兄と妹たちの大三角関係〜下の妹を選ぶのですか!? お兄様!〜

シャナルア

日常編

第1話 三兄妹のひと時の夏の始まりの味は寝取られだった悲しみ

 わたしはお兄様がとっても大好き。


 物心ついたときから大好きでした。


 けど、この大好きって気持ちは普通の兄妹の『大好き』ではありません。


 キスして、エッチなことして、結婚して、子供を授かって、おじいちゃんおばあちゃんになるまで幸せに暮らしたいという意味での『大好き』なのです。


 高校1年生のわたしは、いわゆるブラコンってやつなのです。


 ダイダイ大好きなお兄様、わたし立花 幸<たちばな さち>は、お兄様のためならなんだってします!


 ふぁいとおー! わたし!


***


「ただいま!」


 わたしはおうちに帰ると、真っ先に手を洗い、自分の部屋で汗で濡れた制服を脱いで、着替えをしていました。


「今日から夏休み! お兄様とずっと、ず~っと、一緒に……うふふ! やった」


 ぽよよんとたわわなお胸を揺らしながら、わたしは兄のことを想います。


***


~妄想~


「ただいま、お兄様!」


 わたしはお兄様に抱き着く。


「サチ、お帰り。俺、さびしかったよ。お前が居ない家は、まるで月のない夜空のようだったよ」


「うふふ、お兄様ったら! 今日からずっと一緒ですわよ」


「それはなんと素晴らしいことだ! サチ、もう二度とお前を放さない」


「お兄様♡」


 そして熱いキッスを!


***


〜現実〜


「えへへ……は! それじゃあこれから抱かれても恥ずかしくない恰好で行きましょう!」


 ノースリーブの水色のワンピース、お気に入りの縞々のパンツを身に着けました。


 そして、兄の部屋の前に行きました。


 コンコン、とノックする。


「ただいま、お兄様!」


 待って、とってもドキドキする……。


 目を輝かせながら、兄の部屋の扉を見つめるわたし。


「……お兄様?」


 けど時間が経っても返事一つ帰ってきません。


 そっと耳を澄ましても、物音ひとつありません。


「お兄様はどこにいったのかな……は!」


 わたしはすぐに居間に向かいました。


「エミ~、俺とゲームしようぜ~」


「やだ。気分じゃない」


「しろよ! 今日から夏休みなんだろ??」


「そうだけど、その前に働け馬鹿おにぃ! ニート!!」


「言っていいことと悪いことがあるだろうが! 押し倒してこちょこちょするぞ!」


「キモイ! 変態! 馬鹿おにぃ!」


 大好きなお兄様は——


 わたしの妹とラブラブしてました。


「あ……ああ……兄と妹が……まるでラブラブな喧嘩ップルのように……」


 このスキンシップは明らかにこ、こここ、恋人のようなスキンシップじゃないですか。


 わたしを差し置いて、中学1年生の恵美<えみ>がお兄様と——!


 これが、寝取られ。


 脳を焼かれる感覚なの——?!


「あ、おねえ、お帰り!」


「あ……ただいま……」


 エミちゃんがわたしのもとに駆け寄ってきた。


「おねぇさ、馬鹿おにぃをどうにかしてよ!」


 エミちゃんの嘆願に、お兄様が反応する。


「おいエミー、どうにかってどういうことだ」


「おねぇが馬鹿おにぃに働けっていってほしいんだ。そしたら働いてくれるんじゃないかな、たぶんだけど」


 わたしはおほんと、咳払いする。


「いい? お兄様にもね、休息期間が必要よ。

 せっかくの就職先を2週間で辞めてからまだ1年も経ってないのだから、もっと長い目でみるべきよ」


「……はぁ……おねぇもおにぃには馬鹿甘いんだから」


「エミちゃん?」


「はぁい、おねぇ」


 わたしはエミちゃんとの話を終え、お兄様に話しかけた。


「ねえ、お兄様」


「……なんだ?」


「わたしでよければ、一緒にゲームがしたいなと、」


「やだ」


「あばあああ!! な、なぜですか……?」


「あー、だってお前、ゲーム下手じゃん」


「そ、そんなああああああ!!」


 わたしは地面に倒れ伏す。


 そんなわたしをお兄様は目も向けず、エミちゃんに話しかけた。


「なあエミー、ゲームしようぜ」


「やだ」


「なぜ」


「おにいがムカつくからやだ」


「だったら部屋まで押し入るぞ!」


「……ああもう! 分かったってば! やるよ!」


「よし」


「……全く、おねえってば、こんな奴の何がいいんだか……」


 二人はゲーム機を持って、お兄様の部屋に行きました。


 そしてわたしは、居間で独りぼっちになりました。


「はは、まるで、浜辺で干からびたヒトデのようだわ……わたしって……」


 妹に好きな人(お兄様)を奪われる……


 これが寝取られの味かぁとしみじみ思うのでした。

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