは汚れそうだし……」
悩んだが早々に革の鎧は候補から消え、そして効果よりも汚れが白よりは目立たないという理由で、黒の攻撃魔法の威力が上がるローブに決めたのだった。防具を決めた瞬間、画面に『選択した装備がインベントリに移されました。装備画面で装備が可能です』と表示される。
(あっ! これか!)
装備画面に切り替えてみると私の3Dモデルがすました顔で立っており、その横には今着ているものが表示されている。そこで黒のローブ一式を選び『装備しますか?』という表示に対して、心の中で『はい』と答える。すると一瞬にして3Dモデルと私の装備が黒いローブ一式に切り替わった。
「わっ! 帽子でかっ! びっくりした~! でも着替える手間がかからないのは便利かもね……」
一式装備のローブの中は黒のワンピースとその下に紫のタイツにブーツという格好で、ローブ以外は帽子も含めて特に効果はないもののようだ。
(意外と帽子とローブを脱げば元の世界でも十分着れそうだね。……そういえば着てた制服はどこにいっちゃったんだろう?)
探してみるとインベントリの装備品の欄に制服とロファーが入っていた。試しに念じると簡単に出し入れも可能のようだ。これがアイテムボックスみたいなものなのね……。手ぶらで歩けるのは楽だけど気軽に見せてはマズいものなら、バレないようにする為に鞄はあった方が良いかも……。一応、優先度は低いものの鞄の入手も目標に入れておこう。
そして最後にもう一度、装備画面を開いて杖を装備してみる。するといつの間にか杖が右手に収まっていた。長さは私の身長よりは少し短いぐらいで、先がクエスチョンマークのように変形している。
(え~と……これから魔法の矢が出るのよね……)
試しに矢が出るように右手を掲げ念じてみる。すると青く輝く光の矢が前方に光の尾を引きながら飛んでいき、ある程度飛んだところでかき消えた。試しに何度か撃ってみたのだが、魔力を込めれば込めるほど飛距離が上がっていったので、威力も上がっているのだろう。しかし、この白い空間は障害物がないので、当たったらどうなるかまでは分からなかった。そこでふと白い床に目をやる。
(これが当たったらどのぐらいの威力なんだろう? 床に撃ってみようかな……)
その後、好奇心が抑えきれず、床に撃ってしまった私は吹き飛び意識を失った。
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