異世界魔王討伐RTA~6時間で魔王を倒せって言われたけど、ベリーイージーモードなんで楽勝だった。むしろ、姫様とのイチャイチャがメインでは?~

まさキチ

第1話 異世界召喚はイージーモード


佐久間雫さくましずくよ――」


 厳かな声がオレに問いかける。


「つらく険しいが見返りの大きな道と、容易いが見返りの小さな道、お主はどちらを選ぶ?」


 古本屋でバイト中だったはずだ。

 客なんてほとんど来ない潰れかけの古本屋。

 それをいいことに、いつものようにカウンターでうたた寝をしていたオレは、どうやら異世界召喚に巻き込まれたようだ。

 姿が見えない声だけの存在から色々と説明を受け、そして、この選択を突きつけられた。


 『舌切り雀』の話を思い出す。

 親切なお爺さんが選んだ「小さなつづら」には宝物がつまっていて、強欲爺さんがぶん取った「大きなつづら」にはヘビやムシがつまっていた。

 たしか、小学校に上がるちょっと前だったと思う。

 「しず君だったら、どっちを選ぶ?」と母親に聞かれたオレは、ためらいなく「ちっちゃいやつ!」と答えた。

 模範解答に気をよくしたと思われる母親は続けて「どうしてかな?」と尋ねてきた。


 「だっておっきいのはジャマだし、もってかえるのメンドクサイ」


 元気よく答えるオレ。

 その顔を見つめる母親のなんとも言えない表情。

 母親の落胆なんかまったく理解していなかった。


 それから多少は成長して、当時の母親の心境くらいは分かるようになった。

 でも、オレという人間の根本は、これっぽっちも変わっていなかった。


 メンドクサイの大嫌い。


 煩わしい人間関係に悩まされるくらいなら、ひとりでいる方が気楽。

 リアルの異性に傷つけられるよりも、二次元嫁バンザイ。

 楽な選択肢があるなら、見返りが少なくてもそっちに飛びつく。


 大学進学のときは受験勉強をしたくなかったので、頑張れば入れる大学よりもランクが下の推薦で入れる大学を選んだ。

 大学の講義は役に立つか、興味があるか、という基準で選ばず、出席もとらず簡単なレポート提出だけで単位がとれるラクショー科目でガッチリかためた。

 バイト先だって、棺桶に片足突っ込みかけたジイさんがひとりでやってる古本屋の店員だ。時給はめっぽう安いが、たまにやってくる客の相手をする以外はカウンターに座ってスマホをいじってればいいだけ。

 そんなオレのことを友人は名前をもじって「まさしくクズ」と呼ぶくらいだ。


 そういうわけだから、冒頭の問いかけに対する答えはもちろん――。


「ベリーイージーモードでヨロ」


 こんな感じで、自分のことをどこにでもいる平凡な大学生だと思っていたオレは、ある日突然、異世界に召喚された――勇者として魔王を倒し、その世界を救うために。


 オレは王道ファンタジーRPGよろしく、仲間とパーティーを組み、装備を整え、モンスターを倒してレベルを上げ、万全の体制で魔王の居城へと乗り込んだ。


 後は魔王を倒すだけ――。


 とまあ、要約すればありきたりのストーリーだが、ひとつだけ大きな違いがあった。

 それは、異世界召喚から魔王との戦いまでたったの5時間ちょっとしかかかっていないことだ。

 そう、これから話すのは「小さなつづら」を選んだオレの冒険だ――。









   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『お姫さまは最初から好感度MAXだった』


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