第27話 『選ばれし者たち』専用で、パンピーお断りな場所だ


「ところで、どこに向かってんの?」

「次の目的地、宝石屋だよ〜」


 4つ目のミッションの目的は、ここ商業都市国家『シティー』に到着すること。

 だから、オレたちは既にそれはクリア済み。

 現在のオレたちは5つ目のミッションをこなしている最中だ。

 もちろん、『攻略ガイド』を見れば、そのミッション内容もわかる。

 だけど、ついた途端の「よーいドン!」だったから、そんな余裕もなかった。


 そうか、宝石屋か。

 まあ、その単語だけで大体想像はつくな。

 きっとそこで、なんかチートなアイテムゲットできるんだろうな。

 日本にいる時は、もちろん、アクセサリーなんてオサレアイテムは身につけたことなんかない。

 いや、中二的なヤツにはちょっと惹かれた時期もあったが、かろうじて一線を越えずに済んだので、黒歴史とならなくてよかった。

 だけど、ここは異世界で、オレは召喚勇者で、これから魔王退治だ!

 アクセサリのひとつやふたつ問題ない。つーか、超ウェルカム!!

 さあ、どんなカッコいいやつで、どんな能力なのか、楽しみだな。


 ――そんなことを考えながら走り続けること約10分。どうやら、目的地に辿り着いたようだ。

 人混みを避けたり、考え事してたりだったから、落ち着いて街並みを観察する余裕なかったな……。


 到着した場所は広い敷地の豪邸だった。

 さっきの市場の喧騒が嘘のような閑静な一画に建つ、厳かで静謐な雰囲気の豪邸だ。


 厳重で立派な門扉の脇には、守衛が二人待機している。

 守衛たちは強そうであるのだが、粗野な雰囲気はなく、それなりの立場の人間なのだろう。


 もう、これだけの情報から、ここが『選ばれし者たち』専用で、パンピーお断りな場所だってことが伝わってくる。


 守衛たちはオレたちに気づくと、サッと門扉を開ける。

 誰何されたりするもんだと思ってたから、拍子抜けだ。

 さすがは姫さまパワーといったところか。


 門をくぐり抜けてから豪邸までの道を足早に進む。

 手の行き届いた立派な庭園。この辺りは乾燥した砂漠地帯なはずなのに、刈り整えられた大樹が生え並び、色とりどりの花々が植えられている。

 手間ひまかけているのか、魔法的なナニかなのかわからないけど、これきっとメチャクチャ金かかってるんだろうな。


「つーか、むちゃくちゃ広いな、この庭。最初からここに降りればよかったんじゃない?」

「まあ、どうしても時間が間に合わないようだったら、そうしてもよかったんだけど、まあ、ちょっとね〜」


 綺麗に刈り整えられた広い芝生――この広さだったら、フェニックスが着陸するのにも十分なスペースだ。

 だが、リスティアの言葉から察するに、さすがに、隣国からやって来てフェニックスで私有地に着陸は問題なのかもしれないな。

 そこら辺は、ちゃんと考えているようだ。さっきのおっさんズへの振る舞いは問題じゃないのか、っていう疑問は残るが……。


「でも、楽しかったでしょ?」

「……あっ、ああ」


 笑顔を向けられ、思わずドキッとしてしまう。


「一回やってみたかったんだよね〜。あ〜、満足満足〜」


 確かにリスティアの立場だと自由に街中を歩き回ることもままならないのかもしれない。

 現代日本の一般人なオレからしたら考えられないことだけど、高貴な身分というのも中々に不自由なものなのかもしれないな。

 それにしても、小説なんかだとお姫様がお忍びで街に出てお買い物とかあるけど、そういうのじゃなくて、人混みすり抜けて全力ダッシュがやってみたかっただとは、やっぱりリスティアはおてんば姫なんだろうか。


 本当に嬉しかったようで、すごくいい笑顔をしているな。

 元気いっぱいでポジティブなエネルギーに溢れている。

 めんどくさがりで消極的なオレとは対照的だ。

 そんなリスティアが少しまぶしく感じられた。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『外で待っててもいいかな? オレ、役に立たなそうだし……』


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