ep11:同じ文末で物語を〆る企画 お題:「二人が血のつながった実のきょうだいだと知るのは、もう少し先の話。」

主催者:雨蕗空何(あまぶき・くうか)――https://kakuyomu.jp/users/k_icker

開催期間: 2024年2月22日〜 2024年3月31日

趣旨:物語のラストを「二人が血のつながった実のきょうだいだと知るのは、もう少し先の話」で終える。ニュアンスが変わらなければ多少の改変は可。

ご本家様:https://kakuyomu.jp/user_events/16818023214012058885


作者から注意点

鬱ストーリー。




本編/title:同じ墓で眠る




 夜中、一匹の茶色の首輪をつけた黒猫は車道の脇をずっと歩いていました。この1日、2日、3日……、ここ最近は何も食べていない黒猫。


 行く当てもないのですが、もう少しは生きてみようと餌を探し続けます。川の水で喉の渇きは潤ったのですが、水では腹が膨れません。だから黒猫は鳴きもせず、淡々と、ただひたすらに食料になるものを探すのでした。




 あれからいくつもの時間がたったでしょうか、黒猫はまた水辺に来て水を飲みに来たのでした。今日も獲物という獲物に出会うことができませんでした。一番ましだったのが、鳥の骨付き肉を誰かがしゃぶったものをもう一回舐めること。それで飢えをしのいでいました。


 ですがこのひもじい生活もここで終わるのでした。


 ――この匂いは?


 タンパク質が腐敗した臭いがそこにはありました。そのまるで使えない細くて鋭い目で覗くと自分とよく似た黒猫でした。ですがもう息は無く、ただやせ細った体を横にして倒れているばかりでした。


 黒猫は何度か動かない体を舌でなめてみます。まるで、動かない彼を起こすように優しく毛づくろいをしてあげます。


 ですがいくら舐めても動く気配はありませんでした。そうして黒猫は夜中に一つ鳴いてみます。その鳴き声は助けを求めていました。誰でも良いから動かないこいつを救ってくれと……。


 この鳴き声は朝が来るまで続いたと言われています。




 やっとの思いで黒猫たちに朝がやってきました。もう息が荒く、歩く気力もありませんでした。ですが、その失いつつある聴力で声を聴きました。


「クロちゃん……、ここにいたのね」


 馴染みのある主の声に黒猫は耳をピクリと動かしました。荒い息を何度もしている黒猫はその温かみが本当に嬉しかったそうで、そして本当に辛かったそうです……。


 最後に頭を腕の中でこすった黒猫は、荒い息をやめました。もうこの子も動くことはありませんでした……。


 その大きくて小さな体を抱える主さんは、大粒の涙を流していました……。




 その後、主さんに飼われていた黒猫はきちんと埋葬されたと聞きます。あの黒猫はもともと一匹が好きで、最後も一匹でいようと考えたのでしょうか。


 余談ですが、主さんが飼っていた黒猫とそれによく似た黒猫。あの二匹は同じ墓の中で暮らしているそうです。それは飼い主さんのご厚意ということでしたが……。


 あの二匹は血のつながった実の兄弟と飼い主さんが知るのは、もう少し先の話かもしれません。


(Fin.)

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