第22話 女性経験がほぼ皆無のオレには刺激が強すぎる
――残り時間4:25
リスティアには逆らえなかったようで、結局、イーヴァは城でお留守番することになった。
「それじゃー、いってきまーす。イーちゃん、バリアよろしくー」
オレとともにフェニックスの背中にまたがるリスティアの言葉を受けて、イーヴァが呪文を唱える。
すると、ドラゴン戦でも守ってくれた半球型のバリアが、オレとリスティアの周囲に現れた。
「んじゃ、フーちゃん、
極上の笑みでリスティアに告げられるや、かしこまったフェニックスは「きゅいっ!」とひと声上げてから、翼を大きく広げる。
なんでだろう?
リスティアさんは、確かに笑っている。
それもとびっきり極上の笑みだ。
笑顔だけど、目が笑ってないとか、そんなんじゃない。
正真正銘、慈母のような笑みだ。
だけど――――なんでこんなに怖いんだろう?
リスティアさんとフェニックスの
羽ばたきとともに、フェニックスの身体は高く上昇し、それにつれて城前広場に集まった人々の姿もゴマ粒みたいに小さくなり――。
「きゃっ!」
「!?!?!?」
バランスを崩したリスティアがこっちに向かって倒れかかってきた。
オレは反射的に両手を広げ、彼女を受け止める。
オレの上にのしかかるリスティアを両腕でしっかりと抱きしめるかたちになってしまった。
「へへっ。ありがと〜、勇者さま〜〜。頼りになりますぅ〜〜〜」
フェニックスに向けるのとは別種の、蕩けきった笑顔のリスティアは心の底から嬉しそうだ。
……って、いやいやいやいや。
今の思いっきりワザとじゃん!
座ってたのにわざわざ立ち上がって、こっち向いてから、倒れ込んできたじゃん!!
それに、バリアがあるから、全然揺れてねーし!!!
倒れる要素これっぽっちもねえから!!!!
なにこの茶番…………。
と呆れたくなるが………………シチュエーションを考えれば、天国以外のなにものでもない。野暮なツッコミをいれて、この機会を逃すほどオレは愚かではない。このパラダイスを存分に堪能させてもらおう。
ふにゅんと潰れる双丘の柔らかさ。
暖かい体温。
首筋にかかる湿った吐息。
そして、甘い香り。
ああ、天国だ。
ずっと、こうしていたいなあ。
最初の出会い頭に抱きつかれた時は、びっくりし過ぎて、それどころじゃなかった。けど、今はその感触をじっくりと堪能することができる。
柔らかくて、あったかくて、いい匂いで――。
気持よくって、幸せで、いつまでもこの天国を味わっていたいところなのだが……。
ヤバい!
この状況――女性経験がほぼ皆無のオレには刺激が強すぎる。
このままだと、オレの薄っぺらい理性がはじけ飛んで、猛りきった愚息が暴走しかねない。さすがにそれはマズいだろ。
いや、そんな流れに身を任せたくないって言ったら嘘になるし、ちょっとは流されてみたいかなって思わなくない。
それに、この流れで突っ走っても、好感度MAXなリスティアだったら、受け入れてくれそうな気もするし……。
いやいやいや、だめだだめだだめだ。
物事には順番がある。
まだ、チューもしてないじゃんか。
ハグは今こうしてしてるけど、その他諸々すっ飛ばしているじゃん。
それに、向こうはこっちのこと好きかもしれないけど、正直オレはまだリスティアのことが好きなのか、自分でもよくわかっていない。
もちろん、リスティアは文句なしの美少女で、オレなんかがどうこう言うのもおこがましいレベルなんだけど、いまだに彼女の本質をオレは見極めかねている。
そんな段階で突っ走れるほど、オレは肉食系じゃない。
やっぱり、最初はお互い好き同士じゃないと、って考えちゃうピュアピュアハートなんだ。ただのヘタレなだけかもしれないけど……。
大丈夫、焦ることはない。
相手の好感度はバッチシだし、ワンステップずつこなしていけばいいんだ。
お楽しみは後に残しておこう。
つーか、さっきのフェニックスとのやり取り見てると、オレの方が調教されちゃいそうだし。それは怖すぎる。
初体験が上空数千メートルの聖獣の背中で、とかレベル高すぎるしな。
ちゃんと、準備万端、オレがリードしながらできる、完璧なシチュエーションを整えてから、いざ、本番だっ!
よし、結論が出た。
ここはステイだ。
でも、だからといって、嬉しそうにしているリスティアをはねのけることもできない。
だから、オレは断腸の思いで、こう切り出した。
「あの、せめて、上から降りて、隣りに座ってもらえませんか」
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『でも、まだ頑張れるよねー?』
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