七十七輪目

「よく眠ってたわね」

「こうやって贅沢するの、好きなんだ」


 お昼に鰻と良いものを食べ、食休みを挟んだ後にお昼寝とグータラしていた。

 元の世界だと年に一回出来たらぐらいだったけど、今だと望めばいつでも出来る環境にある。


 ……それだとありがたみが無くなってくるから、やっぱり程々が一番だけれど。


 行く時間になったら起こしてと冬華に伝えていたが、まだ外明るいし早くないかと時間を確認したら十八時を少し回っていた。

 あー、日が伸びたの夏だなって感じがする。


 これから向かって少しのんびりしていたら、いい夕焼けが見れそうだ。

 帰ってくる頃には夕食だろうし、少し動いてお腹も空いていそうである。


 まだ少し残る眠気を飛ばすために顔を洗い、外に出るための準備というか、小さいカバンにスマホとサイフ、飲み物をしまい日傘を手に持つ。


「日差しを気にするの、良いことよ」

「そこまで考えてなかったかな。単純に暑いのが和らぐからってだけ」


 ここ近年の夏の暑さは異常である。

 普通に三十度を超えてくるとか勘弁して欲しい。

 こうして陽射しを遮るだけでも少し涼しくなるのだから、みんなすれば良いのに。


 日焼け止めなど、自分以上に日焼け対策をしっかりとしている冬華も準備が終わったようで。


「それじゃ、行きましょうか」




 そうして冬華に連れられ、プライベートビーチとやらに来たはいいものの。

 着いて早々に帰りたいという思いでいっぱいになった。


 確かに、とてもいい景色ではある。

 天然の岩場によって囲われ、地元の人しか知らない特別な場所みたいな。

 かといって閉鎖感はなく、開放的な雰囲気で本当に良い場所だと思う。


 だからだろうか。

 開放的な雰囲気に当てられてなのか、ただ単にそういう性癖なのか。


 まさかエロマンガみたいに、このような場所でいたしている場面を目撃するとは。


 うーん、自分も側から見たらこんな感じなのかなといった思いと、動画で見るのと実際に目の当たりにするのとじゃ全然違うなといったことを考えていたら。


「……帰りましょ」


 服の裾を引っ張る冬華に目を向ければ、物凄く嫌そうな顔をして早くこの場を立ち去りたそうにしている。


 確かにこのままここにいた所で仕方がないため、夕日を見れないのは残念だが部屋に戻ることにしよう。


「冬華じゃん! こっち来いよ!」


 だがその場を後にするのが少し遅かったようで、向こうさんに見つかって名前を呼ばれてしまった。

 まあ、隠れもせずに居たのだから時間の問題ではあったが。


 名前を呼ばれた冬華を改めて見てみれば、先ほどよりも嫌そうな顔をしてギュッと服を握りしめていた。

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