プロローグ
青空が広がる
今日は年に一度の
(はあ、
私、ヴィヴィアン・グレニスターは、広場の
着ているドレスは
それに合わせて赤みの強い
なのに鏡に映る青緑色の
「何をそわそわしてんだい。まさか
話しかけられて
「て、店長……そりゃそわそわしますよ。だってモデルなんて初めてですもん」
「こんなに
「あんた元がいいんだから、もっと自信持ちなよ。メイクも
「うぐっ……!」
(そこは『芋っぽい』じゃなくて、『
春装祭の準備に取り
出来がよければ
(まあ仕方ないわよね。王都みたいな大都会と牛だらけの私の故郷じゃ、きっとオシャレの種類が
自分を
「そろそろ出番だね。手当はちゃんと出すから、あんたも弟のために
「はい!」
そうだった。私がモデルになることを
(余計なこと考えてる場合じゃないわ。待っててね、お父様、クリス。今回の手当をもらえれば、入学金は
父は一応
弟のクリスを貴族が通う学校に行かせるには、私がお金を
(とにかくお金よ! この仕事が終わったら、札束が私を待っている!)
お金に対する熱い情熱を胸に、天幕を出てランウェイに
最上段のカーテンに身を
「さあ、行くわよ……!」
小声で自分に言い聞かせ、一つ深呼吸して歩き出す。ランウェイに登場した
しばらく歩いていると不思議と緊張もほぐれて、周囲を
(すごい警備ね。国中の貴族が集まってるんだから、当然だろうけど)
春装祭には国内有数のドレス工房が参加する。
ランウェイから少し
とは言え、一般人の興味はむしろランウェイの周囲に立つ、白い騎士服の聖騎士たちに向けられているようだった。
(
神聖力という特別な力を持って生まれた人は、神官や聖女、聖騎士となる。
彼らは聖職者と呼ばれ、
もの》を
特に聖騎士は顔のいい男性が
(あ、こっちに手を振ってる人がいるわ)
(手を振ってくれたってことは、今の私は
故郷は田舎すぎて出会いがないし、普段は工房の奥で
嬉しくなって口元を
ターンしようとした
「う、わ……」
思わず声が出てしまった。それぐらい、その聖騎士のお顔が
(すごい美形! 背も高いし、何を着ても似合いそうだわ。フロックコートでも
さらりと
かといって女性っぽいわけではなく、高い鼻やキリッとした
(こんなに顔が整った人、初めて見た。…………ん?)
何かに驚いたように目は見開かれ、
(私を見て驚いてる……わけないよね。この人と私は初対面だし)
気にせず引き返そうとした、瞬間。
「見つけた」
その聖騎士の
「……っ!?」
全身の毛がぶわっと逆立ち、気づいた時には
心臓がドッドッと激しく脈打って、背中には冷たい
(いっ今の何!? 私を見て言ったの!? いやいやいや、気のせいでしょ! だって私、聖騎士に追われるような悪いこと何もしてないし! …………してない、はず……)
ドレスをたくし上げて、息を切らしながら天幕の中に入った。でも忘れよう、気のせいだと思い込もうとしても、あの「見つけた」が頭から離れない。全身に
と
(もしもの話だけど……
働けないなら、実家に仕送りもできない。クリスは学校に行けず、グレニスター家は
「それだけじゃないわ。家族が捕まるってだけで、貴族にとってはとんでもない
呟いた時ちょうどショーが終わった。ライラさんに「芋っぽい」と
「お
「ちょっと、何を
(!! う、打ち上げ!?)
それはつまり、店長の
でも今は、それよりも……。
「っい、行きたい、ですけどっ……どうしても、のっぴきならない事情が」
「泣いてるじゃないか! 本当にどうしたんだい? ――ちょっと、ヴィヴィ!」
「すみません!」
後ろ髪引かれる思いで天幕の出口を目指す。
(ああ、せっかくのライラさんの奢りが! 食べたかった! 本当は食べたかった!!)
でも今はとにかく、没落の危機を
かなり
「あ、すみません」
「いえ、こちらこそ…………ぎえっ!?」
なんて
数秒間ぼーっとしてから、ハッと我に返る。
(ボケっとしてる場合じゃない! 逃げるのよ、没落の危機よ!)
「い、急いでるので……!」
「ちょうどよかった。きみを探してたんだ」
立ち去ろうとした私に、その聖騎士が言った。きらきらと
(に、逃げるチャンスが……)
ごめんなさい。お父様、クリス。
私の脳内では、家族に向けた謝罪が延々と
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