TWO BLOOD

佐武ろく

prologue

 芸術的ともいえる絶妙な焦げ具合のパンと分厚さと半熟の完璧なハーモニーのベーコンエッグ。コマーシャルのような瑞々しいサラダと神々しさすら感じる香りを立ち昇らせる珈琲。

 いつもの朝食をテーブルに並べた雨夜陽南は椅子に座ると、いつも通りテレビを付けた。真っ暗だった画面に映し出されたのは朝のニュース番組。しっかりと縁取りされた声で読み上げられるニュースを見ながら黙々と朝食を口へ運んでいく。

 そしてニュース番組が終わり次に画面へ映し出されたのは地球の映像。その後に女性のナレーションで特番らしき番組が始まった。


「本日は二月六日。皆さんは今から二十年前のこの日に起きた出来事を覚えているでしょうか?」


 問い掛けから始まったナレーションは絶妙な間を空け更に話し続けた。


「そう。我々人類が長年疑問を抱いていた地球外生命体の存在に対する答えが出た日であり、巨大なユーフォ―が空を覆い尽くした日です」


 言葉に合わせ画面には当時の映像が流れ始めた。


「ですが彼らは私達が恐れるような地球侵略をしに来たわけではなく、星を失い新たな星を探していただけでした。そして空に浮かぶユーフォーから異星人――エリアンがここ日本に降り立ち、当時の内閣総理大臣である杉浦首相とお会いになりました」


 映像では杉浦首相とエイリアンがソファに腰掛け言葉を交わしている。


「それから数日後、アメリカで主要国首相を集めた緊急会議が行われたのです。その会議でどんな話し合いが行われたのか、詳細は明かされていませんが長時間の会議の結果、彼らをいくつかのグループに分け各国で場所の提供をすることとなりました」


 それぞれの飛行機へ乗り込んでいくエイリアンは多種多様で姿形も様々。


「そしてここ日本からは人工島、宇出うで島が提供されました」


 当時の宇出島へ降り立つエイリアンとそれを出迎える首相。

 そして映像は当時のものから現代のものへと溶け合うように変わっていった。


「この番組ではあの日から二十年の月日を経て、現在も彼らの暮らす宇出島がどう変化していったのかをご一緒に見ていきたいと思います」

「ではまずは二十年前二月六日へ――」


 これから番組が始まろうとしていた正にその時――リモコンに伸びた手がテレビを消した。

 そしてリモコンをテーブルに戻した陽南は全身鏡の前に立つと自分の格好を改めて確認し始める。襟やジャケットや寝癖がないかなどを簡単に見ていく。


「よし!」


 それを終えると気合を入れるように呟き、彼女は家を出た。

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