二十輪目
五月に入って最初の土曜日。
夏月さんも本日は休みであるため、どこか出かけるでもなく一緒にゲームをしている。
俺と一緒に遊ぶようにと買ったものがまだ幾つかあるらしく、せっかくだからと始めたはいいものの。
この間終えたゾンビシリーズの次、六作目は二人ともやった事がなく。
特に上手いと言える技量でも無いが下手でも無いため、今のところ死ぬ事はないがとにかく時間がかかるのに加え、とても疲れる。
「……休憩含めてお昼にしませんか?」
「……うん、そうしよ」
時計を見ればすでに十三時を過ぎており、ゲームを始めてから四時間経っていた。
話の展開的に次のチャプターで最後と思われるが、その前に休憩が欲しい。
冷蔵庫の中を確認し、期限が近いものを使ってチャーハンを作る。
本来ならもっとしっかりしたものを作りたいが、夏月さんはこれでも喜んでくれるため俺も甘えてしまう。
それにこんなものでもまだマシだと思えてしまうのだ。
夏月さんは食事が面倒だと思ったらゼリー飲料などで済ませてしまうらしく、冷蔵庫を初めて開けて中を見た時、ゼリー飲料しか無くて驚いた。
「あ」
「ん? 優くん、どうかした?」
「夏月さんの誕生日、来週の日曜日ですよね?」
「うん! そうだよ!」
互いに食事を終え、空いた皿を片付けてる時にふと思い出した。
世に出回っているプロフィールが確かならば夏月さんの誕生日はもうすぐなのだ。
何も準備をしていないし、プレゼントも用意していない。
どういったものが欲しいのかも分からないため、素直に直接聞こう。
「何か欲しいものとかあったりしますか?」
「私、優くんとの子供が欲しいな」
「…………それは『Hōrai』の活動が終わったらにしましょう。ライブ、自分も楽しみにしているので」
「そしたらあと一年と少し我慢しなくちゃだね」
それを聞いて少し泣きそうになってしまった。
前任者に合わせるのならば活動期間は六年ほど。
『Hōrai』はいま五周年を迎えているため、そろそろだろうと思っていたが、こんな形でハッキリするとは。
「他に欲しいものとかありますか?」
「んー……優くんが私を思って選んでくれたのなら、どれも嬉しいかな」
えへへと笑みを浮かべながらそう言われてしまえば、俺も頑張るしか無い。
スマホを取り出し、高瀬さんへすぐさま連絡を送る。
『来週の土曜日、買い物に付き合っていただいても大丈夫でしょうか』
これで一先ず安心である。
一応、自分がメインで選ぶけどもアドバイスをもらうくらい見逃してくれるだろう。
高瀬さんに夏月さんと付き合っていることをまだ伝えていないため、それも話せたらと。
「明日も休みだから、終わるまでノンストップで頑張ろうね!」
「……夕食の休憩は欲しいかな。あとお風呂も」
「お風呂に入ったら眠くなっちゃうよ?」
「なるほど?」
六作目は四つほどストーリーが盛り込まれているので、果たして寝落ちする前に終わるだろうか。
楽しそうにしている夏月さんを前に、拒否する選択肢を持たない俺は何処までも付き合う所存である。
───
プレゼント
女性から男性に"貢ぐ"事はよくあるが、男性からはほぼない。
男性から女性へ物を渡す行為は自分のものである事の証明に他ならないため。
どうでもいいようなものならいざ知らず、装飾品など渡すのは一生離さないと言ったようなもの。
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